Gの愉悦

京衛武百十

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私はそんな人間を面白いと思う

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大切な者を喪えば正気でいられないのは<人間の性>だ。

だからそれを何かで補おうと、気持ちの区切りをつけることを望むのも当然のことだ。

私はそんな人間を面白いと思う。

いや、これはむしろ、

『愛おしい』

だな。

しかし、

『自分の気持ちに区切りをつけるために無関係な人間を巻き込むことさえ正当化しようとする』

と、そこに軋轢が生じる。

当然だ。

<可哀想な被害者や遺族のために自分や自分の大切な者を犠牲にしていいと考える者>

など、まずいないのだからな。

先日の一件の小僧のように、本来であれば自分の<仇>ですらない相手でさえ、疑わしいとなれば殺しても構わないとさえ思ってしまうのが<恨み>や<憎しみ>というものだ。

そして、復讐という行為そのものを禁じることでそういう者から自分や自分の大切な者を守ろうとするのがそんなにおかしなことか?

私はそうは思わんが? 

自分や自分の大切な者を、

<理不尽な攻撃者>

から守るのだ。実に普通のことではないか。

物事を一面でしか捉えないから危険な行為を正当化できてしまう。

何故それが理解できん?

で、<義手の男>はそれを理解している。だから復讐を思いとどまれている。

それだけの話だな。

が、それでもなお、復讐を正当化したい奴らは、

『どうせ大して愛してなかったんだろ?』

的なことを言ってこの<義手の男>を叩いたりするのだ。

自分を正当化するためなら、被疑者や遺族すら攻撃する。

元々攻撃的な性根を持っているからこそできることだな。

『やられたらやり返す』

は私達<邪神>もよくやることだが、これは、私達自身が、元々、

<自分がやられる覚悟>

を持っているからこそのものだ。そして同時に、

『私達自身が決して滅することがない存在である』

という大前提があればこその覚悟でもある。

私達のような、人間から見れば明らかに<異常>なメンタリティをもつ存在であるからこそ成立するものなのだ。

『死ねば終わり』の人間とは違う。

『お前らみたいのが人間を語るな!!』

だと? くくく、それは<微生物の研究者>に対して、

『微生物について語るな!!』

と言ってるに等しいぞ?

むしろ客観的な立場だからこそ分かることもある。

私自身は人間の<心>などというものに共感はできんが、共感できんがゆえに一歩引いた視点で見ることができるのだ。

『復讐者に冷静な判断はできん』

という事実もな。

<絶対にミスしない復讐者>

<絶対にミスせず成し遂げられる復讐>

も、存在せんのだ。

復讐を望む者に復讐を実行させるのは、酒を飲んだ人間に自動車を運転させるようなものだ。

普段の判断力を失ってる者に<殺人許可証>を与えようなどという狂気の沙汰とか、楽しくなってくるじゃないか。

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