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マシュマロの誘惑
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校門をくぐり、昇降口で靴を履き替える。綾菜が歩くたびに、ランドセルの上に乗ったクリーム色のフードが、まるで生き物のようにポンポンと弾んだ。
教室に入り、ランドセルを机の横にかける。その時だった。
「ねえ、綾菜ちゃん。そのパーカー、すっごく可愛い!」
声をかけてきたのは、おしゃれが大好きでクラスの流行に敏感な、あかりちゃんだった。彼女の視線は、綾菜の背中でふっくらと形を保っている、あの自慢のフードに釘付けになっている。
「え、本当? ありがとう」
綾菜は少し照れながら、無意識に首元のすっきりした襟ぐりを触った。
「なんかね、普通のパーカーと違うよね。紐がないからかな? なんだか大人っぽくて上品。それに……」
あかりちゃんが我慢しきれないという様子で手を伸ばしてきた。
「ちょっと触ってもいい?」
「いいよ、どうぞ」
あかりちゃんが指先でフードの表面をツンツンと突き、それから手のひらで包み込むように優しく握った。
「わあ、すごい! なにこれ、ふわっふわ! 中に綿が入ってるの? マシュマロみたい!」
「そうなの。これね、中にボアが挟まってて、中綿みたいになってるんだよ」
綾菜が自慢げに解説すると、周りにいた他の女の子たちも「なになに?」と集まってきた。
「本当だ、形が全然潰れないね」
「このクリーム色も、綾菜ちゃんに似合ってて優しい感じがする!」
代わる代わるフードの弾力を確かめる友達の感触が、背中を通して伝わってくる。みんなが「可愛い」「気持ちいい」と言ってくれるたびに、今朝、鏡の前で丁寧に形を整えた時間が報われるような気がした。
「いいなー。私もそんなパーカー、お母さんにねだってみようかな」
あかりちゃんが冗談っぽく笑う。
綾菜は、身ごろの内側で自分を温めてくれているボアのぬくもりを感じながら、胸の奥までポカポカしてくるのを感じた。
お気に入りの服を、大好きな友達に認めてもらえる。それだけで、今日の授業はいつもよりずっと楽しくなりそうな予感がした。
教室に入り、ランドセルを机の横にかける。その時だった。
「ねえ、綾菜ちゃん。そのパーカー、すっごく可愛い!」
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「え、本当? ありがとう」
綾菜は少し照れながら、無意識に首元のすっきりした襟ぐりを触った。
「なんかね、普通のパーカーと違うよね。紐がないからかな? なんだか大人っぽくて上品。それに……」
あかりちゃんが我慢しきれないという様子で手を伸ばしてきた。
「ちょっと触ってもいい?」
「いいよ、どうぞ」
あかりちゃんが指先でフードの表面をツンツンと突き、それから手のひらで包み込むように優しく握った。
「わあ、すごい! なにこれ、ふわっふわ! 中に綿が入ってるの? マシュマロみたい!」
「そうなの。これね、中にボアが挟まってて、中綿みたいになってるんだよ」
綾菜が自慢げに解説すると、周りにいた他の女の子たちも「なになに?」と集まってきた。
「本当だ、形が全然潰れないね」
「このクリーム色も、綾菜ちゃんに似合ってて優しい感じがする!」
代わる代わるフードの弾力を確かめる友達の感触が、背中を通して伝わってくる。みんなが「可愛い」「気持ちいい」と言ってくれるたびに、今朝、鏡の前で丁寧に形を整えた時間が報われるような気がした。
「いいなー。私もそんなパーカー、お母さんにねだってみようかな」
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