ふっくらフードの魔法

あやてぃ

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お母さんの「ポンッ」

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公園の芝生でひとしきり笑い合ったあと、二人は少し歩いて、おしゃれなカフェが並ぶ通りへと向かいました。お母さんも、今日は特別なお出かけということで、パーカーに合わせたベージュのフリル付きリュックを背負っています。

「ねえ、綾菜。お母さんのフード、さっきの引っ張りあいっこで、ちょっと形が崩れちゃったみたい」

お母さんはそう言って足を止めると、少しだけ背中を丸めて綾菜の方を振り返りました。

「リュックと背中の間に、フードが少し入り込んじゃってる気がするの。綾菜、お母さんのことも『ポンッ』って整えてくれる?」

「えっ、私が?」

いつもはお母さんにやってもらうばかりの綾菜は、少しだけ緊張しながら、お母さんの背後に回りました。大人サイズのお母さんの背中は、自分よりもずっと大きくて、頼もしい。
お母さんのフリル付きリュックの上で、自慢の中綿ボアフードが少しだけ片側に寄って、リュックのストラップに挟まっていました。

「……うん、任せて!」

綾菜はお母さんがいつも自分にしてくれるように、指先をリュックと背中の隙間にそっと滑り込ませました。お母さんのパーカーからも、自分と同じ、お日様のような温かい匂いがします。
挟まっている生地を、慎重に、でも大胆に「よいしょ」と引き上げます。
そして、リュックのフリルの上に乗ったフードの形を、両手でふっくらするように整えて……。

「……はい、ポンッ!」

綾菜が最後に軽くフードを叩くと、大人サイズの大きなフードは、見事なマシュマロのような形に復活しました。クリーム色の生地が、お母さんのリュックのフリルと重なって、とってもおしゃれに見えます。

「どう? お母さん、綺麗になったよ!」

お母さんは立ち上がり、近くのショップのウィンドウに映る自分の背中を確認しました。

「わあ、本当! 綾菜、すごく上手。お母さんの背中、なんだか前よりずっと幸せそうに見えるわ」

お母さんは嬉しそうに目を細め、綾菜の手を握りました。
いつも守ってもらうばかりだと思っていたけれど、自分もお母さんの「幸せの形」を整えてあげられる。そのことが、綾菜にはたまらなく誇らしく感じられました。

「お母さん、また崩れたらいつでも言ってね。私が何度でも『ポンッ』ってしてあげるから!」

「ありがとう、綾菜。頼りにしてるわね」

おそろいのパーカーを着た二人の背中。
小さな小花柄のリュックと、大きなフリルのリュックの上で、二つのふっくらとしたフードが、誇らしげに並んで揺れていました。
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