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番外編シリーズ
番外編 セレスティン=ジルバーナ
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「セレスティン=ジルバーナ」
突然、私を呼び止める声が聞こえる。
聞き覚えのある声に立ち止まり振り向くとそこにはやはり私に魔法使いとして育ててくれた恩師が立っていた。
痩せ干そった老婆で年は70だが、かつては〈英雄の右手〉の異名を欲しいがままにした天才だった。
「お前さんがここに来て半年だが、お前さんはとても優秀だよ。今まで色んな弟子をとってきたがあんたほどの伸びの良さを見るのは随分と久しぶりだ。ひょっとしたらあたし以上に凄腕の魔法使いになれるかもねぇ」
「はい、ありがとうございます。<魂の母(ソウルマザー)>」
「ヒッヒ。年老いた婆さんに「母」だなんて似合わんよ。それにこんなことを伝えるためにあんたを呼び止めたんじゃないからねぇ。」
<英雄の右手>。その大魔法使いは先程までの温厚な表情は少し真剣になって続ける。
「あんたに異名を授けることにするよ。多彩な魔法を巧みに使いこなすお前さんにピッタリの名前だ。<彩色の魔女>。これがお前さんの2つ名だ。」
2つ名。それを受けとることが出来る人物というのはこの世界で両手の指に収まるほどの数。熟練した者でも2つ名を受けとるには遠く及ばない。
だが、今2つ名を受け取ったのはーー<英雄の右手>とも言われた人物からはじめて、2つ名を受け取ったのはーーまだ小さな少女だった。
ーーーこうして、セレスティン=ジルバーナの名は広く知れわたることになったのだーー。
今から5年ほど前ーー。
「うわぁああぁああああああああん!!」
活気に満ち溢れたこの街に凄まじい泣き声が響きわたる。
だが、街の人達は別に驚かない。もうこれが日常茶飯事だったからだ。
「どうした!セレスティン!!」
ドアが壊れるんじゃないかという勢いで、音の発生源へ、ルビン……ルビン=セラフィスは突入する。そこには…
「おねぇちゃぁぁあああん!虫が出たぁあああああ!」
泣きじゃくる私…セレスティン=ジルバーナの姿があったのだった。
~~~
「ヒック…ヒック」
「ほうら。もう怖くないぞぉ。悪い虫さんは私が追っ払ったからなぁ~」
まだ、泣き止むことの出来ない私をルビンお姉ちゃんが抱っこしてくれる。
私は小さい頃 、とにかくすぐに泣く…いわば泣き虫だった。
一日に一回は必ず泣き、ルビンお姉ちゃんにこうして慰めてもらう。
私はルビンお姉ちゃんの胸に埋もれながらこんな事を考える。
(いい加減、自分でなんとかできるようにしないと。)
私は自分の泣き虫が嫌だった。だが、どうすることもできず、日々が流れていった。
ーーそんな日常が続いていたある日のこと。
私は偶然通りかかったお婆さんにギルドまで道を訪ねられた。
だが、私は泣き虫であると同時に極度の人見知りでもあったので、すぐに泣き出した。
お婆さんは困った様子で私に話しかける。
「すまなかったねぇお嬢ちゃん。驚かすつもりは無かったんだよ?ほらこれで涙を拭きな。」
お婆さんは私にハンカチを渡そうと手を伸ばしてくる。
人の好意は無駄にしたくなかった私はそのハンカチを受け取ろうとしたーーその時だった。
バチンッッッッ!!!
お婆さんの手に私の手が触れた瞬間。静電気が発生したたかのようなーーだが、それにしてはかなり大きいーー音が響く。
「「!?」」
あまりにも突然のことで、お婆さんも驚く。
「ヒック…う、うぇええええええええええんん!!!」
数秒後。私はやはり、泣き出した。
お婆さんはこちらを見て驚いたこと顔をしたままだ。
「どうした!セレスティン!!」
いつものようにどこからともなくルビンお姉ちゃんが現れる。
お姉ちゃんは私とお婆さんを交互にみ見る。ーー恐らく構図的には老婆に泣かされている少女といった所だろうーー
「お前かぁ…!セレスティンを泣かせたのはぁ…!!覚悟しろ!!」
そう言うと、ルビンお姉ちゃんはお婆さんへ向かって駆け出す。
そしてお婆さんの手前で蹴りのモーションに入る。
ルビンお姉ちゃんはわかると思うけど女の子だ。しかし成人男性なら余裕で勝てるくらい強かった。お婆さんなど、命の保障はできない(加減はしてたと思うけど…。)
だが、結果から言うとルビンお姉ちゃんの蹴りは当たらなかった。
ルビンお姉ちゃんの蹴りは「魔法障壁」によって防がれていた。
「な、魔法使い!?」
お婆さんは焦る様子もなく魔法による障壁を展開していたのだ。
「この娘のお姉ちゃんかい?この娘すまないねぇ。だけど、あたしゃ何もしてないさね。」
ルビンお姉ちゃんと私は驚いて完全に固まっている。(私は思わず泣き止んでいた。)お婆さんは続ける。
「あぁ、そうだ。この街のギルドまで案内してもらえないかね?あたしゃもう歳がきてて場所を忘れちまったんだよ」
驚いている私たちをよそにお婆さんは再度、ギルドまでの道を訪ねる。
「あ…あぁ…わかったよ………。」
ルビンお姉ちゃんはようやく動けるようになり「こっちがギルドだ…」と半ば茫然としながら、(私の手を引くことは忘れず)お婆さんを案内していった。
ーーこのお婆さんが私の恩師、<英雄の右手>だったことを知るのはまだもう少しだけ先のことである。ーーー
突然、私を呼び止める声が聞こえる。
聞き覚えのある声に立ち止まり振り向くとそこにはやはり私に魔法使いとして育ててくれた恩師が立っていた。
痩せ干そった老婆で年は70だが、かつては〈英雄の右手〉の異名を欲しいがままにした天才だった。
「お前さんがここに来て半年だが、お前さんはとても優秀だよ。今まで色んな弟子をとってきたがあんたほどの伸びの良さを見るのは随分と久しぶりだ。ひょっとしたらあたし以上に凄腕の魔法使いになれるかもねぇ」
「はい、ありがとうございます。<魂の母(ソウルマザー)>」
「ヒッヒ。年老いた婆さんに「母」だなんて似合わんよ。それにこんなことを伝えるためにあんたを呼び止めたんじゃないからねぇ。」
<英雄の右手>。その大魔法使いは先程までの温厚な表情は少し真剣になって続ける。
「あんたに異名を授けることにするよ。多彩な魔法を巧みに使いこなすお前さんにピッタリの名前だ。<彩色の魔女>。これがお前さんの2つ名だ。」
2つ名。それを受けとることが出来る人物というのはこの世界で両手の指に収まるほどの数。熟練した者でも2つ名を受けとるには遠く及ばない。
だが、今2つ名を受け取ったのはーー<英雄の右手>とも言われた人物からはじめて、2つ名を受け取ったのはーーまだ小さな少女だった。
ーーーこうして、セレスティン=ジルバーナの名は広く知れわたることになったのだーー。
今から5年ほど前ーー。
「うわぁああぁああああああああん!!」
活気に満ち溢れたこの街に凄まじい泣き声が響きわたる。
だが、街の人達は別に驚かない。もうこれが日常茶飯事だったからだ。
「どうした!セレスティン!!」
ドアが壊れるんじゃないかという勢いで、音の発生源へ、ルビン……ルビン=セラフィスは突入する。そこには…
「おねぇちゃぁぁあああん!虫が出たぁあああああ!」
泣きじゃくる私…セレスティン=ジルバーナの姿があったのだった。
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「ヒック…ヒック」
「ほうら。もう怖くないぞぉ。悪い虫さんは私が追っ払ったからなぁ~」
まだ、泣き止むことの出来ない私をルビンお姉ちゃんが抱っこしてくれる。
私は小さい頃 、とにかくすぐに泣く…いわば泣き虫だった。
一日に一回は必ず泣き、ルビンお姉ちゃんにこうして慰めてもらう。
私はルビンお姉ちゃんの胸に埋もれながらこんな事を考える。
(いい加減、自分でなんとかできるようにしないと。)
私は自分の泣き虫が嫌だった。だが、どうすることもできず、日々が流れていった。
ーーそんな日常が続いていたある日のこと。
私は偶然通りかかったお婆さんにギルドまで道を訪ねられた。
だが、私は泣き虫であると同時に極度の人見知りでもあったので、すぐに泣き出した。
お婆さんは困った様子で私に話しかける。
「すまなかったねぇお嬢ちゃん。驚かすつもりは無かったんだよ?ほらこれで涙を拭きな。」
お婆さんは私にハンカチを渡そうと手を伸ばしてくる。
人の好意は無駄にしたくなかった私はそのハンカチを受け取ろうとしたーーその時だった。
バチンッッッッ!!!
お婆さんの手に私の手が触れた瞬間。静電気が発生したたかのようなーーだが、それにしてはかなり大きいーー音が響く。
「「!?」」
あまりにも突然のことで、お婆さんも驚く。
「ヒック…う、うぇええええええええええんん!!!」
数秒後。私はやはり、泣き出した。
お婆さんはこちらを見て驚いたこと顔をしたままだ。
「どうした!セレスティン!!」
いつものようにどこからともなくルビンお姉ちゃんが現れる。
お姉ちゃんは私とお婆さんを交互にみ見る。ーー恐らく構図的には老婆に泣かされている少女といった所だろうーー
「お前かぁ…!セレスティンを泣かせたのはぁ…!!覚悟しろ!!」
そう言うと、ルビンお姉ちゃんはお婆さんへ向かって駆け出す。
そしてお婆さんの手前で蹴りのモーションに入る。
ルビンお姉ちゃんはわかると思うけど女の子だ。しかし成人男性なら余裕で勝てるくらい強かった。お婆さんなど、命の保障はできない(加減はしてたと思うけど…。)
だが、結果から言うとルビンお姉ちゃんの蹴りは当たらなかった。
ルビンお姉ちゃんの蹴りは「魔法障壁」によって防がれていた。
「な、魔法使い!?」
お婆さんは焦る様子もなく魔法による障壁を展開していたのだ。
「この娘のお姉ちゃんかい?この娘すまないねぇ。だけど、あたしゃ何もしてないさね。」
ルビンお姉ちゃんと私は驚いて完全に固まっている。(私は思わず泣き止んでいた。)お婆さんは続ける。
「あぁ、そうだ。この街のギルドまで案内してもらえないかね?あたしゃもう歳がきてて場所を忘れちまったんだよ」
驚いている私たちをよそにお婆さんは再度、ギルドまでの道を訪ねる。
「あ…あぁ…わかったよ………。」
ルビンお姉ちゃんはようやく動けるようになり「こっちがギルドだ…」と半ば茫然としながら、(私の手を引くことは忘れず)お婆さんを案内していった。
ーーこのお婆さんが私の恩師、<英雄の右手>だったことを知るのはまだもう少しだけ先のことである。ーーー
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