Gの愉悦

京衛武百十

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ただのお荷物

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「……」

『風呂に入ってくる』と告げて部屋を出ていった男の背中を見送り、小娘はまだ涙を流していた。男にとってはただの<お荷物>でしかない自分が嫌で嫌で仕方ないようだ。

自分の手でまともに涙を拭うことさえできない自分が。

そう言えばこちらの人間共は、己が社会の役に立てないことをやたらと気にする傾向があったな。まあ、人間の死体すら食料に変えねばならんほどリソースが逼迫したここでは、ただの<無駄飯食らい>になることは罪悪でさえあるだろう。

割と珍しい感情豊かな面を持つ小娘も、やはりこの世界の一員ということなのだろうな。

ここまで二年も男に甘えてきたが、自身の精神が安定に向かえば向かうほど、正気になればなるほど、男の負担になっていることが耐えられなくなってきたか。

すると小娘は、おもむろにベッドから起き上がり、自らベッド脇に置かれた車椅子へと乗り移ろうとした。しかし、一人では上手く乗り移れない。と、車椅子が傾いてバランスを崩し、床へと転落。

「ぐっ!」

呻き声を上げながらも、小娘はなおも体を起こし、倒れた車椅子を何とか起こそうとする。

その車椅子はバッテリーで動く<電動車椅子>でもあった。が、幸か不幸か、進歩した技術で作られたそれは、向こうの電動車椅子に比べれば非常に軽量に作られていたために、今の小娘でも辛うじて一人で起こすことができた。向こうのそれではかなりの重量があるから、もしかすると起こせなかったかもしれんな。

さらに、這いあがるようにしてどうにかこうにか車椅子に収まった。

しかし、肘までしかない両腕ではスティックの操作もままならん。その程度のことも満足にできない自分に、小娘はまたも涙を溢れさせる。

微妙な操作ができないために何度も行き過ぎたり戻ったり方向転換してようやく部屋のドアに辿り着いたものの、そこでもまた、ドアを開けるのに四苦八苦。

本当に自力では何一つ満足にできないことを改めて思い知らされ、小娘は、泣きながら、血が出るほど唇を噛み締めていた。

こうしてやっとの思いでドアを開け、なのに車椅子が上手く操作できずに何度も引っかかり、ようやくまぐれで廊下に出ることに成功。

そこから先も、廊下の壁にぶつかりそうになっては方向転換、よろよろと蛇行どころの騒ぎではない迷走運転で小娘は先へと進む。

しかし小娘はどこに向かおうとしているのか? その先にあるのは、厨房と、|例の破砕機シュレッダーがある部屋だ。

「まさか、こいつ……」

小娘が何をしようとしているのか気になってついてきた私の頭に、ある予感がよぎったのだった。

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