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本当に、馬鹿なことをしていたな。
と考えていたところで、周りを囲まれていることに気づきハッとする。
なんだ!?なんなんだ!?
戦闘中に気を緩めるなど、私としたことがと驚愕を押し殺しながら腕を構え、力を発動、と思ったが、背後に気配を察知して勢いよく後ろを振り返る。すると、全員が列になって立っていた。
思わず後ずさると、その手元には自分の力の大元であり、力を拡散させるための核が握られている。
みんなはそれを持って構えていた。まるで綱引きを始めようとしているかのような光景に、思わず焦る。
こいつら!私の力を引き抜こうとしてるのか!
そこから伸びる一本の帯は、私の魂に繋がっている。その魂とそこにつながる帯を介して、この力を行使しているのだ。そこから力を抜こうものなら
――私の魂ですら失ってしまう。
「待てっ!やめろ!」
叫んだのも束の間、「せーの!」という声と共に全員が足を踏ん張り始め、腕に力を入れる。
ともかく振り払わなければと力を溜めたが、それよりも早く、それはスッと私の首から抜けた。
魂が抜けていく感覚に体がついていかず、視界が歪んだのと同時に彼らに巻きついていた布が光の粒子になって四散。
体の力が、一気に抜ける。
「は、、、あ、、」
膝から崩れ落ち、地面に倒れる直前で、誰かに抱き留められた。
「な、にして、、るんだ、、」
それは先ほどまで痛めつけていたかつての仲間。
もはや仲間ではなくなったと思っていた奴らだった。
「、、、はな、せ。も、う、、いいんだ」
意識もはっきりしない。目の前がもう真っ暗だ。
息もしづらい。声を出すのがやっとだ。
なんとか声を出して相手に伝えようとしてみたが、返答はない。
しかし、もうそれもどうでもいい。
私はもう直ぐ
―「――」なのだから
「私は、、、ただ、、」
でも、なぜだろう。感覚を失ったはずの体が、いやに痛い。
「ただ、、、取り、戻した、、かったんだ」
体の中心。その奥底が痛みを訴えている。
「けど、、かなわなか、、た」
ぁぁそうか。心が痛いのか。
「しあわせが、、ほしかっ、、た」
なにも、何もかもがこの手をすり抜けて消えた。
それならもう、こんな街も必要ないと、本気で思ったんだ。
仲間も、夢も、希望も、未来も。
私しか知らないあの日の出来事を、きっといつまでも忘れない。
だからこそ、この街を消してしまえばと。
「あぁ、ちが、うのか。本当は、、、」
そこで、不意に強く抱きしめられた。
強く、強く。感覚のないこの体が、痛くなるほどに。
「もういい。もう。ごめん。ごめんなっ。俺たちは、お前にいろんなものを背負わせすぎたんだっ。だから、こんな、、、っ」
その体は震え、声はこっちがびっくりするくらい濡れていた。
まるで子供のように、誰かにとられてたまるかというように。その手は私を抱き締めて離しそうにない。
もう少し、早く気づいていれば良かった。
そうすれば、何か変わっていたかもしれない。
最後の力を振り絞り、布を出す。白く、月明かりに照らされて輝くそれを、私を抱き締めているこいつの体に巻き付けた。優しく。優しく。
違うよ。大丈夫だよ。最初は、自分で望んであの日に旅立ったんだ。
そう。自分が望んだんだ。その結果が良くないものであれ、自分で選んだ道なのだ。
だから本来、仲間に罪はない。
布の端で、私は彼の背中をポンポンと優しく叩く。
「だいじょうぶ、、、私が、のぞんだ、、ことだった。なにも、、悪く、、、な、、」
ぁぁ。もう声が出ないや。
体の力も抜けていく。その前に。その前に行っておかなきゃ。これだけは。
「お前っ!しっかりしろ!待てよ!待ってくれ!俺たちはこんな!」
男の声が、泣きじゃくるようにそういう。
それに対して、最後の力を振り絞って、口を動かした。
「ありが、、とう。お、まえらの、、おかげで、、しあわせ、だ、、、た、、、。ごめ、、、な、、」
そこまで行って、ついに限界が来る。
身体中に力が入らない。急激な睡魔のようなものに襲われて、まぶたを開けていられない。
眠い。少し眠ったら、元気になるだろうか。
起きたら、もう一度ちゃんと謝ろう。
誤って許されることではないことは承知だが、きちんと、そうちゃんと。
だから、今は。
静寂が体の中に染み渡り、意識は闇の中へと落ちていった。
と考えていたところで、周りを囲まれていることに気づきハッとする。
なんだ!?なんなんだ!?
戦闘中に気を緩めるなど、私としたことがと驚愕を押し殺しながら腕を構え、力を発動、と思ったが、背後に気配を察知して勢いよく後ろを振り返る。すると、全員が列になって立っていた。
思わず後ずさると、その手元には自分の力の大元であり、力を拡散させるための核が握られている。
みんなはそれを持って構えていた。まるで綱引きを始めようとしているかのような光景に、思わず焦る。
こいつら!私の力を引き抜こうとしてるのか!
そこから伸びる一本の帯は、私の魂に繋がっている。その魂とそこにつながる帯を介して、この力を行使しているのだ。そこから力を抜こうものなら
――私の魂ですら失ってしまう。
「待てっ!やめろ!」
叫んだのも束の間、「せーの!」という声と共に全員が足を踏ん張り始め、腕に力を入れる。
ともかく振り払わなければと力を溜めたが、それよりも早く、それはスッと私の首から抜けた。
魂が抜けていく感覚に体がついていかず、視界が歪んだのと同時に彼らに巻きついていた布が光の粒子になって四散。
体の力が、一気に抜ける。
「は、、、あ、、」
膝から崩れ落ち、地面に倒れる直前で、誰かに抱き留められた。
「な、にして、、るんだ、、」
それは先ほどまで痛めつけていたかつての仲間。
もはや仲間ではなくなったと思っていた奴らだった。
「、、、はな、せ。も、う、、いいんだ」
意識もはっきりしない。目の前がもう真っ暗だ。
息もしづらい。声を出すのがやっとだ。
なんとか声を出して相手に伝えようとしてみたが、返答はない。
しかし、もうそれもどうでもいい。
私はもう直ぐ
―「――」なのだから
「私は、、、ただ、、」
でも、なぜだろう。感覚を失ったはずの体が、いやに痛い。
「ただ、、、取り、戻した、、かったんだ」
体の中心。その奥底が痛みを訴えている。
「けど、、かなわなか、、た」
ぁぁそうか。心が痛いのか。
「しあわせが、、ほしかっ、、た」
なにも、何もかもがこの手をすり抜けて消えた。
それならもう、こんな街も必要ないと、本気で思ったんだ。
仲間も、夢も、希望も、未来も。
私しか知らないあの日の出来事を、きっといつまでも忘れない。
だからこそ、この街を消してしまえばと。
「あぁ、ちが、うのか。本当は、、、」
そこで、不意に強く抱きしめられた。
強く、強く。感覚のないこの体が、痛くなるほどに。
「もういい。もう。ごめん。ごめんなっ。俺たちは、お前にいろんなものを背負わせすぎたんだっ。だから、こんな、、、っ」
その体は震え、声はこっちがびっくりするくらい濡れていた。
まるで子供のように、誰かにとられてたまるかというように。その手は私を抱き締めて離しそうにない。
もう少し、早く気づいていれば良かった。
そうすれば、何か変わっていたかもしれない。
最後の力を振り絞り、布を出す。白く、月明かりに照らされて輝くそれを、私を抱き締めているこいつの体に巻き付けた。優しく。優しく。
違うよ。大丈夫だよ。最初は、自分で望んであの日に旅立ったんだ。
そう。自分が望んだんだ。その結果が良くないものであれ、自分で選んだ道なのだ。
だから本来、仲間に罪はない。
布の端で、私は彼の背中をポンポンと優しく叩く。
「だいじょうぶ、、、私が、のぞんだ、、ことだった。なにも、、悪く、、、な、、」
ぁぁ。もう声が出ないや。
体の力も抜けていく。その前に。その前に行っておかなきゃ。これだけは。
「お前っ!しっかりしろ!待てよ!待ってくれ!俺たちはこんな!」
男の声が、泣きじゃくるようにそういう。
それに対して、最後の力を振り絞って、口を動かした。
「ありが、、とう。お、まえらの、、おかげで、、しあわせ、だ、、、た、、、。ごめ、、、な、、」
そこまで行って、ついに限界が来る。
身体中に力が入らない。急激な睡魔のようなものに襲われて、まぶたを開けていられない。
眠い。少し眠ったら、元気になるだろうか。
起きたら、もう一度ちゃんと謝ろう。
誤って許されることではないことは承知だが、きちんと、そうちゃんと。
だから、今は。
静寂が体の中に染み渡り、意識は闇の中へと落ちていった。
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