Gの愉悦

京衛武百十

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その貪欲さは嫌いではないぞ

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<殺処分部隊>の奴らについても確認はしたし、私はここから<畜産工場>へと向かうルートを探し始めた。

が、どうにも最下層の連中は無駄に綺麗好きが多いのか、殺虫剤がやたらと撒かれていて、安全なルートを探すのにさらに苦労した。

とは言え、床や壁や天井には殺虫成分が付着しているものの、人間の体や衣服にまではさすがに付いていないので、やはり人間に掴まって移動するのが一番確実だと判断する。

もっとも、見付かると当然厄介だがな。

実際、一度気付かれて危うく潰されそうになったわ。

しかし、ここまで来ると私も慣れたものだ。人間の体にしがみつくと気付かれる危険性も高くなるので、荷物に紛れ込むことを徹底する。

加えて、普通のゴキブリは荷物が動くと逃げようとして逆に見付かることが多いが、私は当然、そんなことはせん。おとなしく身を潜めて気付かれないようにすることを心掛ける。

で、畜産工場担当の木端役人の荷物にまぎれ、運んでもらう。

だが、当の役人は不満そうだ。

「何で私があんな臭いところに……早く異動を……」

エレベーターに乗っている間もぶつぶつと文句を垂れていた。

こいつの都合など知ったことではないが、別にこいつでなくても構わんから関知しない。

そうして着いた先は、小さな野球場並みの広さを持つ空間だった。そこに土が敷かれ牧草が植えられ、ざっと三十頭ほどの牛が放たれているのが分かる。姿は見えないが豚や鶏の声もするので、敷地を区切る柵の向こうで飼育されているのだろう。

地下の閉鎖された空間でありながら、思った以上に本格的な畜産が行われていることに、私は少し感心していた。こうまでして肉が食いたいのか、人間よ。

だがその貪欲さは嫌いではないぞ。

管理棟らしき場所に向かう役人の荷物から抜け出し、私は<地面>へと降り立った。

久々の土の匂いが思った以上に心地好い。

やはり、生物の体というのはこういうものを欲するようにできているのだなと実感する。

役人は、『臭い』だなんだと文句を並べていたが、正直、気になるほどではないな。よほど換気がしっかりなされているのだろう。それでいてこの気温が保たれているというのは、大したものだな。

それにしても、ここまでのエネルギーをいかにして確保しているのか。

一番、可能性が高いのは原子力だろうが、その割には木端役人共の口からはそれを窺わせる発言はなかったな。原子力は管理が大変だし、神経も使うはずだが、もしやもっと簡便に使えてかつまとまった電力を生み出す発電装置でも発明されたか?

こうなってくるとそちらにも興味が湧いてくるな。

だがまあ今は、せっかくなのでこの環境を満喫させてもらおう。

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