Gの愉悦

京衛武百十

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陶酔感

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プラントがある部屋では、男の体から落ちる皮膚片や髪の毛だけでなく、収穫した野菜の葉の欠片などを落としていくことがあり、それこそまたとないご馳走だった。

だが私は、ここに餌を漁りに来たのではない。

ゴキブリ共のコロニーでは、敵意こそ向けられなかったものの、しばらくの間戻らなかったこともあってか、多少の警戒感は抱かれているのは察せられてしまう。

加えて、<中身>が変わってしまっているからな。やつらに肉体と精神が置換されているということなど分かるはずもないものの、違和感は覚えるのだろう。だから改めて<仲間>と認めてもらうのに数日を要したのだ。

しかし、決して時間の余裕はなかったもののそれでもなお敢えて丁寧に接したことが功を奏し、私はゴキブリ共の中にいた。それも、ただ<仲良く>しているのではない。独特の空気感がその場を満たしている。昂ぶっているのだ。

そして、仲間の一匹が私の前に歩み出ると後ろを向いて羽を広げる。その瞬間、何とも言えない魅惑的な匂いが辺りを包む。

フェロモンだ。

私はその匂いに誘われてそのゴキブリの体を舐める。瞬間、とろけるような陶酔感。これはいい。とてもいいぞ。

そうして私が陶然としていると、何かが体の中に入ってくる。

雄の交接器だった。私もそれを拒むことなく受け入れる。と言うより、私自身がそれを求めてしまっていた。

『この体の遺伝子を残してやろう』

という考えとは無関係に、な。

おそらく、自身の命のタイムリミットが迫っていることを改めて自覚させられたがゆえに、この体が本来持っている種族維持の本能が刺激されてしまったのだろう。

雄の精を受け取ると、たまらない悦びに満たされる。自身の<価値>を改めて肯定されたような気分。

<幸せ>

そう、<幸せ>だ。私は今、幸せの中にいる。私の全てが昇華されていく。

もちろん、人間の体で行うそれに比べれば実に淡白、と言うよりはもはや<機械的>で味気ないことこの上ないはずなのだが、にも拘らず私はたまらない<悦楽>を覚えていたのだ。

いくら、『タフでしぶとい』と言われるゴキブリといえど、人間よりも遥かに脆く軽く叩いただけで潰れてしまう上に成虫になってからは精々二百日しか生きられないゴキブリとしての<生>は、だからこそ<命の実感>が濃いのかもな。

行為そのものは実に呆気なかったものの、十分に堪能させてもらった。ゴキブリの体ではさすがにそこまで感じ取れなかったにせよ、私自身はある種の<エクスタシー>に達していたのだ。

まったく、思わぬ<収穫>だよ。

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