召喚魔法姫ユニ☆らぶ

蒼井一

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第一章 異世界からきた姫様

第八幕 学校はタレント事務所かよぉ? かわいけりゃいいのかよぉ!!

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急いで、駆け足で校内に駆け込み、廊下の分かれ道まで皆で来たところだった。あいちゃんが急に立ち止まった。

「せんぱい、私は学年が違うので、教室はこっちですので、ここで」
「あ、いや、さっき、手、握ちゃってさ、ゴメン」
唐突なあいちゃんの台詞に、一瞬ドキッとして、ゆーまは顔を赤らめ、ギクシャクする。恥ずかしそうな顔で、いけないと思ったのか、必死に言った。
同様にあいちゃんも、そそくさと照れて躊躇(ためら)いを見せる。

「そんなことないですよ。私が倒れたの、必死に介抱してくれたし、でも、手を心配そうに握ってくれて、嬉しかったですぅ」
一瞬、ドキドキとした沈黙が走り、二人の間に、妙な感覚が浮かんでくる。ゆーまの後方で、ユニが廊下の掲示板に貼られていた、この学校出身のイラストレーターの、ゲーム作品のポスターを、指を咥(くわ)えて、不思議そうに見遣っていた。ラクリが近くにいて、何やら指差し解説していた。ポスターには何年も前に卒業したイラストレーターの名前が書かれていた。どうやら、ゆーまのお母さんの名前のようらしいのだが?

その模様に、ゆーまは全然、気付いてなかった。

「じゃ、また後で。あれ? ユニ達は? さっきまで、一緒にいたのに」
そして、あいちゃんと、ゆーまが手を振って別れた瞬間、ゆーまが教室に入ろうとすると、ふと、ユニはどうしたのかと、気になり、ゆーまは廊下の後方を振り向いた。
しかし、そこにユニたち三人の姿はなかった。一体、どこに行ったのだろうか?

「(あいつら、どこに行ったんだ? 心配だナァ)ま、いっかぁ。時間だ。ギリギリセーフだ」




☆☆  ☆☆




「ふぅ、何とか間に合ったかぁ。ホームルームまで、後三分」
教室に入り、教室の時計を見遣り、ゆーまは席に着いた。不貞腐(ふてくさ)れた顔でバタンと、顔をうつ伏せる。
その時だった。

「ゆーまぁ!」
ユニだ、ユニが手を振りながら、明るく、可愛い声でゆーまのほうに近付いてくる。ゆーまの耳が、一度、聞いたら忘れないユニの声に反応し、ピクリと耳が動く。動くと同時に、うつ伏せていた顔を上げた。眠たそうな顔をしている。

「お、ユニ、どこ行ってたの?」
「ゆーま、ユニもこの学校に一緒に通うね」
ユニが嬉しそうな顔で、ゆーまの両手を握り、ピョンピョン跳ねながら言う。近くに、見知らぬ馴れ馴れしい素振りの子が二人いた。

「って、おい! 入学してネーだろ? 手続きは?」
ゆーまが、両手を握られて恥ずかしいのか、少々顔を赤らめながら、照れくさそうにいう。

「入学しちゃった! じゃーん! これ、生徒手帳だよ」
「えぇぇッ、うそーぉ! ほんとに判子押してるぅ!」
ユニが誰かから、もらった生徒手帳を開いて、ゆーまに見せた。そこには、ユニのカワイイ笑顔満面の写真と、証明の判子があった。唐突の出来事に、信じられないと言った面持ちで、ゆーまは垣間見た。

「水着っていう、ゆーまが好きな格好で、校長先生に話ししたら、可愛いから良いって!」
ユニがエヘッと、微笑しながら能天気な声で言う。

「って、おい、誘惑したのかよぉ! あのエロ校長、ここはタレント事務所かぁ!」
エロ校長の姿が浮かび、ゆーまは、余りの出来具合に、呆れた顔をする。そんな誰でもでいいのかと。更に、憶測が走る。

「で、そこに、一緒に付いて来ている、妙な帽子被った男と、胸元セクシーに開いてレースクイーンみたいな超ミニスカ履いた女の子は、もしかして、ラクリとピット?」

「よく判ったな、婿殿!」
「そうダスよ!」
「って、わかるわぁ、その格好みたら! 服に羽根のマーク入ってるし、魔法タブレットと魔法ペン持ってるし、はぁ……」
ゆーまは溜息をつく。

「もしかして、ラクリとピットも入学したわけ?」
「わしは、ユニ様の世話係じゃ。入学はしてないが、仮入学ということにしてもらったじゃ。一緒にいて当たり前なのじゃ! 学校にいる時は、妖精の格好じゃ拙(まず)いから、人間の格好に変身魔法トランスでなったわけじゃよ!」

「我輩もダス!」
懸念して、ゆーまが問い質(ただ)した時だった。誰かが、割って入った。

「せ、せんぱい、その隣にいる可愛い子はだ、誰ッスか?」
「あぁ、明日希(あすき)かぁ!」
一学年下のクラスのゆーまの後輩の明日希だ。長い前髪に黒髪の、一見、普通の少年だ。手に、デジタルビデオカメラを持っている。

「まぶしいッ☆ 天使ッス♡ くらくらするッス。超かわいいっす♡ 目の前に僕の天使がいるッス♡」
明日希は、手に、持っていたデジタルビデオカメラを、顔がアップで映るくらいユニに近付け、必死に四方八方から、素早いスピードで動き回り、ユニを撮り捲(まく)る。ユニは、不思議そうな顔をし、首を傾げる。近くにいたラクリが、眉毛を吊(つ)り上げていた。

「僕は、派疎見明日希(ぱそみ・あすき)っていうっす。よろしくッス」
鼻息を荒くし、明日希はデジタルビデオカメラを、軽快に動かしながら、甲高い声で言う。

「ユニっていうの。ヨロシクネ」
ユニは、撮られているにも拘(かかわ)らず、全く嫌そうにもしない。普通なら、女の子は嫌がるのだが、許容性が高いのか、魔法の国では、姫様で見られる存在だからなのか、困惑もしなかった。逆に、カメラに笑顔で手を振っている。

「ヨロシクネっすか♡ かわいいっす。ユニさん、こっち向いてぇくださいっす」
益々、明日希が興奮し、荒い鼻息を活発に出し、ビデオを回す。
「明日希、ビデオ、回すな!」
あんまり、明日希のユニを撮る姿に焼き餅を妬(や)いたのか、ゆーまは、苦言を明日希に放つ。ほんとに困った奴だと言った面持ちだ。

「イいっす。イいっす♡超かわいいっす♡」
ユニの笑顔に悩殺されたのか、もう、誰も止められなかった。ゆーまの注意も見ず知らず、更に更にビデオを回し出した。

「チェンジ、むぎゅ♡」
「こらぁ~。ユニ、教室で水着になるナァ~」
なんと、一瞬の間に、ユニが、魔法服で服装をチェンジし、水着姿になっていた。席から立ち上がり、ゆーまは、恥ずかしそうに頓狂(とんきょう)な面持ちで大きな声を上げる。

「えへへ、かわいいでしょ、ゆーまぁ」
ユニは、教室にいたクラスメイトから、視線の的だが、恥ずかしがることもなく、水着姿で大胆且(か)つ、次から次に、セクシーなポーズを取る。

「そりゃ、かわいいけどさ、お願い、しないで。男子生徒の目に毒だから制服にチェンジしてくれ」
顔をちょっと横に向け、ドキドキ顔で、ゆーまは、そそくさという。

教室にいた、男子生徒の目がハートになり、視線を釘付けにしている。男のサガだ。
「姫様、はしたないです」
ラクリが、咳払(せきばら)いをし、ユニの肩をポンと叩く。

「うそだよーん。チェンジ」

ピカァ!

何と、今度は、一瞬のうちに魔法服でゆーまの学校の女子生徒の制服姿にチェンジしていた。

「え、さっき水着だったんじゃ?」
クラスメイトから不思議の声が飛ぶ。また、視線が釘付けだ。可憐(かれん)なポーズをユニは取る。その姿は姫様らしくファッショナブルで、高貴な感じがした。

「どう、ゆーまぁ? ユニの制服姿!」
「かわいいよ、いけてる」
「でしょ。でしょ」
ユニはゆーまの返事にやったと言った面持ちで、嬉しそうな顔をし、その場で無邪気に飛び跳ねた。

「超かわいいっす。ユニさん、こっち向いてぇ~」
明日希が、猛烈夢中だった。誰にも止めようがなかった。

「(あいつ、またビデオ回してる)」
もう、ふぅと溜息を付き、ゆーまは呆れ顔だった。

「先輩、あんな超可愛い子と一体、どういう関係なんですか?」
明日希はゆーまの両肩を手で握り、顔を近付けて、問い質(ただ)した。

「あのなぁ、それがなぁ、複雑でなぁ」
右頬を指で撫(な)でながら、困惑した顔で、ゆーまはいう。喋(しゃべ)りたくない模様だ。
だが、その時だった。口を滑らす奴がいた。

「あたしは、ゆーまの許婚(いいなずけ)だよ」
「い、許婚(いいなずけ)ぇ! うそでしょ~?」

「ほんとだよ。ね、ゆーまぁ♡」
ユニが言う。ゆーまは、言いたくないことを言われ、嘆息気味だ。

「お、おん、まぁな」
ゆーまは仕方なく、溜息を付きながら返事を返した。

「先輩、いつから、女の子に手を出すのが、そんなに早くなったんです」
「て、違うよ。そうじゃなくてさ、あぁ、もう、説明するのがめんどい……」
明日希の問いに、ゆーまは、少し頭をムシャぼる。ユニが、ウフフと言った面持ちで不思議そうに見ている。明朗だ。ゆーまは、腕時計を見遣った。

「おい、もうチャイムが鳴るぞ。明日希、教室に帰らなくていいのか?」
「くそッス。ユニさんとのパラダイスの時間が……。先輩、またっす!」
教室の壁掛け時計を見遣り、明日希は飛び跳ねながら教室を去っていく。

「天使ッス♡」
「あほか(走りながら跳んで言ってる)ふぅ、あいつといると飽きないけど、デジビデ、デジカメ撮り捲(まく)るのは、困ったやつだな」

廊下を嬉しそうにはしゃぎながら、去る明日希を見て、ゆーまは、呆れ声で、ジト目で見遣る。ユニは、教室全体を首を振り見遣っていた。ちょこんと、ゆーまの傍にいた。
暫くそうしているうちに、チャイムが鳴った。生徒が皆、席に着いていく。




☆☆
第九幕につづく。Up予定。
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