どうも異世界で超能力者になりました

AYAMI

文字の大きさ
22 / 28
番外編シリーズ

番外編 セレスティン=ジルバーナ「5」

しおりを挟む
「………」

私は、自分の家から空を見上げていた。

「あの事件」からすでに3日程経過している。

お婆さん、もとい<英雄の右手>は私を弟子に誘った後、

「あたしゃあ、まだこの街に10日程滞在するんでね。それまでに決めておくれ。」

そう言うと、その場から立ち去っていた。
(去り際に旅商人のおじさんに「賞金は無くていいよ」と言って。おじさんは茫然としたままであったが。)

あの後、すぐに大騒ぎになりギルドへ行って私のステータスを確認された。

その結果は「身体能力は普通だが、魔法才能は未知数」というものだった。

結果を教えてくれたギルドのお姉さんはおどろきのあまり手が震えていたのを覚えている。

それもそのはずだろう。<英雄の右手>と言われたあのお婆さんでさえ数値はどれぅらいのものなのかハッキリしているのだ。

未知数。それは簡単に言えば「<英雄の右手>ですら及ばない力を持っている可能性がある」という事でもあるのだ。

あの日、ハンカチで涙を拭いてから不思議な気分になった。あれから一度も泣くこともない。

ルビンお姉ちゃんは

「すごいぞ!セレスティン!!お姉ちゃんは感動したぞ!でもちょっと残念な気もするなぁ。」

と、感慨深そうに言っていた。

しかし、困ったこともできてしまった。

「セレスティン様は神の生まれ変わりなのだ!全ての民は皆!!セレスティン様を崇拝せねばならない!!」

…こんな感じで私を「神」だとか言って崇める人が出てくるようになったのだ。

この3日間で私に接する街の人の態度は明らかに変わっていた。

一歩、外に出れば人だかり。かといって家にいても家の前で宗教活動のようなことをされる。

当時6歳くらいだった私は精神的に参っていた。

お婆さんの弟子になるべきなのか。
神として讃えられるのか。
今のように家に引きこもるのか。

全く見当もつかない。

私はただ普通にいたかった。平穏を望んでいた。いつもの日常をすごしたかった。

しかし、それは最早、叶わないことだ。私は決断しなければならない。

そして、7日目。お婆さんに会いに行くと私はこう言った。

「お婆さん、私は貴女の弟子になります。けれど、まだここで過ごさせていただけませんか?」

次にいつ帰ることができるのかはわからない。そうなれば両親やルビンお姉ちゃんにいつ会えるのかもわからない。

だから、まだ少しだけこの街で過ごしていたかった。

「そうだろうねぇ。じゃあ、来れるようになったらこの街のギルドマスターに伝えておいておくれ。迎えにいくさねぇ。」

お婆さんは笑顔でそう言ってくれたのだった。



お婆さんがこの街から帰っていった後、私は魔法について学び始めた。

家から普通に出るとまた騒ぎになってしまうのでルビンお姉ちゃんに頼んで、こっそり外へ連れてってもらい、簡単な魔法を覚えさせてもらったり、魔導書などを読んだりした。

それから4年と少したった頃、お婆さんの元へ行くことにしたのだ。

知っているのは両親とルビンお姉ちゃん、ギルドマスターだけだった。街の人に知れたら大騒ぎになるから、暫くは私が居なくなったことを伏せておくそうだ。




こうして、<英雄の右手>に弟子入りした私は約1年ほどでまたこの街に戻ってくることになる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

異世界でも保育士やってます~転生先に希望条件が反映されてないんですが!?~

こじまき
ファンタジー
【読んでいただいて♡いただいて、ありがとうございます。王城編準備中のため、12月12日からしばらく更新お休みします。考えてた構成が「やっぱなんか違う」ってなり、慌てております…汗】 「こんな転生先だなんて聞いてないっ!」六年間付き合った彼氏に婚約を解消され、傷心のまま交通事故で亡くなった保育士・サチ。異世界転生するにあたり創造神に「能力はチートで、広い家で優しい旦那様と子だくさんの家庭を築きたい」とリクエストする。「任せといて!」と言われたから安心して異世界で目を覚ましたものの、そこはド田舎の山小屋。周囲は過疎高齢化していて結婚適齢期の男性なんていもしないし、チートな魔法も使えそうにない。創造神を恨みつつマニュアル通り街に出ると、そこで「魔力持ち」として忌み嫌われる子どもたちとの出会いが。「子どもには安心して楽しく過ごせる場所が必要」が信条のサチは、彼らを小屋に連れ帰ることを決め、異世界で保育士兼りんご農家生活を始める。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...