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第15話 女性絡みの依頼
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ジャックが苦手としていた子供達からの依頼を終えた翌日、宿で朝食を取っているとピクシーがいやらしい笑みを浮かべながら口を開く。
「今日はおじいちゃんの意向もあって、女性絡みの依頼でーす」
「いやっほーい!」
ジオがはしゃぐ。あれからも定期的にピクシーがヒーリングをしている効果なのか、ジオはしらふでも言葉がスムーズに出てくるようになってきて、普通に会話に参加することが増えてきた。
ただ、今回の場合はピクシーのヒーリングの効果というより、むしろ「女性絡み」ということが特効薬になっているのかもしれない。
「……」
対照的にジャックは表情を崩さない。前回の依頼を通じて子供嫌いは少し克服したものの、ジャックは女性も苦手であった。
『我儘』
『気まぐれ』
『見栄っ張り』
当然男性にもそういう気質の者が存在することは承知しているが、ジャックは自分の経験から、こういった要素が典型的な女性の特徴だと信じていた。
「まぁ今まで通り、付かず離れずでやれば問題ないさ」
ジャックは自分に言い聞かせるように呟いた。
「ちなみに依頼内容は恋のキューピッド役です」
ピクシーは可愛らしくウィンクしてこう言うと、ジャックの反応を待った。
「はぁ???」
人間には向き、不向きというものがある。流石にそればっかりは自分には無理だ、と言わんばかりにジャックは眉間に皺を寄せた。
「大丈夫。大丈夫。ボクもおじいちゃんもいるんだしさー。それにこの依頼対象の女性が良い娘っぽくてねー。ボク応援したくなっちゃったの」
ピクシーは他人の恋バナに花を咲かせる人間の女性のようにウッキウキという雰囲気だ。
ピクシーとジオがいることが何の安心材料になるのか? ジャックはそう言いそうになるのをグッと堪えた。
それにしてもピクシーはおしゃべりな所といい、他人の恋バナが好きなことといい、中身は人間の女性そのものだが、妖精族はみんな同じなのだろうか? と、ジャックは素朴な疑問に頭を支配されていた。
ピクシーはジャックが何か自分に失礼なことを考えていることに気が付いたようだったが、そのまま話を進める。
「とある男女の幼馴染がいます」
昔話を始めるかのようにピクシーは話し出した。
「依頼人曰く、お互い好き同士なのに、男の方が一向に結婚を申し込まないんだって。なんでも、この辺りの狩人がやる成人の儀式を終えてないのが理由みたい」
ピクシーはやれやれといった感じである。
「その儀式ってのは何をするんだ?」
当然の疑問をジャックはピクシーにぶつけた。
「一人でトラを狩るみたいよ。罠以外の方法で」
今時ナンセンスだといわんばかりにピクシーは肩をすくめる。
「トラを!? 一人でか?」
ジャックは素直に驚いた。トラは生息数が少ないからそもそも見つけるのが難しいし、かなりの強敵でもある。ジャックのように戦士団にスカウトされるような猛者ならともかく、一介の狩人がおいそれと手を出せる相手ではない。
この町の狩人達はみんな一人でトラを狩っているのだろうか? ジャックはにわかには信じがたいといった様子だ。
そんなジャックの疑問を解消する為にピクシーが続ける。
「それがさー、この儀式はもう形骸化してて、今では馬鹿正直に森でトラを狩ってくる人なんていないのよ。なんでも生きた獣を扱う商人がいて、トラの子供が買えるみたいね。それを森に連れて行って放した瞬間に弓で射って倒すんだって」
ピクシーはそこまでして形式を守ることが滑稽に思えて、乾いた笑いを押さえられないといった様子だ。
「ならどうしてその男もそうしない? 金がないのか?」
話の大元が非合理極まりないものなので、突っ込みどころは満載である。ジャックの疑問は尽きない。
「どうもその男性は気弱で、狩人仲間からいじめられてるみたいね。その仲間達を見返す為に勢いでトラを狩ってくるって宣言しちゃったみたい。で、後に引けなくなってるのね」
男はどうしてこう体面にこだわるのか? と半ば呆れているピクシーだったが、実はこういった男性の心理は嫌いではないらしい。応援してやろうという気持ちがジャックにも伝わってくる。
そのままピクシーは続ける。
「で、女性の方はというと、男性の好きなようにさせたいんだって。自分が納得いくまでとことんやった上で自信をもって迎えに来て欲しいんだって。ちょっと泣かせるでしょ?」
ピクシーはどうやらこの男女両方の考え方が気に入って、どうしてもお節介が焼きたいらしい。ちなみに依頼主は二人の友人で、ピクシーと同様にお節介焼きのようだ。
「とはいえ、俺が狩るならともかく、人の狩りを成功させるってのは難しいぞ」
今回の任務も大変そうだといわんばかりに、ため息交じりでジャックはそういった。
ジャックとピクシーがこうして長々とやり取りをしている間、ジオはその内容を聞きながらニコニコしていたが、終盤になって顔つきが険しくなっていた。
ジャックとピクシーはその変化に気が付ついていたが、それが何を意味しているかは分からなかった。
「今日はおじいちゃんの意向もあって、女性絡みの依頼でーす」
「いやっほーい!」
ジオがはしゃぐ。あれからも定期的にピクシーがヒーリングをしている効果なのか、ジオはしらふでも言葉がスムーズに出てくるようになってきて、普通に会話に参加することが増えてきた。
ただ、今回の場合はピクシーのヒーリングの効果というより、むしろ「女性絡み」ということが特効薬になっているのかもしれない。
「……」
対照的にジャックは表情を崩さない。前回の依頼を通じて子供嫌いは少し克服したものの、ジャックは女性も苦手であった。
『我儘』
『気まぐれ』
『見栄っ張り』
当然男性にもそういう気質の者が存在することは承知しているが、ジャックは自分の経験から、こういった要素が典型的な女性の特徴だと信じていた。
「まぁ今まで通り、付かず離れずでやれば問題ないさ」
ジャックは自分に言い聞かせるように呟いた。
「ちなみに依頼内容は恋のキューピッド役です」
ピクシーは可愛らしくウィンクしてこう言うと、ジャックの反応を待った。
「はぁ???」
人間には向き、不向きというものがある。流石にそればっかりは自分には無理だ、と言わんばかりにジャックは眉間に皺を寄せた。
「大丈夫。大丈夫。ボクもおじいちゃんもいるんだしさー。それにこの依頼対象の女性が良い娘っぽくてねー。ボク応援したくなっちゃったの」
ピクシーは他人の恋バナに花を咲かせる人間の女性のようにウッキウキという雰囲気だ。
ピクシーとジオがいることが何の安心材料になるのか? ジャックはそう言いそうになるのをグッと堪えた。
それにしてもピクシーはおしゃべりな所といい、他人の恋バナが好きなことといい、中身は人間の女性そのものだが、妖精族はみんな同じなのだろうか? と、ジャックは素朴な疑問に頭を支配されていた。
ピクシーはジャックが何か自分に失礼なことを考えていることに気が付いたようだったが、そのまま話を進める。
「とある男女の幼馴染がいます」
昔話を始めるかのようにピクシーは話し出した。
「依頼人曰く、お互い好き同士なのに、男の方が一向に結婚を申し込まないんだって。なんでも、この辺りの狩人がやる成人の儀式を終えてないのが理由みたい」
ピクシーはやれやれといった感じである。
「その儀式ってのは何をするんだ?」
当然の疑問をジャックはピクシーにぶつけた。
「一人でトラを狩るみたいよ。罠以外の方法で」
今時ナンセンスだといわんばかりにピクシーは肩をすくめる。
「トラを!? 一人でか?」
ジャックは素直に驚いた。トラは生息数が少ないからそもそも見つけるのが難しいし、かなりの強敵でもある。ジャックのように戦士団にスカウトされるような猛者ならともかく、一介の狩人がおいそれと手を出せる相手ではない。
この町の狩人達はみんな一人でトラを狩っているのだろうか? ジャックはにわかには信じがたいといった様子だ。
そんなジャックの疑問を解消する為にピクシーが続ける。
「それがさー、この儀式はもう形骸化してて、今では馬鹿正直に森でトラを狩ってくる人なんていないのよ。なんでも生きた獣を扱う商人がいて、トラの子供が買えるみたいね。それを森に連れて行って放した瞬間に弓で射って倒すんだって」
ピクシーはそこまでして形式を守ることが滑稽に思えて、乾いた笑いを押さえられないといった様子だ。
「ならどうしてその男もそうしない? 金がないのか?」
話の大元が非合理極まりないものなので、突っ込みどころは満載である。ジャックの疑問は尽きない。
「どうもその男性は気弱で、狩人仲間からいじめられてるみたいね。その仲間達を見返す為に勢いでトラを狩ってくるって宣言しちゃったみたい。で、後に引けなくなってるのね」
男はどうしてこう体面にこだわるのか? と半ば呆れているピクシーだったが、実はこういった男性の心理は嫌いではないらしい。応援してやろうという気持ちがジャックにも伝わってくる。
そのままピクシーは続ける。
「で、女性の方はというと、男性の好きなようにさせたいんだって。自分が納得いくまでとことんやった上で自信をもって迎えに来て欲しいんだって。ちょっと泣かせるでしょ?」
ピクシーはどうやらこの男女両方の考え方が気に入って、どうしてもお節介が焼きたいらしい。ちなみに依頼主は二人の友人で、ピクシーと同様にお節介焼きのようだ。
「とはいえ、俺が狩るならともかく、人の狩りを成功させるってのは難しいぞ」
今回の任務も大変そうだといわんばかりに、ため息交じりでジャックはそういった。
ジャックとピクシーがこうして長々とやり取りをしている間、ジオはその内容を聞きながらニコニコしていたが、終盤になって顔つきが険しくなっていた。
ジャックとピクシーはその変化に気が付ついていたが、それが何を意味しているかは分からなかった。
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