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第18話 リーネブルク公の策謀
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ジャック達はその後もいくつかの依頼を受け、着実に遂行していった。
それらの中には町民が行政にいくら訴えても解決しなかった案件も含まれていた。それを何の文句も言わず、更に無料で解決してくれるものだから否応なしにジャック達の名声は高まっていった。
逆にこの町を統べるリーネブルク公の評価はガタ落ちである。
「やったー! この町に来てから初めての報酬ありの依頼だよ。そろそろお金も尽きそうだったし助かっちゃうね」
ピクシーは初めて報酬付きの依頼があったことを無邪気に喜んだ。
「依頼内容は会ってから話す……か、貴族様ってのはこれだからな」
ジャックはヤレヤレといった感じで肩をすくめ、そう呟いた。
依頼の説明の為にわざわざ屋敷まで足を運べという態度が気に入らない。そう、この依頼の依頼主はジャックが嫌いな貴族様……この町の統治者であるリーネブルク公だったのである。
ジャックは特に偉い人から評価される為に色々な依頼をこなしてきた訳ではない。ジオが昔の記憶を取り戻すために、ジオが喜びそうな……昔ジオが喜んで受けていたであろう依頼と同じようなものを受けているに過ぎない。
だからそれとは関係ない依頼を受ける必要を感じなかったし、王命で動いている身としては受ける義務もなかった。
とはいえ、公爵からの呼び出しを無視すれば、今後この町での行動に支障をきたすのは目に見えている。なので不承不承、ジャック達は召喚に応じることにした。
「ほほぅ。そちが今評判のジャックか。もう一人は四十年前に活躍した勇者ジオ殿だったかな?」
リーネブルク公は見たところ三十代前半。ジオの活躍を直接知らない世代なので、特別ジオを敬っているような雰囲気は感じられない。逆に自分の前で膝も折らずに棒立ちしているジオにいら立っているようだった。
「色々な事案を手際よく解決しているそち達を見込んで、頼みたいことがある」
そう言ってリーネブルク公は依頼内容を側近の者に説明させた。
その依頼内容は要約すると「この町に出没している黒猫団という盗賊集団を捕えてこい」というものだった。
ジャックもこの町に来てからそれなりの時間を過ごしてきたので、「黒猫団」のことは承知していた。いわゆる義賊というやつで、貴族連中から金品を盗んできては生活に窮している平民に配って回っている盗賊団の事である。
ジャックは彼らの取っている手段については賛同しかねている。しかし、目的については賛同できるし、なにより町民に支持されていることも知っていた。
ジャックはこの時点でリーネブルク公の目的を察した。
恐らく……いや、確実にリーネブルク公は自分の名声を低下させているジャック達が邪魔なのだろう。
ジャック達に町の人気者である「黒猫団」を捕えさせれば、自分たちの被害は無くなるし、何より町の人間はジャック達を憎むようになるだろう。
逆に逃がしたとあれば、その非を鳴らしてジャック達をこの町から追放することが出来る。
どちらにしてもリーネブルク公に損は無いという訳だ。
そんな考えが透けて見えたので、ジャックは何とか「王命」を盾にその依頼を断ろうとした。
しかし、表面上はあくまでも窃盗集団の捕縛という至極まっとうな依頼である。ジャックは「王命」を帯びているとはいえ、戦士団に所属する公僕でもある。なので表面上は真っ当なその仕事を受けざるを得なかった。
「えー!? そんな依頼だったの?」
宿に帰って説明するなり、ピクシーは驚き半分、呆れ半分といった声を上げた。
ピクシーから見てもリーネブルク公の狙いは明確なのだろう。
ただ、今回の依頼を例え成功させたとしても、相手は手を変え品を変え似たようなことを仕掛けてくるだろう。
「ニオンも結構長く滞在したしな。もうジオの記憶のヒントになるようなことは無さそうだし、そろそろ潮時かな」
ジャックは近い内に町を追放されることはもう避けられないだろうと腹をくくった。
ただ、世間で義賊と呼ばれている「黒猫団」には興味があったので、最後に探してみることにした。
それらの中には町民が行政にいくら訴えても解決しなかった案件も含まれていた。それを何の文句も言わず、更に無料で解決してくれるものだから否応なしにジャック達の名声は高まっていった。
逆にこの町を統べるリーネブルク公の評価はガタ落ちである。
「やったー! この町に来てから初めての報酬ありの依頼だよ。そろそろお金も尽きそうだったし助かっちゃうね」
ピクシーは初めて報酬付きの依頼があったことを無邪気に喜んだ。
「依頼内容は会ってから話す……か、貴族様ってのはこれだからな」
ジャックはヤレヤレといった感じで肩をすくめ、そう呟いた。
依頼の説明の為にわざわざ屋敷まで足を運べという態度が気に入らない。そう、この依頼の依頼主はジャックが嫌いな貴族様……この町の統治者であるリーネブルク公だったのである。
ジャックは特に偉い人から評価される為に色々な依頼をこなしてきた訳ではない。ジオが昔の記憶を取り戻すために、ジオが喜びそうな……昔ジオが喜んで受けていたであろう依頼と同じようなものを受けているに過ぎない。
だからそれとは関係ない依頼を受ける必要を感じなかったし、王命で動いている身としては受ける義務もなかった。
とはいえ、公爵からの呼び出しを無視すれば、今後この町での行動に支障をきたすのは目に見えている。なので不承不承、ジャック達は召喚に応じることにした。
「ほほぅ。そちが今評判のジャックか。もう一人は四十年前に活躍した勇者ジオ殿だったかな?」
リーネブルク公は見たところ三十代前半。ジオの活躍を直接知らない世代なので、特別ジオを敬っているような雰囲気は感じられない。逆に自分の前で膝も折らずに棒立ちしているジオにいら立っているようだった。
「色々な事案を手際よく解決しているそち達を見込んで、頼みたいことがある」
そう言ってリーネブルク公は依頼内容を側近の者に説明させた。
その依頼内容は要約すると「この町に出没している黒猫団という盗賊集団を捕えてこい」というものだった。
ジャックもこの町に来てからそれなりの時間を過ごしてきたので、「黒猫団」のことは承知していた。いわゆる義賊というやつで、貴族連中から金品を盗んできては生活に窮している平民に配って回っている盗賊団の事である。
ジャックは彼らの取っている手段については賛同しかねている。しかし、目的については賛同できるし、なにより町民に支持されていることも知っていた。
ジャックはこの時点でリーネブルク公の目的を察した。
恐らく……いや、確実にリーネブルク公は自分の名声を低下させているジャック達が邪魔なのだろう。
ジャック達に町の人気者である「黒猫団」を捕えさせれば、自分たちの被害は無くなるし、何より町の人間はジャック達を憎むようになるだろう。
逆に逃がしたとあれば、その非を鳴らしてジャック達をこの町から追放することが出来る。
どちらにしてもリーネブルク公に損は無いという訳だ。
そんな考えが透けて見えたので、ジャックは何とか「王命」を盾にその依頼を断ろうとした。
しかし、表面上はあくまでも窃盗集団の捕縛という至極まっとうな依頼である。ジャックは「王命」を帯びているとはいえ、戦士団に所属する公僕でもある。なので表面上は真っ当なその仕事を受けざるを得なかった。
「えー!? そんな依頼だったの?」
宿に帰って説明するなり、ピクシーは驚き半分、呆れ半分といった声を上げた。
ピクシーから見てもリーネブルク公の狙いは明確なのだろう。
ただ、今回の依頼を例え成功させたとしても、相手は手を変え品を変え似たようなことを仕掛けてくるだろう。
「ニオンも結構長く滞在したしな。もうジオの記憶のヒントになるようなことは無さそうだし、そろそろ潮時かな」
ジャックは近い内に町を追放されることはもう避けられないだろうと腹をくくった。
ただ、世間で義賊と呼ばれている「黒猫団」には興味があったので、最後に探してみることにした。
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