【完結】正義のオメガとクズアルファ

西胡瓜

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7 新たなお願い

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 ──き、きまずい……

 俺が座っている席の前には美味しそうにハンバーグを頬張る日向と何食わぬ顔で食事をする凛。

 ──あれ、俺だけ気にしてる感じ?

 俺だけが気まずいと思っているだけで二人は平然とご飯を食べて普通に会話をしている。
 なんか、俺だけテンション上がってガキみたいで恥ずかしいんだけど、まぁ、二人にはバレていないからいいが。

「正義食べないの? もしかしてさっきのこと気にしてる?」

「は!? べ、べ、別にきにしてねぇし! あんなの普通だし」

「へー、普通ねぇ」

 日向は俺の顔を横目に見ながら余裕そうにニヤニヤと見てくる。なんでこいつはこんなに余裕なんだ。同じ双子なのに……今は俺も髪を下ろしてるからほんとに鏡を見ているみたいだ。

 そんなことよりも、確認しておかなければいけないことがある。兄としてそして友としてだ。

「おまえら、その……付き合ってたのかよ」

 俺の言葉に二人は食事をする手を止めて顔を見合わせる。答えたのは日向だった。

「うん、付き合ってるよ」

「い、い、いつから!」

「うーん、中3の夏休みぐらいからかな?」

「そんな前からかよ!!」

 今は6月の初めだからもうすぐで1年経つじゃねーか!

「なんで俺に言わなかった……」

「だって、正義男同士とかキモいって前に言ってたから~」

「なっ!? そうだけど……でも、弟のことをキモいとか思ったりしねぇ!!」

「じゃあ俺のことはキモいと思ってるのかよ」

 今まで黙っていた凛が俺に話しかける。

「あぁ、お前はきめぇ」

「んなぁ! 理不尽な」

 まぁ、今更こいつががホモだって知っても嫌いになったりしない。凛は泣くふりをして日向に慰められている。俺の前でイチャつくなごらぁ。

 それにしても、まさかいつも一緒にいるこいつら二人が好き合っている仲だったとは、わかんないもんだな。

 いや待てよ、でもこいつら中学の時普通に女子と付き合ってなかったか? 二人ともアルファだったから女子によくモテていた。
 この二人と一緒にいる俺は女子から白い目でみられていたものだ。

 それなのに、日向と俺は双子なのに同じ顔だと言うのに日向だけがモテていた。アルファの日向とベータに思われていた俺になんの違いがあるのだと女子に聞いたところ、「性格」っとキッパリ言われてしまった。

「お前ら女子と付き合ってたじゃねーか」

「それは、付き合ったことで凛のかっこよさに気づいた的な?」

「まぁ、そういうこった」

「へー」

 俺から聞いといてなんだが、よく分からないし惚気話になりそうだったのでテキトーに返事をしておいた。
 
「そんなことよりさ、正義が久住先輩に暴力振るったからきっと僕明日から久住先輩に虐められちゃうなー」

「うっ、それは本当に悪りぃ」

 日向が話を変える。この話も俺にとっては嫌な話に変わりないのだが、とりあえず謝罪する。

 俺はあいつと学校が違うからいいが、日向はあいつと同じ学校だから、顔を合わせることもあるはずだ。
 俺より強い日向だが、学校では優等生を演じているわけだから暴力なんてもってのほかだ。あんなことをされたとはいえ、俺の代わりにテストを受けてくれた借りを返すはずが、問題を起こしてしまうとは情けない。

「じゃあさ、明日から一週間僕の代わりに星宮学園に通ってよ。僕はヤバキタに通うからさ」

 日向は全く困った様子もなく、笑いながらとんでもない提案をしてきた。

「いやいや、あんなお坊ちゃま学校の授業なんかついていけねぇよ!」

「大丈夫! 明日からの一週間はテスト返し期間だから授業も進まないし自習ばっかりだから」

「でも……」

「あーあ、僕久住先輩にボコボコにされてあんなことやこんなことされちゃうんだろうなーぐすん」

「泣くなよ日向、きっとお兄ちゃんがなんとかしてくれるはずだから」

 チラチラとコチラを見ながら、クソ下手くそな猿芝居をするバカップル。だが、悪いのは俺なわけだから断るわけにもいかない。一週間だけだし、その間に久住をどうにか日向に近づけないようにシメておけばいいわけだ。
 
「はぁー、わかったよ。代わればいいんだろ」

 俺は諦めて、日向の提案に乗ることにした。

「やったー、凛これで明日から一緒に通えるね」

「あぁ、さんきゅーな正義」

 こいつら、もしかして久住のことなんてどうでもよくて二人で同じ学校に通いたいだけだったんじゃないのか。

 目の前のバカップルがきゃっきゃしてるのを尻目に大きな溜息を吐く俺だった。
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