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昔の話
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丑の刻参りって、知ってますか?
はあ。
はあ。
そうなんですか。
詳しいですね。
鏡に、蝋燭ですか?
それだけご存知でしたら、問題ありませんよ。
つまり、ですね。
藁人形に釘を打ちつける、あれです。
運転手さんの話していたお話といいますのは、その、丑の刻参りにまつわる話なのです。
ええ、ここからはもう、運転手さんの言っていたことをそのまま言うような形になってしまうんですがね。
いつのことかは知りませんけど、丑の刻参りをやった女性がいたのだそうです。
自分のことを裏切った男性を……まあ、呪ったんですって。
するとね、一週間後に、その男性は死んでしまった。
心臓を悪くしたということです。
細かな死因も、呪いとの関係も、まったく関わりのない私には知る由もありません。
だいたい、実話かフィクションかも分からないんですから。
男が死んで、その女性が喜んだのか驚いたのかは知りません。
なんにせよ、男性は死んでしまったんです。
すると周りの人が……。
周りの人は、呪った女性と亡くなった男性との関係を、よく知っていたわけですねぇ。
男性の死が突然だったのでしょう。
事情を知る人たちの間では、本気ではないにしろ、その女性が何かやったんじゃないかと、そういう話になった。
ええ、そうですね。
誰に何をされたわけでもない。
男性はただの病死です。
心臓を悪くして亡くなったのですからね、事件性なんてあったものではありませんよ。
ところが、面白いほうに考えたがるのが人間。
どうにかこじつけようと、毒殺だという人までいたのだそうです。
中には……そう、呪いをかけたのだと、そう言う人まで出てきました。
女性はね、ああ、呪いをかけた女性ですよ。
その女性はね、焦ったわけですよ。
いいえ。
そうじゃありません。
毒殺だと言われたところで、そんなことはしていないのですから、調べたって当然証拠なんて出てきませんでしょう。
問題は、呪いだって言う人が出てきたことなんです。
もちろん、そんなことを証明できる人なんていません。
だけど、人の目があるでしょう。
あの人は人を呪い殺したんだって、そんなことになれば、体面も何もあったものではありませんよ。
女性には、その男に呪いをかけたっていう事実があるわけでしょう。
事実があるからにはばれるかも知れないと、そう思ったんでしょうか。
もしかしたら、もうとっくにばれているのではないか、と、そう思ったのかも知れません。
怖いですね。
怖いですよ。
そのときはまだ、狭い範囲でしか噂されていなかったそうなのですが、いつ、誰が広めるかわからない。
誰と言わずとも、噂なんてすぐに広がってしまうものです。
広まればそれこそ、彼女は終わりですよ。
どんな嫌がらせを受けるか、分かったものではない。
それとも、誰も近寄らなくなりますかね。
まあ、どちらにしろ地獄ですよ。
ですからね、その女性は、呪いだと言っている人たちの一人ひとりを脅しに行った。
この話を広めたら、呪い殺すぞ、と。
はい、逆効果ですよね。
これでは、呪い殺したんですと言っているようなもの。
その女性は、噂が広まることが、相当怖かったのでしょう。
それで、彼女に脅された人たちはね……。
そうそう、呪い殺したんだっていう人たちの中には、二通りの人間がいたわけです。
ひとつは、彼女が本当に呪い殺したんだと……つまり、呪いが実在するかも知れないと思っている人たち。
まあ、これはごく少数ですよね。
その人たちは震え上がったわけです。
だって、実際に人を呪い殺した人間に、呪い殺すぞと言われたのですからね。
そりゃあ、口が裂けても口外できませんよ。
もう一方は、呪いなんてないと思っている人たち。
噂するのが面白くて、思ってもいないのに呪いだ呪いだと言っている。
そりゃあ、大半がこっちでしょうよ。
私やあなたが当事者――と言うんですかね、まあ、当事者なら、きっとこっち側の人間です。
でね、そういう人たちは、呪い殺すぞなんて脅されると、余計に面白くなってしまったわけです。
ありもしない呪いっていう武器を振り回しているんですから、それは滑稽ですよ。
だから、と言いますか。
本当は広めるつもりなんてさらさらなかったのだとしても、言いたくてしょうがなくなった。
それでね、結局その人たちは、脅されたことも含め、呪いのことを触れ回った。
はあ。
はあ。
そうなんですか。
詳しいですね。
鏡に、蝋燭ですか?
それだけご存知でしたら、問題ありませんよ。
つまり、ですね。
藁人形に釘を打ちつける、あれです。
運転手さんの話していたお話といいますのは、その、丑の刻参りにまつわる話なのです。
ええ、ここからはもう、運転手さんの言っていたことをそのまま言うような形になってしまうんですがね。
いつのことかは知りませんけど、丑の刻参りをやった女性がいたのだそうです。
自分のことを裏切った男性を……まあ、呪ったんですって。
するとね、一週間後に、その男性は死んでしまった。
心臓を悪くしたということです。
細かな死因も、呪いとの関係も、まったく関わりのない私には知る由もありません。
だいたい、実話かフィクションかも分からないんですから。
男が死んで、その女性が喜んだのか驚いたのかは知りません。
なんにせよ、男性は死んでしまったんです。
すると周りの人が……。
周りの人は、呪った女性と亡くなった男性との関係を、よく知っていたわけですねぇ。
男性の死が突然だったのでしょう。
事情を知る人たちの間では、本気ではないにしろ、その女性が何かやったんじゃないかと、そういう話になった。
ええ、そうですね。
誰に何をされたわけでもない。
男性はただの病死です。
心臓を悪くして亡くなったのですからね、事件性なんてあったものではありませんよ。
ところが、面白いほうに考えたがるのが人間。
どうにかこじつけようと、毒殺だという人までいたのだそうです。
中には……そう、呪いをかけたのだと、そう言う人まで出てきました。
女性はね、ああ、呪いをかけた女性ですよ。
その女性はね、焦ったわけですよ。
いいえ。
そうじゃありません。
毒殺だと言われたところで、そんなことはしていないのですから、調べたって当然証拠なんて出てきませんでしょう。
問題は、呪いだって言う人が出てきたことなんです。
もちろん、そんなことを証明できる人なんていません。
だけど、人の目があるでしょう。
あの人は人を呪い殺したんだって、そんなことになれば、体面も何もあったものではありませんよ。
女性には、その男に呪いをかけたっていう事実があるわけでしょう。
事実があるからにはばれるかも知れないと、そう思ったんでしょうか。
もしかしたら、もうとっくにばれているのではないか、と、そう思ったのかも知れません。
怖いですね。
怖いですよ。
そのときはまだ、狭い範囲でしか噂されていなかったそうなのですが、いつ、誰が広めるかわからない。
誰と言わずとも、噂なんてすぐに広がってしまうものです。
広まればそれこそ、彼女は終わりですよ。
どんな嫌がらせを受けるか、分かったものではない。
それとも、誰も近寄らなくなりますかね。
まあ、どちらにしろ地獄ですよ。
ですからね、その女性は、呪いだと言っている人たちの一人ひとりを脅しに行った。
この話を広めたら、呪い殺すぞ、と。
はい、逆効果ですよね。
これでは、呪い殺したんですと言っているようなもの。
その女性は、噂が広まることが、相当怖かったのでしょう。
それで、彼女に脅された人たちはね……。
そうそう、呪い殺したんだっていう人たちの中には、二通りの人間がいたわけです。
ひとつは、彼女が本当に呪い殺したんだと……つまり、呪いが実在するかも知れないと思っている人たち。
まあ、これはごく少数ですよね。
その人たちは震え上がったわけです。
だって、実際に人を呪い殺した人間に、呪い殺すぞと言われたのですからね。
そりゃあ、口が裂けても口外できませんよ。
もう一方は、呪いなんてないと思っている人たち。
噂するのが面白くて、思ってもいないのに呪いだ呪いだと言っている。
そりゃあ、大半がこっちでしょうよ。
私やあなたが当事者――と言うんですかね、まあ、当事者なら、きっとこっち側の人間です。
でね、そういう人たちは、呪い殺すぞなんて脅されると、余計に面白くなってしまったわけです。
ありもしない呪いっていう武器を振り回しているんですから、それは滑稽ですよ。
だから、と言いますか。
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それでね、結局その人たちは、脅されたことも含め、呪いのことを触れ回った。
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