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8 一日目
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「なんでお前が着いてくるんだよ」
「うるせぇ、お前には聞きたいことが山ほどあるんだよ!」
凛が家に帰るというので、俺が送ってやると凛の後をついて来ていた。女子でもあるまいし不良校に通う男を送るなんて気持ち悪りぃが、こいつには聞きたいことが山ほどあるため、二人きりになりたかった。
学校で話せばいいのだが、明日からは星学に通わなくちゃならなくなったから、今日ぐらいしか話すチャンスがないと思った。
「お前本当に日向のこと好きなのかよ」
「あ? 本気だよ、まじで好き」
マジトーンで言ってくるこいつに感心してしまう。こんな真面目な凛は十数年一緒にいて初めて見た。
「じゃあなんで俺と同じ学校にしたんだよ、星学に通えばよかっただろ……お前もアルファでそれなりに頭いいし」
俺と連んでいた凛だが、ヤバキタでは学年いや学校で一番頭がいいだろう。
中学の時もクラスで上位だったし、アルファのこいつなら星学に受かったはずだ。なのになんで俺なんかと同じ底辺校のヤバキタに通ってるのか今更ながら不思議である。
「日向に頼まれたんだよ正義のこと頼むって、俺、別に勉強好きじゃねぇし、星学なんてお坊ちゃま校行きたかなかったからな」
「日向が、そんなこと……」
「あれでも、お前のこと気にかけてるんだよ、お前オメガの自覚全然ないからな、アルファの俺が側にいれば少しは安全だろ」
「そっか……じゃあやっぱり今日は悪いことしちまったな」
いつもふざけている日向だが、本当は俺を気にかけてくれたと知り嬉しい反面申し訳なさが募る。
「だったら、久住をどうにかしとけよ」
「わーてるよ」
どうにかするつもりではいるが、どうしたらいいのか全くわからないでいる。考えるのは性に合わないので学校に行ってから考えることにした。
「あと、お前もさっさと彼女でも彼氏でもいいから作れよなー、番にならなくてもいいから誰か作れよ」
「はぁ?!」
急に全く違う話をし出す凛に、アホみたいな声を出してしまう。つーか、彼氏ってお前らと同じホモにすんじゃねぇ。
「うるせー、弟に突っ込まれてよがってたクセに! アルファ様もあんな風によがるんだな」
「うっ……オメガのお前には負けるけどな。久住に少しちんこイジられたぐらいであんあん言ってたじゃねーか」
「言ってねーわ! 今度発情期が来たらお前の部屋に入ってラットにしてやろーか!!」
「ふっ、残念だがお前ごときのフェロモンなんかでラットになれる気がしないな」
──ムッカー!!!
男としてのみならずオメガとしても屈辱的なことを言われた気がする。
「まぁ、落ち込むなって星学でいいやつ探してこいよ」
「男子校だろーが!!」
俺に男と付き合えというのか、絶対にごめんだ。とにかく久住の問題が解決したら彼女探しでもしてさっさと童貞を卒業しなければと固く決意した俺だった。
◇◇◇
──次の日
「いい! 話しかけられても嫌な顔しないでニコニコ笑ってること、授業中に寝ないこと、早弁しないこと、先生に反抗しないことあと……」
「あー、もうわかったから」
「ほら! 腕まくりしない!」
星宮学園のブレザーの制服を着た俺に矢場沢北高校の学ランを着た日向に学園での注意事項を聞いていた。
堅苦しいブレザーを腕まくりしようとしたら注意されて登校前からうんざりしている。髪の毛も前髪を下ろしていて鬱陶しい。
昨日と同じピンをつけられそうになったので、断固として拒否した。
「まぁとりあえず、問題を起こさないよう久住先輩をどうにかしてくれればいいから」
「わーったよ」
「そうだ、部活だけど僕、映画研究部に入ってるから放課後はそこに寄ってね」
「お前部活なんて入ってたのかよ」
「まぁね、ほぼ活動してないから顔だけ出せば大丈夫だよ」
部活なんて中学の時以来だ。と言っても名前だけ入っていただけで幽霊部員だった。
面倒くさいが顔を出すだけなら別にいいだろう。
「薬持った?」
「あ、忘れてた……」
「駄目だよ! 酷くないとはいえ正義はオメガなんだから! それに星学にはアルファの生徒が多いんだからね!」
「わーってるよ、まだ発情期の時期じゃねーのにめんどくせぇ」
身支度を終えた俺たちは学校に向かうため一階に降りた。
「あら、今日は二人逆なの?」
「あぁ、ちょっとな」
「なんだ、楽しそうだな」
一階に降りると父と母に遭遇する。さすが両親というべきか俺たちを瞬時に見分け、逆になっていることを言い当てたのだが、楽しそうだと笑っている。
不良の俺がいうのもなんだが、そんなんでいいのかと思ってしまう。
アホ両親に呆れながら靴を履いた俺たちは玄関のドアを開けた。
「よ! はよー」
「おはよう凛」
「……はよ」
玄関前にはいつも通りヤバキタの学ランを着た凛が俺たちを待っていた。憂鬱な俺を気にかけることもなく、早速二人で「学ランも似合ってるな」なんてイチャイチャ話をしている。
学ランなら中学でも着ていたし珍しくもないだろうに。
昨日、付き合ってるのがバレてからあからさまに俺の前でもイチャつくようになっている気がする。羨ましくはないが腹が立つ。
苛立っている俺に気付いたのか凛が俺に声をかける。
「正義も似合ってるぞー、日向にそっくりだ」
「そうかよ」
まったく嬉しくないし、双子なんだから似ていて当然だ。俺は不貞腐れながらイチャつく二人の後ろを歩いて行った。
駅の前まで歩いて来ると三人は立ち止まる。ヤバキタは駅から歩いたところにあるのだが、星宮学園は駅から5駅ほど先にあるためここでお別れだ。
「じゃ、頑張ってね」
「頑張れよー」
「ちっ、うるせー」
応援する(楽しんでいる)二人に素気なく別れを告げて、駅のホームに向かって行った。改札を通る前に二人の姿を見ようと、振り返ると腕を組んでイチャイチャと学校に歩いていく姿が見えた。
つーか今は日向が俺なんだから、側から見たら俺と凛が付き合ってるみたいになってんじゃないのか……頼むから変な噂をばら撒かないでくれと思いながら、俺は改札を通った。
「うるせぇ、お前には聞きたいことが山ほどあるんだよ!」
凛が家に帰るというので、俺が送ってやると凛の後をついて来ていた。女子でもあるまいし不良校に通う男を送るなんて気持ち悪りぃが、こいつには聞きたいことが山ほどあるため、二人きりになりたかった。
学校で話せばいいのだが、明日からは星学に通わなくちゃならなくなったから、今日ぐらいしか話すチャンスがないと思った。
「お前本当に日向のこと好きなのかよ」
「あ? 本気だよ、まじで好き」
マジトーンで言ってくるこいつに感心してしまう。こんな真面目な凛は十数年一緒にいて初めて見た。
「じゃあなんで俺と同じ学校にしたんだよ、星学に通えばよかっただろ……お前もアルファでそれなりに頭いいし」
俺と連んでいた凛だが、ヤバキタでは学年いや学校で一番頭がいいだろう。
中学の時もクラスで上位だったし、アルファのこいつなら星学に受かったはずだ。なのになんで俺なんかと同じ底辺校のヤバキタに通ってるのか今更ながら不思議である。
「日向に頼まれたんだよ正義のこと頼むって、俺、別に勉強好きじゃねぇし、星学なんてお坊ちゃま校行きたかなかったからな」
「日向が、そんなこと……」
「あれでも、お前のこと気にかけてるんだよ、お前オメガの自覚全然ないからな、アルファの俺が側にいれば少しは安全だろ」
「そっか……じゃあやっぱり今日は悪いことしちまったな」
いつもふざけている日向だが、本当は俺を気にかけてくれたと知り嬉しい反面申し訳なさが募る。
「だったら、久住をどうにかしとけよ」
「わーてるよ」
どうにかするつもりではいるが、どうしたらいいのか全くわからないでいる。考えるのは性に合わないので学校に行ってから考えることにした。
「あと、お前もさっさと彼女でも彼氏でもいいから作れよなー、番にならなくてもいいから誰か作れよ」
「はぁ?!」
急に全く違う話をし出す凛に、アホみたいな声を出してしまう。つーか、彼氏ってお前らと同じホモにすんじゃねぇ。
「うるせー、弟に突っ込まれてよがってたクセに! アルファ様もあんな風によがるんだな」
「うっ……オメガのお前には負けるけどな。久住に少しちんこイジられたぐらいであんあん言ってたじゃねーか」
「言ってねーわ! 今度発情期が来たらお前の部屋に入ってラットにしてやろーか!!」
「ふっ、残念だがお前ごときのフェロモンなんかでラットになれる気がしないな」
──ムッカー!!!
男としてのみならずオメガとしても屈辱的なことを言われた気がする。
「まぁ、落ち込むなって星学でいいやつ探してこいよ」
「男子校だろーが!!」
俺に男と付き合えというのか、絶対にごめんだ。とにかく久住の問題が解決したら彼女探しでもしてさっさと童貞を卒業しなければと固く決意した俺だった。
◇◇◇
──次の日
「いい! 話しかけられても嫌な顔しないでニコニコ笑ってること、授業中に寝ないこと、早弁しないこと、先生に反抗しないことあと……」
「あー、もうわかったから」
「ほら! 腕まくりしない!」
星宮学園のブレザーの制服を着た俺に矢場沢北高校の学ランを着た日向に学園での注意事項を聞いていた。
堅苦しいブレザーを腕まくりしようとしたら注意されて登校前からうんざりしている。髪の毛も前髪を下ろしていて鬱陶しい。
昨日と同じピンをつけられそうになったので、断固として拒否した。
「まぁとりあえず、問題を起こさないよう久住先輩をどうにかしてくれればいいから」
「わーったよ」
「そうだ、部活だけど僕、映画研究部に入ってるから放課後はそこに寄ってね」
「お前部活なんて入ってたのかよ」
「まぁね、ほぼ活動してないから顔だけ出せば大丈夫だよ」
部活なんて中学の時以来だ。と言っても名前だけ入っていただけで幽霊部員だった。
面倒くさいが顔を出すだけなら別にいいだろう。
「薬持った?」
「あ、忘れてた……」
「駄目だよ! 酷くないとはいえ正義はオメガなんだから! それに星学にはアルファの生徒が多いんだからね!」
「わーってるよ、まだ発情期の時期じゃねーのにめんどくせぇ」
身支度を終えた俺たちは学校に向かうため一階に降りた。
「あら、今日は二人逆なの?」
「あぁ、ちょっとな」
「なんだ、楽しそうだな」
一階に降りると父と母に遭遇する。さすが両親というべきか俺たちを瞬時に見分け、逆になっていることを言い当てたのだが、楽しそうだと笑っている。
不良の俺がいうのもなんだが、そんなんでいいのかと思ってしまう。
アホ両親に呆れながら靴を履いた俺たちは玄関のドアを開けた。
「よ! はよー」
「おはよう凛」
「……はよ」
玄関前にはいつも通りヤバキタの学ランを着た凛が俺たちを待っていた。憂鬱な俺を気にかけることもなく、早速二人で「学ランも似合ってるな」なんてイチャイチャ話をしている。
学ランなら中学でも着ていたし珍しくもないだろうに。
昨日、付き合ってるのがバレてからあからさまに俺の前でもイチャつくようになっている気がする。羨ましくはないが腹が立つ。
苛立っている俺に気付いたのか凛が俺に声をかける。
「正義も似合ってるぞー、日向にそっくりだ」
「そうかよ」
まったく嬉しくないし、双子なんだから似ていて当然だ。俺は不貞腐れながらイチャつく二人の後ろを歩いて行った。
駅の前まで歩いて来ると三人は立ち止まる。ヤバキタは駅から歩いたところにあるのだが、星宮学園は駅から5駅ほど先にあるためここでお別れだ。
「じゃ、頑張ってね」
「頑張れよー」
「ちっ、うるせー」
応援する(楽しんでいる)二人に素気なく別れを告げて、駅のホームに向かって行った。改札を通る前に二人の姿を見ようと、振り返ると腕を組んでイチャイチャと学校に歩いていく姿が見えた。
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