Gの愉悦

保証の限りではない

世の中の、

＜復讐を正当化しようとする奴＞

は、まあ、自分が誰かにイジメられたか何かして、それで、

『復讐したい！』

とでも考えていて、そんな自分を正当化したいがために復讐を正当なものとしたいんじゃないのか？

『被害者や遺族の気持ちを考えろ！』

など、自分を正当化するための詭弁でしかないよなあ？

本気で＜被害者や遺族の気持ち＞を考えるのであれば、

＜見当違いな思い込みでただ一人残った息子を殺されることになったエルダーの男の母親＞

の無念も分かるはずだからなあ。

小僧が復讐を実行に移さなければこんなことにはならなかったのになあ。

こう言うと、

『じゃあ、被害者や遺族は泣き寝入りしろと言うのか！？』

とか言い出すのがいるが、だからって＜エルダーの男の母親＞のような者を出してちゃあ、何も意味がないと言っているんだが、どうしてそれは無視する？　自分らが望む復讐を正当化するのに都合が悪いからか？

くかか。

そうやって自分の都合の悪いことには目を瞑ろうとする＜人間の習性＞は、唆して操るには実に都合がいい。

しかも、今回のようにわざわざ唆さなくても勝手にやらかしてくれるんだから、貴様ら人間が＜邪神＞と称する私としては笑いが止まらんよ。



などと＜楽しい見世物＞を見ることができたおかげで、私は実に気分が良かった。いやいや、ゴキブリとしてここに寄越されたのも悪くない。

さらにはここには今回の件のようなことが起こる＜火種＞はたっぷりとあるようだ。

＜隔離区画＞の奴らと下層の奴らとの間だけでなく、当然のように各階層同士でも軋轢があるからな。

特に、最も深いところに住む＜管理者＞と呼ばれる連中は、それこそ自分達を特別な存在と思っていて、それより上の層の連中に対しては、さながら、

『下見て暮らすな上見て暮らせ』

とばかりに、意図的に＜被差別対象＞を作ることで住人らの鬱憤をぶつける相手をコントロールしているようだな。

うむ。洋の東西を問わず権力を握った為政者共がよく行う手法だ。

で、愚か者共はまんまとそれに乗せられる。

そうやって目先の＜憂さ晴らし＞を利用していれば楽だからな。

難しいことを考えなくても済むし。

しかしそれで本当にいいのか？　そうやって自分で考えることをしないなど、家畜と何も変わらないぞ？

が、ここの連中は家畜として生きることを選択したようだ。

自分達より上の層に生きる者を見下し蔑むことで目先の鬱憤を晴らすだけで満足し、それ以上は考えない。

確かに、ここの暮らしを劇的に変えられる方法はそうそう見付からんだろう。限られたリソースを分配して生きるしかない以上、＜優先順位＞は必要だ。

もっとも、その＜優先順位＞が本当に合理的に意味のある内容になっているかどうかは、保証の限りではないがな。