13 / 27
第一章 異世界からきた姫様
第四幕 おいおい、お願いだ! そんなかっこで掃除しないでくれよぅ!?
しおりを挟む翌朝、机の前で、寝ていたゆーまは、目覚めて、目覚まし時計を、引っつかんで薄っすらと、瞬きし、ボーっとしながら、時計の針を見た。
「ん、もう、こんな時間か!」
時計の時間をみて、ゆーまは眼をこする。そして、ピットが、寝ていた方を見遣る。
「トントン? 何だ? あ、あれピットがいない」
ゆーまは、ピットがいないことに気がついた。下の階から、何やら包丁でまな板を叩く、音が聞こえる。
それを微動だにし、階段のほうに、ゆーまは歩いて行く。
一階に降りてみると、ユニが、キッチンにいた。箒(ほうき)を持っている。ラクリ、ピットもいる。
「あ、あれ、ユニ、何してるの?」
ゆーまはためらい、眠たそうな顔から、ハッと、我に返る。
「キッチンの掃除だよ~」
顔の汗を手でぬぐい、明るく、可愛い笑顔で返し、ユニは一生懸命に箒で床を掃く。
「て、掃除はいいけど、何、その格好? どこからそんな服、持って来たの?」
掃除をしているメイド服姿のユニの格好を見て、ゆーまは驚く。
「違うよ、前の服と同じだよ。チェンジ!」
PON!
ユニがそういうと同時に、元の出逢ったときの格好に戻った。
「あ、あれ、昨日の服に戻った!」
口をポカンとあけ、ゆーまは度々のことに驚きを隠せない。
「これは、魔法服っていって、自分の意志で念じると、何でも見たものとか、好きな服に変われるの。チェンジ!」
PON!
ユニが、またメイド服の格好に戻った。
「で、そのメイドの格好はどこから?」
遠くを見遣るように、ジト目でユニを見遣り、内心は嬉しいのか少しドキドキと、ゆーまは顔を赤らめる。
「本棚に入ってたの。あの雑誌で見て、ゆーま、こんなのが好きなのかなって思って。かわいいでしょ」
箒の先っちょで本棚のほうを、ユニは指差す。
「(って、メイド日記からかよ)確かに、好きだけどさ、あのね、普通の格好してて」
ドキドキし、ユニの動作に萌えているかのようだ。今にも、興奮して、ゆーまは鼻血が出そうになってる。
「はい、旦那様! むぎゅ♡」
ユニは、可愛く胸元を両手で手繰り寄せるようなポーズをする。確かに、メッチャ可愛い。ゆーまは、ドキドキして、顔を赤らめていた。
「姫様、おやめ下さい。はしたないです!」
ラクリが、即座に少し怒った顔で言う。
「いいじゃない、ラクリ、お父様もいないんだし」
ユニが指を振りながら、ムスッとした面持ちで、眉をくすめながら言い返す!
「その言葉遣い(メイド日記見たわけね)だ、だんな様って……」
いまだに、ゆーまは顔を赤らめながらドキドキしている。
「う~ん、じゃ、どんな格好がいいかな?」
しばし、口元に指を添え、むー、とユニは考え込んでいた。だが、すぐ様、きらりと閃(ひらめ)いた。
「チェンジ!」
ユニの魔法服が、光を上げて、何かに変わる時だった!
ピンポーン
玄関のほうから、ベルの音が聞こえてきた。誰か来たのか?
皆、その場で、とんきょうな顔をする。
「や、ヤベェ、あいちゃんだ! で、なんでしかも普通の格好が水着なんだよ!」
何と、ベルの音と同時に、ユニはセクシーな水着に魔法服を替えていた! それをゆーまは一瞥し、慌てる。慌て、大きな声でいい、手足をジタバタする。
「先輩、迎えに来ましたですぅ!」
あいちゃんの可愛い声が、玄関のほうから流れる。今にもドアを開けそうな雰囲気だ。
「ハぇ、ちょ、ちょっと待ってて!」
ゆーまは、玄関口で必死に弁解を試みる。が、聞きそうに無い。
「早く着替えろ、ユニ!」
後ろを向き、水着姿のユニを、ゆーまは慌てて説きふかそうとするが。
「せんぱーい、開けますよ!」
あいちゃんが、ドアをその瞬間、開けた! 目の前にある光景が、自身に入ってく!
「ん、何がいいかな?」
ユニが、必死にチェンジする服を考えていた。
「とりあえずだ、前の魔法服!」
もう、手遅れだった。
「み、水着? な、何してるんですか? せんぱい?」
まともに、ユニのビキニフリフリ付きの、セクシーな水着姿をあいちゃんは見た。しかし、ユニの姿を必死にゆーまは、体で隠した。
「あはは、何でもねーよ、(この水着はユニのやつ、水着日記みたな)」
目をパチクリし、怪訝な面持ちでゆーまは、隠そうとした。その時だった!
「む、胸が当たってる! ュ、ユニぃ!」
ユニが、ゆーまの後ろから、大きな胸を思いっきり、ゆーまの体にムニュっと擦り付けてきた! ゆーまは、顔を赤らめ、行動がおかしくなってきた。
「チェンジ」
ピカァ!
ユニが言うと同時に、水着がメイド服に変わった。
「旦那様! 御飯ができています」
ユニは、ペコリと丁寧にあいちゃんにもお辞儀する。
「(確か、さっき水着だったような)あら、可愛いメイド服の女の子ですね!」
「はぃ? だぁぁぁぁぁっぁ、何で、メイド服に戻るんだよ!」
前を向いていた状態から、隠していたが、ばれてしまい、後ろを振り向き、大声をゆーまは張り上げ、ゲそっと顔色を変える。
「その女の子は、誰ですか?」
「あ、いや、あの、従兄弟(いとこ)の女の子だよ!」
「違います。魔法の国から来た、ゆーまの許婚(いいなずけ)です!」
ユニが、急いで訂正するように反論した。女の勘があるのか?
「い、許婚(いいなずけ)? ま、魔法の国?」
あいちゃんが、チンプンカンプンな面持ちを見せる。
「ち、ちがうんだよ。その、あの、もう、ほんとに、何、言うんだよ、ユニ!」
ジタバタ、手足を動かし、困った面持ちで、ゆーまは慌てる。ユニが不思議そうに見てる。
「ややこしくなるから、今、聞いたことなかったことにして、あいちゃん」
「じゃ、聞かなかったことにしますね」
あいちゃんが、ゆーまの言ったことに対し、淡々とニッコリ笑いながら言う。
結構、図太いのかもしれない。
「ま、まだ時間があるから、とにかく、玄関もなんだし、上がってよ、あいちゃん」
ゆーまは、あいちゃんに、手招きをし、廊下を数歩歩いて行く! ラクリとユニも後を付いていく。
「え、はい。じゃぁ、お邪魔しまーす」
嬉しそうに、おーといった感じで、右手をあいちゃんは思いっきり上のほうに挙げる。
ユニの後をついていく。
「御飯、できてるよ。ゆーま、一緒に食べようよ」
ユニが、いつの間にか、キッチンの真ん中に立ち、ゆーまに可愛い笑顔で言った。
「お、おん。いいぞな。とりあえず、皆で、飯にするか」
そういい、ゆーまは、台所の椅子に座る。話しをしている間、どこにいたか判らなかったピットがいて、何か、言いたそうな顔だ。
☆☆
第五幕につづく。UP予定。感想おまちしてます。
0
あなたにおすすめの小説
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる