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第13話「お姉様を探して」
しおりを挟む王都襲撃からはや1ヶ月、地球の魔女として王都から認められた詩音は暇を持て余していた。
今日も喫茶ポワレの百合給仕という退屈な仕事をこなしている所だ。
転生前は給仕の仕事も演技も極めていたのだ、造作もない。
まさにチート能力の無駄遣いである。
「いらっしゃいませ、お嬢様」
「大分板に付いてきたじゃないかシオンちゃん」
「からかわないで」
氷の魔女こと3年生のエリシアがスキンシップを取って来る。
その度に後方で黄色い声援が聞こえてくるのだ。
困ったものである。
「お姉様と呼んでもいいんだよ、シオンちゃん」
「冗談じゃないわ。それにあなたにはシルフィーヌがいるでしょ」
「はは、そうだった」
「まったく・・・こんなんじゃシルフィーヌが可哀想だわ」
シルフィーヌとは詩音と同じ1年の生徒で風の魔女を名乗っている。
清楚という言葉が似合うたたずまいで、エリシアとは真逆の性格だ。
何故シルフィーヌがエリシアを姉・・・指導役に選んだのか詩音には理解できなかった。
「姉妹って言うのはね、ただの師匠と弟子じゃないんだよ。もっとこう絆って言うのかな。そういう感じの関係なんだ」
「よく分からないわね」
「シオンちゃんも姉を持てば分かるよ。どうだいイクリーサとか」
「イクリーサ先輩ねぇ・・・」
イクリーサは2年生の先輩で雷の魔女である。
性格は生徒会長モードの詩音に近く、生真面目すぎて近寄りがたい存在だ。
性格も石の様に堅物で冗談が通じない。
この人とは一歩距離をおいておきたいと思う詩音であった。
「まだ紹介してない魔女って言うと・・・あ、丁度いい所に!レオナ~」
「エリシア先輩、どうされたのですか?」
レオナと呼ばれた長身の美しい女性は
美しく長い黒髪のポニーテールをたなびかせ入室してくる。
その瞬間周囲から自分の時とは比較にならない程の歓声が上がる。
どうやら彼女が一番人気の様だ。
そしてレオナは詩音の方に向かって歩いて来る。
「ごきげんよう。あらあなた、タイが曲がっていてよ」
「あ、申し訳ありませんレオナ様」
「私が直して上げる」
「え」
詩音の若干曲がったタイを直すレオナ。
その際当然ながら後ろで声援が上がる。
レオナは詩音のタイを直すと今度はエリシアの方に向き直った。
「エリシア先輩も曲がってますよ。だらしがないんですから・・・」
「たはは・・・申し訳ない」
レオナはエリシアのタイを直すと給仕の制服に着替えに一度教室を去った。
その隙にエリシアが詩音に近付き一声かける。
「どうだいシオンちゃん、レオナを見た感想は」
「そうですね、典型的なお嬢様と言った方ですけど。嫌な感じはしませんね」
「あら、それはよかったわ」
「あ」
丁度そこに現れたレオナは表情を全く変えずに二人の近くに立っていた。
先程のエリシアとの話も聞いていたのだと考えると気まずくなる詩音とエリシア、そして当人のレオナ。
重苦しいこの空気を変えようとエリシアは話題を変える。
「ところでレオナってまだ妹はいないんだよね。シオンちゃんなんてどうかな。優秀だしそれにかわいい―」
「ちょっと、エリシア先輩!」
エリシアが変な事を言い出す前に詩音がそれを止める。
しかしレオナの答えは詩音の予想に反し残酷な物だった。
「私、自分より弱い娘に興味ありませんから・・・」
「それを指導するのが姉の務めじゃないの?」
エリシアが最もなツッコミをするが無言を貫くレオナ。
詩音の高いプライドにカチンと響いたその態度は詩音を怒らすに十分だった。
「あら、戦ってもいないのに何故弱いと分かるんですか?レオナ先輩」
「あらごめんなさい、傷つけちゃったかしら。悪気はなかったのよ、ごめんなさいね」
レオナには本当に悪気はなかったのであろう。
しかし詩音からしたら「弱い者扱い」は侮辱以外の何物でもなかった。
このピリピリした空気に臆せず、エリシアは笑顔で割って入った。
「いや~一触即発だねー。だったら戦ってみたら?シオンちゃんが勝ったら勝ったら妹にするって事で」
「「興味ありません」」
異口同音でエリシアに返答する二人。
しかし次のエリシアの一言が全てを変えた。
「あれれ~?もしかして二人とも負けるのが怖いのかなぁ?」
「「やります!」」
負けず嫌いの二人は異口同音で賛成した。
相変わらず人を乗せるのが上手いお人だなぁと思ったシルフィーヌであった。
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