Gの愉悦

京衛武百十

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他人を責める資格

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だが、そうやって人間同士でいがみあい<楽しい見世物>を提供してくれるかと思えば、中にはやはり<変わり者>もいるのが人間という生き物だ。

これから触れる<義手の男>も、そういう変わり者の一人だな。

その男は、余計なことは口にせず、ただ自分の役目だけを黙々と果たすタイプだった。

左手が義手でありながら技術者であるらしく、ここの設備全般のメンテナンスを担当している。

もちろんその男以外にも技術者はいるのだが、どうやらそいつが一番腕がいいようだ。

男の左手の義手は、様々な工具や治具を装着できるようで、それを器用に使い分け、手際よく修理していく。

「あんたの腕は<魔法の腕>だな。あんたにかかればどんなポンコツでも息を吹き返す」

今日はある住人の電磁調理器コンロの修理に訪れ、今回はさすがに義手の出番もなく右手だけで見る間に修理、直ったことを確認した住人が男を称賛した。

しかし義手の男は、ニコリともせずに、

「俺には、これしかないから……」

そう呟いただけで料金を受け取り、早々に立ち去った。

「一緒にメシでもどうだい?」

と切り出されても、

「次があるから……」

と言っただけで振り返りもせずに。

男を見送った住人の妻が、

「あの人も、奥さんと子供を事故で亡くしたんだっけ……」

夫に話しかけると、夫の方も、

「ああ、その時に左腕も失ったそうだ……」

と答える。

女房と子供を亡くし、左腕も失い、それでも黙々と<自分の役目>を果たす寡黙な男か。

泣かせる話じゃないか。

しかも男は、それで誰を恨むでもなかったらしい。

事故そのものは、ある技術者が実に下らんミスをしたことで起こったものらしいがな。

それというのも、ここの空気は、地上のそれを取り込んだ後に大型の<エアコンディショナ>を通して人間が生きるのに適したものに調節してから全館に送るらしいが、エアコンディショナの更新の際に外気を送る配管を繋ぎ間違えて、義手の男が家族と共に暮らしていた部屋に外気をそのまま送ってしまったそうだ。

しかもそれは、男と家族が寝静まっている深夜のことで、男が異常に気付いて目を覚ました時には妻と子は極低温の外気をモロに吸い込んで肺が凍り窒息死。男も気を失い、次に目を覚ました時には肺の半分と左腕を凍傷で失っていたと。

普通ならここで、くだらないミスで自分の妻と子供を死なせた技術者に復讐の一つもと思うところだろうが、実は男も若い頃に自身のミスで一緒に仕事をしていた相棒を死なせた過去があり、そんな自分が他人を責める資格はないと思っていたそうだ。

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