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「カクマチ町へいらっしゃい」乱雑書き プロット ネタ案
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アムルあらためヒカゲ。
わたしは妖怪。
朽ちかけの体を持った、完全な妖怪。
もともとわたしは人間だった。ずいぶん昔だけど。
途中から妖怪になっていたことに気づかずに、わたしは人としてこの小さな村で生きてきた。
この村には力のある長がいた。大きなお城に村を囲む鎖の壁。
その外には決して出てはいけないと、ばあやに何度も言われたが、わたしは黙って何度も外へと出かけていた。
その度にものすごく怒られて。
今はもうそんなことはできない。
これは、わたしがまだ人だと信じきっていた頃のお話だ。
大きな城に鎖の塀に囲まれた、大きくもなく小さな町。
小さな城下町の周りにそれなりに広ガル町の数々は、観光名所にすらなっていた。
高い木々の中に、人々は空から隠れるように家を建て、木々を守るように灯をともし、その中で賑やかに、密かに生きている住民の姿が、わたしは昔から好きだった。
町を覆う森は町の外にも続いている。
しかし町の中ほど安全ではなく、町の外には恐ろしい魔物というものがいるらしい。
なので町の外には決して出てはいけないとうるさいくらいに言われていた。
ある日いつものように城下町から抜け出して、町に出る。
あっちこっちを走り回り遊んでいると、森の中に興味を持ち、外へと出てしまう。
そこで凶悪な魔物、蛇と出くわし、たまらず逃げる。
そこに村の重要人物が駆けつけ首をチョンパ。
助けてくれる。
真っ黒な肌をして、白いスーツのようなものを着た彼は、付いてくるようにと言って城下町へ戻り、城の中へと案内した。
城の中へと案内され、長老のような人と会う。その隣にはものすごい美人な女性が一人。水色の綺麗な服を着た女性だった。
長老が言う。
「この蛇は使いのものだ。森の中に住む術師のものだろう。くわれれば死んでいた」
と話し、最後によかったなと言ってくれる。
その後蛇は城の奥にある仏様に封印されることとなり、首は別の場所に封印されることになった。
そうしたあと、城下町の隅にある、少しだけ森に囲まれた家に帰ると、婆やが驚くほどの勢いで怒っている。
「こらアムル!あれほど町の外に出るなと言っておろうに!なぜ出た!」
ばあやには姿は見られていないのになぜバレたのかわからないが、蛇の噂でも広がったのだろうと。
ばあやの説教を、半分に聞いて流した。
そのあとしばらく経って。婆やが外へと出かけることとなった。
理由は教えてくれない。
これまでそんなことは一度もなかったので、とても驚いた。
すぐに帰るよ、そう微笑んで婆やは出て行ったが。
婆やが生きて帰ることはなかった。
その後すぐに、婆やが命を落としたと知る。
すごく落ち込む。
それからしばらくして、城下町に出ていたわたしは城に呼ばれた。
城へと向かい、例の長老が呼んでいるよと言われて向かう。見たこともない女性だった。
その最中に、足元に何か見覚えのある紙をみつける。
あれは確か、蛇を縛り付けていた紙?
何か黒い靄のようなものがかかっていて、どんな紙かもよく見えないが。
その時、背後で動く気配。
バット振り向くと、色がおぞましい色に、頭が三つに増えた、例の蛇だった。
驚いて固まっていたところに謎の声。
『拳を胸の前に!膝をついて顎を弾きなさい!脇も閉めて!拳を胸から上げてはならない!それは呪いの類だから、そうしていればそいつは襲わない!』
言われた通りに膝をつき、拳を胸に当てて顎を引く。
すると大蛇はこちらの様子を伺ったあと、すぐにその場を離れていった。
直後後ろでぐしゃりと言う音と、嫌な気配の消失。
後ろを見ると城の中にいるはずの長老が。
『まさか封印が破られるとは』
長老が言うには、封印したはずの蛇のそれが破られており、今絶賛放し飼い状態らしい。
封印をかけた先から破れるわけもないので、誰かが手を貸して封印を解いたのだろう。
と言うことらしい。
最後に場内に裏切りものもいる可能性を見ておく必要があるな。忌々しい。
と呟いてこちらに目を向ける。
怪我がないことを確認し、頼みたいことがあると一言。
受けることにする。
それは蛇の再封印にともなう結界の構成。
『君にならできるはずだ』
そういって一通りの手順を教えられた。
できるわけがない。と言うが、それでもと言われる。
どうして自分がと言う疑問を打ち消すかのように長老からの言葉。
『君のおばあさんはわたしの友人だった。とても、残念だったと思う。彼女には力があった。とてつもない力が。しかし、君を育てると決めてその力を捨てたんだ。理由は、もうすぐ分かる。彼女がなぜ力を捨てたのか。なぜわしが君に頼むのか。この仕事を引き受けてくれたら全てがわかるだろう』
そんなずるい文句を聞いて手を課すことにする。
小さな鈴をその手に握りしめて、わたしは走り出した。お札もその手に持っている。
順序は覚えた。あとはやるだけだ。
蛇の元へと走り、お札を使う。一つ目は火の術。
火の光線が蛇を襲い、その頭を焼き切った。
標的をこちらへ変えた蛇が襲ってくる。
それをうまいこと逃げながら二つ目のお札を使い、水の術でもう一つの首を切り飛ばした。
なんとか所定の位置まで走りこんで、最後のお札。闇の術で最後の頭を消し飛ばす。
そして『例の体制』をとって敵意を消しながら、右奥に見えてきた城の中に女性がいるのを確認。その横に白い肉のようなものがおいてある。
あれは蛇を誘い込むための餌なのだろう。
アムルは叫んだ!
「見よ!蛇よ!貴様の体はあそこだ!かの者が皮を剥ぎ!あそこに封印したのだ!蛇よ!貴様の頭はあそこにあるぞ!」
そう言うと目の前をスルスルと通り過ぎ、城の中へと入ってゆく。
その後ろ姿を見ていると、一番後ろの尻尾で、蛇が自分の首の切れた体を引きずっているのに気づき、どんな執念があの体に根付いているのだろうと考えてやめた。
蛇が城に近づいていく。
天に昇っていた日が傾き始め、蛇の体が背後から照らされる。
影が城の中にまでもびているのを確認し、女性とアイコンタクト。
アムルはひとっ飛びで屋根の上に登り。
手に持った鈴を『シャリーン』と一つ鳴らした。
『祈りたもう!護りたもう!封じたもう!かのものは人ならず化けの物!今ここに! 封じたもう! 我が名は!ヒスイ!』
直後、城下町全体に薄い何かが、それはまるで雫を落とした水面のように広がり、そして逆再生するかのように収縮する。
ブワッと吹き上がってきた力の根元が細く細く編み込まれ、糸となり、ひもとなり、縄となり、最後には城に巻き付いて引き締まる。
蛇の断末魔を聞きながらその気配が消えたことを確認し、再び最後に鈴を鳴らし、呪文を繰り返した。
『護りたもう!祈りたもう!かの者の身を封じたもう!我が名はアムル改ヒスイなり!』
唱え終わると同時に城の周りを縛り上げていた縄が見えなくなり、さわりとした爽やかな風が、髪を撫でて消えていく。
そうして蛇は無事封印された。
なんとなく、自分がただの人ではないのだろうなと言うことに気づいていたアムルあらためヒスイは、
同じ存在であろう城の長に話を聞きにいった。
「お前は人ではない。あの蛇に殺された可哀想な赤子じゃよ。その体は最早朽ちかけの体。魂がこびりつき、力あるもののそばにいたがために変革してしまった妖怪のような者じゃ。今後どうするかは、お前が決めて良い」
そう言われて城から出る。
綺麗な女性が外にいて、ふと話しかけてみる。
「どうして町の外ではなく、城下町の外に出てはいけなかったのだろうか」と。
すると女性は
「今の君になら見えるでしょう。この街の鎖の塀を見てごらん。理由がわかるわ」
優しく微笑みながら言われ、顔を上げて城下町をグルリと囲んでいる塀を見ると、今まで見えなかった透明な何かが、この街の塀の周りを、そして空でさえも包んでいることに気づく。
そして、それがなんであるかも、すべて察しがついた。
「っ!?、、、、けっかい、、、?」
朽ちかけた体は腐るのが早い。魂が入っていれば遅くはなるだろうがしかし、それでも死んだ体は普通の人より朽ちるのが早い。心臓は動いていないのだから。
そして聞いたことがあった。おさであるなら、朽ちた体を何年も保つ術式を使えると。
そんな術式を何年も前に、編み出したのだと。
「これは、わたしの、ため?」
しかしその術式には大きな欠点があり、自身の力の根元を全て使って作り出さなければいけないほか、術式を起動してしまうと、解除されるまでその中からは一切出られなくなってしまう。
それも、術式を起動する、その式が書かれた場所からは一歩も出てはならないのだ。
そんな話を祖母から聞いた覚えがある。
と言うことは。起動していると言うことは。
そんなことを考えていると女性が口を出してきた。
「この術式が書かれているのは城の敷地内。そしてわたし達がいる、広場へと向かう道、ここまで」
と言うとこは長老は、この何年もの間、城の外に出られなかったことになる。
「どうして、そこまで」
と呟いたところで女性が全てを説明してくれた。
長老はまず、アムルの本当のおじいさんであること。
おばあさんの方は血が繋がっていないこと。
長老の妻含めアムルの両親は魔物の強襲で亡くし、アムルもそこで死んだはずだったが、なんの影響か、魂だけは生きていた。
しかしこのままでは本当に死んでしまうと焦った長老は、急ぎで術式を開発。
発動条件が厳しいことに気づき、苦悩。
しているところに婆やが登場。わたしが面倒見てあげると豪語する。
力を持った者が近くにいることは危険でしかないと長老は言うが、婆やは大丈夫という。
術式起動に必要な力の根元が足りなかったところ。婆やがほぼ全ての力を使って手を貸すという。それは力を失うことと同等であるというのに。
もめにもめた結果、長には女性は慣れないという風習と、この子の正体がバレるのは良くないということで、婆やが押し勝ち、世話を見ることに。
術式を起動し、婆やとともに城下町の隅へも移り住み、長老派長いことこの街を守ってきた。
という経緯。
守られてきたことの感謝とともに、強くなりたいと願う心が芽生え、妖怪になったヒスイは同じ妖怪である長に強くなりたいと宣言。弟子になる。
黒人の白スーツ男にも手ほどきを受け、強くなる。
そして。強くなったヒスイは師匠の出立に立ち会う。
アウロという島に行くらしい。、とても強い魔物がわんさかいる、いったら帰ってこられない島だ。
長によく似た白いひげを生やしたおじいちゃんが向かうらしい。
とてもお世話になった人で、正直いって欲しくなかった。
走り寄っていくと、大きな荷物を軽々背負った二人が笑いかけてくる。
立ち止まってかける言葉に困っていると、二人はその横を通り過ぎ。
その横で立ち止まって、ヒスイの手を痛いくらいに握って一言。
「頑張りんさい」
ヒスイはその手を同じくらいキツく握り返して。
離した。
かける言葉はもう、見つからなかった。
わたしは妖怪。
朽ちかけの体を持った、完全な妖怪。
もともとわたしは人間だった。ずいぶん昔だけど。
途中から妖怪になっていたことに気づかずに、わたしは人としてこの小さな村で生きてきた。
この村には力のある長がいた。大きなお城に村を囲む鎖の壁。
その外には決して出てはいけないと、ばあやに何度も言われたが、わたしは黙って何度も外へと出かけていた。
その度にものすごく怒られて。
今はもうそんなことはできない。
これは、わたしがまだ人だと信じきっていた頃のお話だ。
大きな城に鎖の塀に囲まれた、大きくもなく小さな町。
小さな城下町の周りにそれなりに広ガル町の数々は、観光名所にすらなっていた。
高い木々の中に、人々は空から隠れるように家を建て、木々を守るように灯をともし、その中で賑やかに、密かに生きている住民の姿が、わたしは昔から好きだった。
町を覆う森は町の外にも続いている。
しかし町の中ほど安全ではなく、町の外には恐ろしい魔物というものがいるらしい。
なので町の外には決して出てはいけないとうるさいくらいに言われていた。
ある日いつものように城下町から抜け出して、町に出る。
あっちこっちを走り回り遊んでいると、森の中に興味を持ち、外へと出てしまう。
そこで凶悪な魔物、蛇と出くわし、たまらず逃げる。
そこに村の重要人物が駆けつけ首をチョンパ。
助けてくれる。
真っ黒な肌をして、白いスーツのようなものを着た彼は、付いてくるようにと言って城下町へ戻り、城の中へと案内した。
城の中へと案内され、長老のような人と会う。その隣にはものすごい美人な女性が一人。水色の綺麗な服を着た女性だった。
長老が言う。
「この蛇は使いのものだ。森の中に住む術師のものだろう。くわれれば死んでいた」
と話し、最後によかったなと言ってくれる。
その後蛇は城の奥にある仏様に封印されることとなり、首は別の場所に封印されることになった。
そうしたあと、城下町の隅にある、少しだけ森に囲まれた家に帰ると、婆やが驚くほどの勢いで怒っている。
「こらアムル!あれほど町の外に出るなと言っておろうに!なぜ出た!」
ばあやには姿は見られていないのになぜバレたのかわからないが、蛇の噂でも広がったのだろうと。
ばあやの説教を、半分に聞いて流した。
そのあとしばらく経って。婆やが外へと出かけることとなった。
理由は教えてくれない。
これまでそんなことは一度もなかったので、とても驚いた。
すぐに帰るよ、そう微笑んで婆やは出て行ったが。
婆やが生きて帰ることはなかった。
その後すぐに、婆やが命を落としたと知る。
すごく落ち込む。
それからしばらくして、城下町に出ていたわたしは城に呼ばれた。
城へと向かい、例の長老が呼んでいるよと言われて向かう。見たこともない女性だった。
その最中に、足元に何か見覚えのある紙をみつける。
あれは確か、蛇を縛り付けていた紙?
何か黒い靄のようなものがかかっていて、どんな紙かもよく見えないが。
その時、背後で動く気配。
バット振り向くと、色がおぞましい色に、頭が三つに増えた、例の蛇だった。
驚いて固まっていたところに謎の声。
『拳を胸の前に!膝をついて顎を弾きなさい!脇も閉めて!拳を胸から上げてはならない!それは呪いの類だから、そうしていればそいつは襲わない!』
言われた通りに膝をつき、拳を胸に当てて顎を引く。
すると大蛇はこちらの様子を伺ったあと、すぐにその場を離れていった。
直後後ろでぐしゃりと言う音と、嫌な気配の消失。
後ろを見ると城の中にいるはずの長老が。
『まさか封印が破られるとは』
長老が言うには、封印したはずの蛇のそれが破られており、今絶賛放し飼い状態らしい。
封印をかけた先から破れるわけもないので、誰かが手を貸して封印を解いたのだろう。
と言うことらしい。
最後に場内に裏切りものもいる可能性を見ておく必要があるな。忌々しい。
と呟いてこちらに目を向ける。
怪我がないことを確認し、頼みたいことがあると一言。
受けることにする。
それは蛇の再封印にともなう結界の構成。
『君にならできるはずだ』
そういって一通りの手順を教えられた。
できるわけがない。と言うが、それでもと言われる。
どうして自分がと言う疑問を打ち消すかのように長老からの言葉。
『君のおばあさんはわたしの友人だった。とても、残念だったと思う。彼女には力があった。とてつもない力が。しかし、君を育てると決めてその力を捨てたんだ。理由は、もうすぐ分かる。彼女がなぜ力を捨てたのか。なぜわしが君に頼むのか。この仕事を引き受けてくれたら全てがわかるだろう』
そんなずるい文句を聞いて手を課すことにする。
小さな鈴をその手に握りしめて、わたしは走り出した。お札もその手に持っている。
順序は覚えた。あとはやるだけだ。
蛇の元へと走り、お札を使う。一つ目は火の術。
火の光線が蛇を襲い、その頭を焼き切った。
標的をこちらへ変えた蛇が襲ってくる。
それをうまいこと逃げながら二つ目のお札を使い、水の術でもう一つの首を切り飛ばした。
なんとか所定の位置まで走りこんで、最後のお札。闇の術で最後の頭を消し飛ばす。
そして『例の体制』をとって敵意を消しながら、右奥に見えてきた城の中に女性がいるのを確認。その横に白い肉のようなものがおいてある。
あれは蛇を誘い込むための餌なのだろう。
アムルは叫んだ!
「見よ!蛇よ!貴様の体はあそこだ!かの者が皮を剥ぎ!あそこに封印したのだ!蛇よ!貴様の頭はあそこにあるぞ!」
そう言うと目の前をスルスルと通り過ぎ、城の中へと入ってゆく。
その後ろ姿を見ていると、一番後ろの尻尾で、蛇が自分の首の切れた体を引きずっているのに気づき、どんな執念があの体に根付いているのだろうと考えてやめた。
蛇が城に近づいていく。
天に昇っていた日が傾き始め、蛇の体が背後から照らされる。
影が城の中にまでもびているのを確認し、女性とアイコンタクト。
アムルはひとっ飛びで屋根の上に登り。
手に持った鈴を『シャリーン』と一つ鳴らした。
『祈りたもう!護りたもう!封じたもう!かのものは人ならず化けの物!今ここに! 封じたもう! 我が名は!ヒスイ!』
直後、城下町全体に薄い何かが、それはまるで雫を落とした水面のように広がり、そして逆再生するかのように収縮する。
ブワッと吹き上がってきた力の根元が細く細く編み込まれ、糸となり、ひもとなり、縄となり、最後には城に巻き付いて引き締まる。
蛇の断末魔を聞きながらその気配が消えたことを確認し、再び最後に鈴を鳴らし、呪文を繰り返した。
『護りたもう!祈りたもう!かの者の身を封じたもう!我が名はアムル改ヒスイなり!』
唱え終わると同時に城の周りを縛り上げていた縄が見えなくなり、さわりとした爽やかな風が、髪を撫でて消えていく。
そうして蛇は無事封印された。
なんとなく、自分がただの人ではないのだろうなと言うことに気づいていたアムルあらためヒスイは、
同じ存在であろう城の長に話を聞きにいった。
「お前は人ではない。あの蛇に殺された可哀想な赤子じゃよ。その体は最早朽ちかけの体。魂がこびりつき、力あるもののそばにいたがために変革してしまった妖怪のような者じゃ。今後どうするかは、お前が決めて良い」
そう言われて城から出る。
綺麗な女性が外にいて、ふと話しかけてみる。
「どうして町の外ではなく、城下町の外に出てはいけなかったのだろうか」と。
すると女性は
「今の君になら見えるでしょう。この街の鎖の塀を見てごらん。理由がわかるわ」
優しく微笑みながら言われ、顔を上げて城下町をグルリと囲んでいる塀を見ると、今まで見えなかった透明な何かが、この街の塀の周りを、そして空でさえも包んでいることに気づく。
そして、それがなんであるかも、すべて察しがついた。
「っ!?、、、、けっかい、、、?」
朽ちかけた体は腐るのが早い。魂が入っていれば遅くはなるだろうがしかし、それでも死んだ体は普通の人より朽ちるのが早い。心臓は動いていないのだから。
そして聞いたことがあった。おさであるなら、朽ちた体を何年も保つ術式を使えると。
そんな術式を何年も前に、編み出したのだと。
「これは、わたしの、ため?」
しかしその術式には大きな欠点があり、自身の力の根元を全て使って作り出さなければいけないほか、術式を起動してしまうと、解除されるまでその中からは一切出られなくなってしまう。
それも、術式を起動する、その式が書かれた場所からは一歩も出てはならないのだ。
そんな話を祖母から聞いた覚えがある。
と言うことは。起動していると言うことは。
そんなことを考えていると女性が口を出してきた。
「この術式が書かれているのは城の敷地内。そしてわたし達がいる、広場へと向かう道、ここまで」
と言うとこは長老は、この何年もの間、城の外に出られなかったことになる。
「どうして、そこまで」
と呟いたところで女性が全てを説明してくれた。
長老はまず、アムルの本当のおじいさんであること。
おばあさんの方は血が繋がっていないこと。
長老の妻含めアムルの両親は魔物の強襲で亡くし、アムルもそこで死んだはずだったが、なんの影響か、魂だけは生きていた。
しかしこのままでは本当に死んでしまうと焦った長老は、急ぎで術式を開発。
発動条件が厳しいことに気づき、苦悩。
しているところに婆やが登場。わたしが面倒見てあげると豪語する。
力を持った者が近くにいることは危険でしかないと長老は言うが、婆やは大丈夫という。
術式起動に必要な力の根元が足りなかったところ。婆やがほぼ全ての力を使って手を貸すという。それは力を失うことと同等であるというのに。
もめにもめた結果、長には女性は慣れないという風習と、この子の正体がバレるのは良くないということで、婆やが押し勝ち、世話を見ることに。
術式を起動し、婆やとともに城下町の隅へも移り住み、長老派長いことこの街を守ってきた。
という経緯。
守られてきたことの感謝とともに、強くなりたいと願う心が芽生え、妖怪になったヒスイは同じ妖怪である長に強くなりたいと宣言。弟子になる。
黒人の白スーツ男にも手ほどきを受け、強くなる。
そして。強くなったヒスイは師匠の出立に立ち会う。
アウロという島に行くらしい。、とても強い魔物がわんさかいる、いったら帰ってこられない島だ。
長によく似た白いひげを生やしたおじいちゃんが向かうらしい。
とてもお世話になった人で、正直いって欲しくなかった。
走り寄っていくと、大きな荷物を軽々背負った二人が笑いかけてくる。
立ち止まってかける言葉に困っていると、二人はその横を通り過ぎ。
その横で立ち止まって、ヒスイの手を痛いくらいに握って一言。
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