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2.一般通過渡り人上嶋悠生二十歳
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ドン、ドン、ドドン。
徐々に近付いてくる太鼓の音は、開戦の印。
国境から遠く離れている筈の王都では、本来届く筈もない恐怖だ。
「敵襲──ッ!」
「急ぎ門を閉じよ! 敵はそこまで来ているぞ!」
歌のような呪文のような声が頭上から降り注ぐ。
翼を持つ不吉な影が宙を舞い、不快な音を発していた。
耳を貫き頭蓋の中まで届くような、今すぐ此処から逃げ出したくなるような──
「重騎士隊、前へ!」
これ以上聞いていたくない。
頭を抱え、目を閉じた。震えが止まらない……今すぐにでも逃げ出したい。
「キアアアアッ!」
胃からせり上がってくる何かを吐き出した。
嘔吐きながら地面に落ちたものを見る。真っ黒い、泥のようなかたまり。
これは血と、刮げられた肉だ。
頭を動かせないと思ったら、後ろから押さえつけられていた。
かえしの付いた刃に似た虫の足が、頭部を抱え込んでいる。
「ぅ、え」
ぐらりと視界が揺れて──
唐突に視点が変わる。
「赤い……?」
強い風に煽られ、閉じた瞼を光と熱が刺してくる。
建物が、町が、人が燃えていた。
悲鳴と怒号に重なるようにして、身も凍るような怖ろしい鳴き声が辺りに響く。
「なんだ、これ」
俺の身体は宙に浮いていた。
周囲を翼の生えた黒い生き物が通り過ぎていく。
襲ってくる気配はないが、眼下では惨たらしい殺戮が行われていた。
異国の鎧を着た兵が、逃げ惑う者の背を切りつける。
抵抗する人も、彼らを守る兵士も、皆為す術無く倒れていく。
親が命に替えて庇った子が、降り注ぐ魔法の火に飲まれ息絶える。
「あ……」
全ては無駄だったのか。
込み上げる無力感に、四肢の力が抜けていく。
だらりと下げた手足の先に、崩れかけた塔があった。
瓦礫の中、蹲る男がゆらりと立ち上がる。
塵と埃にまみれた金髪が、激しい風に煽られている。乱れた前髪の隙間から覗く虚ろな眼差しが、ゆっくりと辺りを見渡す。
その手が握るは漆黒の槍。
あれは、そうだ、勇者の、レグルスの目覚め──
「うがああああっ!?」
ギリギリと締め付けられるような頭部の痛みに飛び起きる。
慌てて首の後ろに手をやり確かめるが、穴は開いていなかった。
「ゆ、夢……?」
エロゲーの世界に転移して、勇者と会って槍を取りに行く──なんて。
「そうだよな、有り得ないよな。はぁ変な夢見ちゃった……」
「お目覚めになられましたか」
「ヒャア!」
思わず世紀末な悲鳴が口からまろび出る。
えらく難しい顔をしたじいさんが、俺の顔面二センチの所まで迫っていたからだ。
「何? ええ、誰? ここどこ?」
豪華な刺繍のされた高級そうなローブ。
宝石のはめ込まれた額飾り。
真っ白な髪と髭が繋がっているタイプの、ファンタジー映画に出て来そうな貫禄あるじいさまが、重々しい仕草でその場に平服する。
「お言葉に不便はございませんでしょうか」
「え? ……あ、だ、大丈夫……です」
「そうですか。お休みの間、貴方様に言語魔法をかけさせていただきました。目覚めてしばらくは少々頭が重く感じられると思いますが、じき馴染むものですからご安心を」
「言語魔法!? すげっ……だぁあああ」
おじいさまの言う通りだった。
急に頭を振ったせいか、痛みが倍増する。
グギギと唸りつつ、慎重に視線を巡らせると、そこは天井にばかでかい穴の開いた、ほぼ壁しか残っていない部屋だった。
「あーやっぱ夢じゃない感じかぁ……」
「はい?」
「すみません何でもないです」
痛みのせいか、ショックだったのか。
つんと来る鼻を押さえてしばらく下を向く。
……よし、大分楽になってきた。
顔を上げると俺は一応ベッドらしき物に寝かされて、手には布が巻かれていた。
そして緊張したような顔で俺を見つめるご老人が一人、と。
「あの」
「はっ」
俺が言葉を発すると、相手は緊張した様子で頭を下げる。
その態度には深い敬意が感じられ──るのは何故? え、初対面ですよね? 何で俺こんな所にいるの? あとレグルス君は?
どれから尋ねようかと頭を悩ませていると、向こうから答えが剛速球で飛んできた。
「何なりとお申し付け下さい勇者様」
「ゆっ……えええええ!?」
「だから違うんです! 俺は勇者じゃなくってぇ!」
さっきの天井穴開き部屋は控えの間だったらしく、現在俺は謁見室にて上半身をわたわた動かしていた。
一部壁にヒビは入っているが、この部屋は概ね無事のようだ。
正面に王様、その横にレグルス、両脇にずらりと並ぶ貴族を差し置き、豪華な椅子に座らせられた俺は完全にアガッていた。
だって人生こんなに注目浴びる事なかったもの。胃がキリキリする。
「勇者はそこにいるレグルスで、俺は全然関係無いただの一般人ですハイ!」
「いえ、間違いなくこのお方が伝承にある勇者かと!」
「おーいちょっとーそこのーレグルスくんんん?」
「……ッ」
名を口にした途端目を見開いて俺を見たレグルスは、感無量、みたいな顔をしてその場に膝を突く。
やめて。主君の横でしていい事じゃないよ多分。
「勇者殿は──」
「ノー!」
「……コホン」
本編では顔無しテキストのみだった亡国の王様は、王様だった。
『隷属のガレリア』は中世ヨーロッパ的な服装を基調に古代ローマ風が混ざり合い、更に現代らしいアレンジを加えたデザインだったのだが、概ねそんなような印象。
シャツにチュニックにサーコートのそれぞれ豪華版。
マントも毛皮だし、王冠載ってるし、まるで絵本に出てくるような『王様かくあるべし』と言った王様に、密かな感動を覚える。王様や~。
「しかし客人殿は、『渡り人』とお見受けするが?」
「渡り人?」
「こことは違う世界から来る者たちの事だ。姿形が違い、言葉が通じぬ」
「……あっ、ああ~! はいはい」
確かにあったわ、そういう設定。
NTR違いがインパクト強すぎて忘れてたけど、主人公は元々この世界の『渡り人』、つまり現代人設定なんだよな。
この世界で稀に起こる現象。現代の知識を持つ渡り人は国を繁栄させたり、災厄になって滅ぼしたりと大活躍で、各地の伝承にもなっている。
そのうちの一つが『隷属のガレリア』のストーリーの基盤になっている。
魔に染まりし世界にある日勇者が訪れ、民を救うであろう的な王道展開ですわ。
「我が国の伝承にあるのだ。『滅びの日、神より与えられし力が天より無数の矢を降らせ、敵を打ち倒す──』と」
「おおぅ……」
なんて曖昧な伝承なんだ。どんな意味にも取れるじゃないか。
『滅びの日』なんて言っちゃってるけどそこはいいのか?
実際本編では滅んでたから間違いではないし、その後流星槍で敵が全滅するのも合ってるんだよなあ。
「ではやはり勇者はレグルスで間違いないですね! 俺はただ槍の場所教えただけなんでっ」
「我ら王族も知らぬ神器の位置を、渡り人であらせられる貴方が知らせてくれた、と」
「ウッ……」
これがゲームだったら俺も勇者ルートを楽しめたと思う。実際コンプしたし。
でも現実でレグルスが抱いた女を回収して歩くルートなんてゴメンだ。
俺は恋愛がしたいんだ。そりゃ将来的にはどうなるかわからないけどさ? ハーレムもやぶさかではないけれど? 童貞の間はまっとうな彼女とお付き合いの夢見たっていいだろ。
勇者全力回避の姿勢を崩さない俺と、王の視線が正面からぶつかり合う。
絶対嫌という思いを込めて見つめる。勇者はレグルスで間違いない。公式だってそう言ってる。ただちょっと後半道を外れただけなんですよね……。
「王都は滅びを免れた。貴方が『レグルスが勇者である』と仰るならば、それは間違いのないこと」
「はいそうですぅぅ! 間違いありません!」
王様! 素敵! 最高! ヨッ名君!
「また襲撃を知らせ、勇者を導いた貴方は神の使いであろう」
「うえぇええ!?」
王様! 何してんの! ちょっと待って!? 違うからそれ!
なんだその超展開。本編に無い概念出してくんなや!
いい年したおっさんが、揃いも揃ってウンウン頷いている。
えええなんでこの国まとまってるの。誰か一人くらい俺の正体怪しんで嫉妬してギギギとかしないんかい。え、本当に名君……?
「そんな大層なもんじゃないです……」
レグルスなんてもう、キラッキラした目で俺を見ている。
顔面と相まってとんでもない圧だ。両手を組み、地面に膝を突いて拝み始めた。うわ否定し辛ぇ……!
主人公も一応勇者の範囲ではある。
道を逸れたレグルスの代わりに、奴が取りこぼした各地のフラグと装備と女を回収し、最終的に奴が為し得なかったラスボス撃破をしてハッピーエンドだからな。
だがこの場合は……渡り人である俺がその道を選ばなければ、この世界このルートのまま存続していくのか?
その場合レグルスの扱いは?
ここから各地で襲撃が頻発し、レグルスは仇を追って大陸中を駆け回る。
でも幾ら強力な流星槍があっても所詮は一人。
取りこぼした町も都市もたくさんあって、周辺は荒れて……そんな中ようやく主人公が現れて、えっちらおっちら助けに行く訳だよな。
となると国を亡くし一人孤独にさすらうのじゃなく、国のバックアップありの迅速な対応があれば──…
「くっ」
考える時間が欲しいのに、状況がそれを許さない。
此処で俺が徹底的に否定して、関係ないですサヨウナラと言って別れたとして。
じゃあ誰がレグルスを敵の所へ連れて行く?
「ああ……そうか。そうだよなぁ」
この国と同じだ。
ゲームをプレイした俺は、これから何が起こるか知っている。
被害が出る前に防げる。誰かが死ぬのを見なくて済む。
それにまあ……元の世界に帰れるかどうかもわからんし。
「神……とか、そういうのとはちょっと違うんですけど。これからレグル……勇者様にして欲しい事は、色々とありまして」
「ウオオオオオッ!」
「なにごとっ!?」
周囲のおっさんじいさん共が一斉に声を上げる。
王も、レグルスも、皆拳を振り上げて野太い声が響き渡る。
「皆の者! 今此処に勇者が誕生した!」
「オオオオオオ!」
「勇者の導き手、神の使いにより我が国には一層の繁栄がもたらされるであろう!」
「オオオオオオオオ!!」
「はわわわわ」
王都滅亡は勇者レグルスの活躍により無事回避された。
その功績は彼に力を授けた渡り人の存在と共に、大陸中へ広まっていくのであった。
徐々に近付いてくる太鼓の音は、開戦の印。
国境から遠く離れている筈の王都では、本来届く筈もない恐怖だ。
「敵襲──ッ!」
「急ぎ門を閉じよ! 敵はそこまで来ているぞ!」
歌のような呪文のような声が頭上から降り注ぐ。
翼を持つ不吉な影が宙を舞い、不快な音を発していた。
耳を貫き頭蓋の中まで届くような、今すぐ此処から逃げ出したくなるような──
「重騎士隊、前へ!」
これ以上聞いていたくない。
頭を抱え、目を閉じた。震えが止まらない……今すぐにでも逃げ出したい。
「キアアアアッ!」
胃からせり上がってくる何かを吐き出した。
嘔吐きながら地面に落ちたものを見る。真っ黒い、泥のようなかたまり。
これは血と、刮げられた肉だ。
頭を動かせないと思ったら、後ろから押さえつけられていた。
かえしの付いた刃に似た虫の足が、頭部を抱え込んでいる。
「ぅ、え」
ぐらりと視界が揺れて──
唐突に視点が変わる。
「赤い……?」
強い風に煽られ、閉じた瞼を光と熱が刺してくる。
建物が、町が、人が燃えていた。
悲鳴と怒号に重なるようにして、身も凍るような怖ろしい鳴き声が辺りに響く。
「なんだ、これ」
俺の身体は宙に浮いていた。
周囲を翼の生えた黒い生き物が通り過ぎていく。
襲ってくる気配はないが、眼下では惨たらしい殺戮が行われていた。
異国の鎧を着た兵が、逃げ惑う者の背を切りつける。
抵抗する人も、彼らを守る兵士も、皆為す術無く倒れていく。
親が命に替えて庇った子が、降り注ぐ魔法の火に飲まれ息絶える。
「あ……」
全ては無駄だったのか。
込み上げる無力感に、四肢の力が抜けていく。
だらりと下げた手足の先に、崩れかけた塔があった。
瓦礫の中、蹲る男がゆらりと立ち上がる。
塵と埃にまみれた金髪が、激しい風に煽られている。乱れた前髪の隙間から覗く虚ろな眼差しが、ゆっくりと辺りを見渡す。
その手が握るは漆黒の槍。
あれは、そうだ、勇者の、レグルスの目覚め──
「うがああああっ!?」
ギリギリと締め付けられるような頭部の痛みに飛び起きる。
慌てて首の後ろに手をやり確かめるが、穴は開いていなかった。
「ゆ、夢……?」
エロゲーの世界に転移して、勇者と会って槍を取りに行く──なんて。
「そうだよな、有り得ないよな。はぁ変な夢見ちゃった……」
「お目覚めになられましたか」
「ヒャア!」
思わず世紀末な悲鳴が口からまろび出る。
えらく難しい顔をしたじいさんが、俺の顔面二センチの所まで迫っていたからだ。
「何? ええ、誰? ここどこ?」
豪華な刺繍のされた高級そうなローブ。
宝石のはめ込まれた額飾り。
真っ白な髪と髭が繋がっているタイプの、ファンタジー映画に出て来そうな貫禄あるじいさまが、重々しい仕草でその場に平服する。
「お言葉に不便はございませんでしょうか」
「え? ……あ、だ、大丈夫……です」
「そうですか。お休みの間、貴方様に言語魔法をかけさせていただきました。目覚めてしばらくは少々頭が重く感じられると思いますが、じき馴染むものですからご安心を」
「言語魔法!? すげっ……だぁあああ」
おじいさまの言う通りだった。
急に頭を振ったせいか、痛みが倍増する。
グギギと唸りつつ、慎重に視線を巡らせると、そこは天井にばかでかい穴の開いた、ほぼ壁しか残っていない部屋だった。
「あーやっぱ夢じゃない感じかぁ……」
「はい?」
「すみません何でもないです」
痛みのせいか、ショックだったのか。
つんと来る鼻を押さえてしばらく下を向く。
……よし、大分楽になってきた。
顔を上げると俺は一応ベッドらしき物に寝かされて、手には布が巻かれていた。
そして緊張したような顔で俺を見つめるご老人が一人、と。
「あの」
「はっ」
俺が言葉を発すると、相手は緊張した様子で頭を下げる。
その態度には深い敬意が感じられ──るのは何故? え、初対面ですよね? 何で俺こんな所にいるの? あとレグルス君は?
どれから尋ねようかと頭を悩ませていると、向こうから答えが剛速球で飛んできた。
「何なりとお申し付け下さい勇者様」
「ゆっ……えええええ!?」
「だから違うんです! 俺は勇者じゃなくってぇ!」
さっきの天井穴開き部屋は控えの間だったらしく、現在俺は謁見室にて上半身をわたわた動かしていた。
一部壁にヒビは入っているが、この部屋は概ね無事のようだ。
正面に王様、その横にレグルス、両脇にずらりと並ぶ貴族を差し置き、豪華な椅子に座らせられた俺は完全にアガッていた。
だって人生こんなに注目浴びる事なかったもの。胃がキリキリする。
「勇者はそこにいるレグルスで、俺は全然関係無いただの一般人ですハイ!」
「いえ、間違いなくこのお方が伝承にある勇者かと!」
「おーいちょっとーそこのーレグルスくんんん?」
「……ッ」
名を口にした途端目を見開いて俺を見たレグルスは、感無量、みたいな顔をしてその場に膝を突く。
やめて。主君の横でしていい事じゃないよ多分。
「勇者殿は──」
「ノー!」
「……コホン」
本編では顔無しテキストのみだった亡国の王様は、王様だった。
『隷属のガレリア』は中世ヨーロッパ的な服装を基調に古代ローマ風が混ざり合い、更に現代らしいアレンジを加えたデザインだったのだが、概ねそんなような印象。
シャツにチュニックにサーコートのそれぞれ豪華版。
マントも毛皮だし、王冠載ってるし、まるで絵本に出てくるような『王様かくあるべし』と言った王様に、密かな感動を覚える。王様や~。
「しかし客人殿は、『渡り人』とお見受けするが?」
「渡り人?」
「こことは違う世界から来る者たちの事だ。姿形が違い、言葉が通じぬ」
「……あっ、ああ~! はいはい」
確かにあったわ、そういう設定。
NTR違いがインパクト強すぎて忘れてたけど、主人公は元々この世界の『渡り人』、つまり現代人設定なんだよな。
この世界で稀に起こる現象。現代の知識を持つ渡り人は国を繁栄させたり、災厄になって滅ぼしたりと大活躍で、各地の伝承にもなっている。
そのうちの一つが『隷属のガレリア』のストーリーの基盤になっている。
魔に染まりし世界にある日勇者が訪れ、民を救うであろう的な王道展開ですわ。
「我が国の伝承にあるのだ。『滅びの日、神より与えられし力が天より無数の矢を降らせ、敵を打ち倒す──』と」
「おおぅ……」
なんて曖昧な伝承なんだ。どんな意味にも取れるじゃないか。
『滅びの日』なんて言っちゃってるけどそこはいいのか?
実際本編では滅んでたから間違いではないし、その後流星槍で敵が全滅するのも合ってるんだよなあ。
「ではやはり勇者はレグルスで間違いないですね! 俺はただ槍の場所教えただけなんでっ」
「我ら王族も知らぬ神器の位置を、渡り人であらせられる貴方が知らせてくれた、と」
「ウッ……」
これがゲームだったら俺も勇者ルートを楽しめたと思う。実際コンプしたし。
でも現実でレグルスが抱いた女を回収して歩くルートなんてゴメンだ。
俺は恋愛がしたいんだ。そりゃ将来的にはどうなるかわからないけどさ? ハーレムもやぶさかではないけれど? 童貞の間はまっとうな彼女とお付き合いの夢見たっていいだろ。
勇者全力回避の姿勢を崩さない俺と、王の視線が正面からぶつかり合う。
絶対嫌という思いを込めて見つめる。勇者はレグルスで間違いない。公式だってそう言ってる。ただちょっと後半道を外れただけなんですよね……。
「王都は滅びを免れた。貴方が『レグルスが勇者である』と仰るならば、それは間違いのないこと」
「はいそうですぅぅ! 間違いありません!」
王様! 素敵! 最高! ヨッ名君!
「また襲撃を知らせ、勇者を導いた貴方は神の使いであろう」
「うえぇええ!?」
王様! 何してんの! ちょっと待って!? 違うからそれ!
なんだその超展開。本編に無い概念出してくんなや!
いい年したおっさんが、揃いも揃ってウンウン頷いている。
えええなんでこの国まとまってるの。誰か一人くらい俺の正体怪しんで嫉妬してギギギとかしないんかい。え、本当に名君……?
「そんな大層なもんじゃないです……」
レグルスなんてもう、キラッキラした目で俺を見ている。
顔面と相まってとんでもない圧だ。両手を組み、地面に膝を突いて拝み始めた。うわ否定し辛ぇ……!
主人公も一応勇者の範囲ではある。
道を逸れたレグルスの代わりに、奴が取りこぼした各地のフラグと装備と女を回収し、最終的に奴が為し得なかったラスボス撃破をしてハッピーエンドだからな。
だがこの場合は……渡り人である俺がその道を選ばなければ、この世界このルートのまま存続していくのか?
その場合レグルスの扱いは?
ここから各地で襲撃が頻発し、レグルスは仇を追って大陸中を駆け回る。
でも幾ら強力な流星槍があっても所詮は一人。
取りこぼした町も都市もたくさんあって、周辺は荒れて……そんな中ようやく主人公が現れて、えっちらおっちら助けに行く訳だよな。
となると国を亡くし一人孤独にさすらうのじゃなく、国のバックアップありの迅速な対応があれば──…
「くっ」
考える時間が欲しいのに、状況がそれを許さない。
此処で俺が徹底的に否定して、関係ないですサヨウナラと言って別れたとして。
じゃあ誰がレグルスを敵の所へ連れて行く?
「ああ……そうか。そうだよなぁ」
この国と同じだ。
ゲームをプレイした俺は、これから何が起こるか知っている。
被害が出る前に防げる。誰かが死ぬのを見なくて済む。
それにまあ……元の世界に帰れるかどうかもわからんし。
「神……とか、そういうのとはちょっと違うんですけど。これからレグル……勇者様にして欲しい事は、色々とありまして」
「ウオオオオオッ!」
「なにごとっ!?」
周囲のおっさんじいさん共が一斉に声を上げる。
王も、レグルスも、皆拳を振り上げて野太い声が響き渡る。
「皆の者! 今此処に勇者が誕生した!」
「オオオオオオ!」
「勇者の導き手、神の使いにより我が国には一層の繁栄がもたらされるであろう!」
「オオオオオオオオ!!」
「はわわわわ」
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