異世界では総受けになりました。

西胡瓜

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第三章 建国祭編

92 二日酔い

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「ん? あれ、ここは俺の部屋か……」

 目を覚ますとそこは俺の部屋だった。上半身を起こし窓の外を見ると太陽の光が差し込んでおり朝だということがわかる。時計を見るとまだ6時前、起きるにはまだ早いので二度寝でもするかとアルを起こさないようにもう一度布団の中に潜った。

 ———ん? アルを起こさないように?

「うぇぇぇ! なんでアルが俺の布団に!!!」

 隣ですやすやと寝ているアルの姿に俺は驚き潜った布団を払いのける。

「んん、あれサタローおはようって、まだ6時前じゃないか、もう少し寝よう」

 そう言うとアルは俺の身体をベッドに戻し、お互いに向き合った状態で横になった。美しいアルの寝顔が目の前にあり、ドキドキしてとても寝られる気がしない。
 そんなことよりもなぜアルが俺の部屋の俺のベッドで寝ているのか寝起きのぼーっとしている頭で考える。

 昨日は建国祭の式典に出て、そしたらリズの婚約者(仮)をすることになり、魔王に殺されそうになり、エドガーとお酒飲むことになり楽しく談笑しながらお酒を飲んだ。昨日は本当に色々なことがあった日だ。今までの人生の中でもとても貴重な体験をした気がするが、起きたらアルが俺のベッドで寝ているという状況にはどう考えても辿り着かない。

 アルに抱きつかれながら寝起きの頭で一生懸命に昨日のことを思い出そうとする。何か夢を見ていた気がするのだが、その内容は全く思い出せない。それに加えて頭がガンガンと痛い。これが俗に言う二日酔いというやつだろうか。飲んでいる時はあんなに気持ちよく飲んでいたのに今は頭が痛く何が起きたのか分からなくてとてもいい気分とは言えない。

「それにしても、綺麗な顔だな……」

 回らない頭で色々考えているのだが、目の前のアルの美しい寝顔にポロリと本音をこぼしてしまった。寝ていることをいいことに俺は指でアルの顔にそっと触れた。なぜこの様な状況になったのかは分からないが、悪い気分は全くしない。むしろ朝から幸せであることに違いはない。起きたらイケメンが隣にいるとか最高かよっ! ってやつである。

「んっ……」

 アルがくすぐったそうに身をよじり、寝ているはずなのだが俺の腰に手を回しぐっと身体を自身の方へ引き寄せた。アルと身体が密着し彼の体温が直に伝わってくる。アルからはとてもいい匂いがした。
 
「んあっ……ちょ、アルくすぐったい……ていうか起きてるだろ!?」

 アルは俺の首元に顔を埋めるとちゅっちゅっと首にキスをしてきた。くすぐったさに身を捩らせる。

「昨日のサタロー可愛かったよ。あんなにエロいなんて知らなかった」

 アルは俺の耳元で吐息混じりの声でそう言った。

「え? 何のこと……」
「え?」
「ん?」
「!? もしかしてサタロー昨日のことを覚えてない……」

 俺の首元に埋めていた顔をバッとあげると焦った様な驚いた様なアルの顔が視界に入る。ここは素直に告げるべきだろう。だって何一つとして思い出せないのだから。

「……エドとお酒を飲んだことは覚えてるんだけど、その後のことは全く覚えてないんだよね……だから何でアルが俺のベッドで寝てるのかもよくわからないんだよね……」
「…………はぁぁぁぁぁ」

 盛大なため息をついたアルがまた俺の首元に顔を埋める。どうしてアルがここにいるか教えて欲しかったのだが、その後、彼は不貞腐れたように俺を抱き枕にして二度寝についた。
 どうしてこの様な状況になったのかは分からないが、一つだけわかったことは、アルに迷惑をかけたことだ。酒に酔った勢いで絶対何かやらかしたよ俺。酒は飲んでも飲まれるなと聞いたことがあるが、こういうことになるからなのだと一つ学んだ俺だった。

 エドはあの後どうなったのかも気になるし、俺がどうやって自分の部屋に戻ったのかも謎だ。アルは何も教えてくれずただ「お酒飲むの禁止」とだけ強く釘を刺された。その時のアルの顔は超真剣で、やはり何かとんでもない迷惑をかけてしまったのだと申し訳なさが増すばかりであった。ただ、最後俺の部屋を出る時にアルがぼそっと「でも、エロかったから私のいる時なら飲んでもいいかな。今度は記憶が残る程度にね」とよく分からないことを言っていた。
 エロかったとは何のことだろうか、ガンガンと痛い頭を襲えながらもなぜか身体は軽く、魔力が増えている様な気がする。となると何が起きたのか予想できなくもないのだが、自分が何をしでかしたのか想像するだけで、気分が悪くなるので、気のせいだと自分に言い聞かせ俺は三度寝を決め込んだのであった。



 ◇◇◇



「おはよ……こんにちは、デニスさん」
「おお、遅いじゃねーかサタロー! なんだそんなげっそりした顔して?」
「いや、ちょっと二日酔いで……」

 三度寝をした俺が起きたのは正午を過ぎたごろだった。式典の翌日だというのに兵士たちは皆仕事をしているというのになんたる体たらくだと自分でも思う。
 俺はポットに入っていた白湯をコップに注ぐとゆっくりと飲む。三度寝してだいぶ楽になった。
 
「なんだなんだ、エリザベスの嬢ちゃんの婚約者なんて騒ぎになってるっていうのに当の本人は二日酔いで寝てるとは呑気なものだな、ガッハハハー」
「ぶふっ、何故それを!」
「何言ってんだ? みんな知ってるぞ?」

 アルのことで頭がいっぱいだったが、そう言えばそんなこともあったと今になって思い出す。冷静になって考えると結構とんでもないことに首を突っ込んでないかと、今更ながら後悔の念が押し寄せてくる。そりゃ王女に婚約者ができたなんて話、広まらないわけがない。俺まじでとんでもないことしてないかと和らいだはずの頭痛がぶり返し始めた気がする。
 頭を抱えている俺の姿を見たデニスさんが、盛大に笑い出す。

「ガッハハハー、その様子だと嬢ちゃんに無理やりやらされたんだろ?」
「えっ、何でわかるんですか……」
「やっぱりな、嬢ちゃんがサタローみてぇなヒョロガキを婚約者にするなんておかしいって兵士たちも不思議がってたんだ」

 ヒョロガキって結構ひどい言われようであるが、そんなことよりもリズはどんだけ自分の性癖を皆んなに言いふらしているのだと呆れてしまった。でも、皆んなが婚約者のことを間に受けている訳ではないことに少しホッとした。とはいえ、俺にはこのことに関してどうすることもできないので放っておくしかないのだ。もしもの時は婚約破棄しましたとか言ってくれればいいだろうし、そこまで考えなくてもいいかと自分を勇気づけた。

「大丈夫だよな……」

 たった2日の建国祭は、楽しさと怖さと後悔と不安が混じり合った複雑な思い出となったのであった。




 


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