どうも異世界で超能力者になりました

AYAMI

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番外編シリーズ

番外編 セレスティン=ジルバーナ「10」

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「あぁ、そうかい…。どんな魔法使ったが知らねぇけど残念だったなぁ。俺はさっきも言ったが高い魔法耐性を持ってんだ。それに俺が作り出した人形に俺のステータスをコピーすることも出来る…。つまり!」

言い終わると同時に5人のボルスが形成された。本体も含めれば6人のボルスがいることになる。

だが、6人のボルスという絶望的な状況より気になる疑問があった。

先程、「魔法」とボルスは言った。…が、私はあんな魔法を見たことがない。

魔方陣や呪文なしに物体を操作するなど、不可能なはずなのだ。

(一体、どうやって…)

体の方は少し動かせるようにはなってきた。しかしまだ立ち上がることはできない。

もっと近づいてあの現象を見たいが、それは出来なさそうだ。

ボルスは自身満々に叫ぶ。確かにこの状況は誰がどう見てもボルスの勝ちにしか思えない。

しかし、<あの人>は動じない。むしろ、ボルス以上の勝利を確信しているように見える。

「あぁ、そうだな…。お前くらいの魔法才能と身体能力を持ったやつが五人もいたら流石に魔法を使えるようにになっただけで勝つなんてまず無理だな。」

「おぉ?わかってんじゃねぇか。ならとっとと諦めて死ーー

「けどよ」

「あ゛?」


「これがいつ「魔法だ」なんて言った?」


ーー直後、<何か>が偽ボルスを静かに切り裂いた。

「な、マナダスト鉱石!?」

ボルスには<何か>が見えていたようだ。驚きのあまり愕然としている。

(マナダスト鉱石 ……?一体どういうこと……?)

ボルスの言葉に疑問を持ったが、改めてその<何か>を見て理解する。

それは<あの人>を初めて見たとき、スライムに使っていたあの剣だった。

マナダスト鉱石で出来ているのだから、魔法で出来た偽ボルスを容易に切り裂いたのも頷ける…だが、

(宙に…浮いている……!?)

その剣は誰かが持っている訳ではなく、意志を持っているかのように<剣自身>が偽ボルスを切り裂いたのだ。

あっという間に偽ボルスは霧散していく。


そして、残すは本体だけになったとき、<あの人>とボルスが何かを話す。

その内容は聞き取ることは出来ない。
だが、<あの人>が何かを言った時、ボルスの表情があの剣よりも青く染まる。

「ち、チクショオォォオオオオォオオオ!!」

最早、先程のまでの自身満々なボルスの姿はなく、やけくそ気味に突進を始める。

だが、その突進が当たることはなかった。

「なっ…こ、今度は何だよッッ!」

ボルスは<あの人>の手前で突進の姿勢のまま固まっていた。

まるで、何かに止められているかのように……

「……?………。」

あの人が何を言っているのかがわからなくなってきた。

(意…識が……)

まずい、ここになって意識が途切れてきた。

「………。」

「…………!!」

最早、何も聞き取れない。

……気を失う直前、誰かの声が聞こえた。

「もう大丈夫だ。お疲れ様。」

かろうじて目を開けると、その声の主は私をおんぶする。

その背中はとても心地良かった。ルビンお姉ちゃんとはまた違う心地良さに包まれたまま私は気を失う。

………そして、その声の主は紛れもなくーー<あの人>だった。

~~~~

「…………?」

気がつくと私は病院のベッドの上にいた。

「お、セレスティン。気がついたか?」

「ルビンお姉ちゃん…?」

その姿を確認しようと体を起こす。

ーーその瞬間、ルビンお姉ちゃんに抱きつかれる。

「いやぁ、本当無事で良かったぁ!ごめんな。すぐに駆けつけられなくて!本当に良かった!!」

お姉ちゃんは目に涙を浮かべ喜んでいる。心配してくれたことは嬉しいし、申し訳ない…が、今私はそれどころではない。

「お姉ちゃん……。苦しい……。」

やっとのことでお姉ちゃんに告げる。お姉ちゃんが私に抱きついた結果。私はお姉ちゃんの胸に埋もれ呼吸ができなくなっていた。

「お、ごめんごめん。」

そう言いながらやっとお姉ちゃんは私を開放してくれた。

……それにしても、相変わらずのスタイルの良さである。

「ん、どうした?」

「…何でもない……。」

お姉ちゃんは疑問そうな顔をするが、すぐに元に戻る。

元々、細かいことは気にしない性格なのだ。

そして、私はあることに気がつく。

「そう言えば、あの人は…?」

「ん?あの人?」

「えっと、ボルスと戦っていた…」

「あぁ、コウスケのことだな。あいつなら今、治療中だぜ」

やはり、あの人は以前ルビンお姉ちゃんが話していた人物と同一人物だったのだ。

「治療中…?どこか大きな怪我をしたの?」

「あばら骨を何本か折ってたみたいだな。まぁ、すぐに治るくらいらしいぞ?」

「そう…よかった。」

私はほっと溜め息をつく。

その姿を見たお姉ちゃんが一言。

「セレスティン…もしかしてコウスケに惚れたか?」

ニヤニヤとしながら尋ねるルビンお姉ちゃん。

冷静に「違うわ」と返そうとした私だったが

「そ、そんなk、事ないわ…!」

必死に大慌てで否定してしまう。しかも盛大に噛んでしまった。

「ん、そうなのか?……おっと、そう言えばギルドマスターに呼ばれてるんだった。それじゃ、セレスティン、またな!」

そう言って、ルビンお姉ちゃんは病室から出ていく。

(相変わらず忙しい人だなぁ。)

そんな事を思いながら見送るが暫くして先程の事が思い出される。

(私が<あの人>…コウスケさんに惚れた……?そんなことは…)

心の中でコウスケに惚れていないと否定しようとするが、否定すればするほど余計に意識してしまう。

そして、否定するのではなく「コウスケさんに惚れている」と受け入れて考えると、今までにない幸福感を感じる。

そんな自問自答を何度も繰り返し、やっと気がついた。




私はコウスケさんに完全に惚れてしまっていたのだと。
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