2 / 4
髭のない男
しおりを挟む
リツトさんが定職に就いたのは、僕が派遣されてから、一年ほどが経った頃だ。
都会に住む兄夫婦に、娘が生まれたのだ。リツトさんにとっては姪である。
リツトさんはその姪に、惚れ込んだ。なにも、おかしな意味ではない。いわゆる親バカだ。父性が目覚めた、とでもいうのだろうか。
リツトさんは僕を連れて兄夫婦の家に上がり込むと、棲みついて、都会で定職を探し始めた。
人柄のよいリツトさんが疎まれることはなかったし、もともと、兄夫婦も勧めていたことだ。彼のように気立てのよい人間は社会にも求められ、リツトさん自身もその気になっていたのだろう、事は全て円滑に進んだ。
そんな、喜ぶべき日々の中、僕だけは、新しい生活に馴染めなかった。
以前のように、一日中リツトさんと走り回ることなどできなくなったし、ぼうっと空を眺めていれば、兄夫婦からは冷たい目。
なによりも僕は、ロボットだった。社会的には人間とほぼ同等に扱われるはずの僕らは、世間に疎まれていた。僕のことを人間だと思っていたらしい隣人は、僕がロボットなのだと知ると、急に素っ気なくなった。
家の中で僕は、置物同然だった。リツトさんが仕事に行っている間は、誰も僕に、見向きもしなかった。
どんなに姿が似ていても、人間にとって僕らは異質だったのだろう。
街にロボットがはびこっていても、人間にとって僕らは、市民ではありえなかったのだろう。
それでも僕は、リツトさんの前でだけは、世間の有様を知らないかのように、狭い家で暮らしていた頃と同じ自分を演じていた。
心の優しいリツトさんはきっと、僕の嘘に気づかないふりをしていた。
リツトさんが素晴らしい人であったことを、僕は思い知った。
ゴミ山を登っていた頃のリツトさんは、本当に素晴らしかった。
都会に住む兄夫婦に、娘が生まれたのだ。リツトさんにとっては姪である。
リツトさんはその姪に、惚れ込んだ。なにも、おかしな意味ではない。いわゆる親バカだ。父性が目覚めた、とでもいうのだろうか。
リツトさんは僕を連れて兄夫婦の家に上がり込むと、棲みついて、都会で定職を探し始めた。
人柄のよいリツトさんが疎まれることはなかったし、もともと、兄夫婦も勧めていたことだ。彼のように気立てのよい人間は社会にも求められ、リツトさん自身もその気になっていたのだろう、事は全て円滑に進んだ。
そんな、喜ぶべき日々の中、僕だけは、新しい生活に馴染めなかった。
以前のように、一日中リツトさんと走り回ることなどできなくなったし、ぼうっと空を眺めていれば、兄夫婦からは冷たい目。
なによりも僕は、ロボットだった。社会的には人間とほぼ同等に扱われるはずの僕らは、世間に疎まれていた。僕のことを人間だと思っていたらしい隣人は、僕がロボットなのだと知ると、急に素っ気なくなった。
家の中で僕は、置物同然だった。リツトさんが仕事に行っている間は、誰も僕に、見向きもしなかった。
どんなに姿が似ていても、人間にとって僕らは異質だったのだろう。
街にロボットがはびこっていても、人間にとって僕らは、市民ではありえなかったのだろう。
それでも僕は、リツトさんの前でだけは、世間の有様を知らないかのように、狭い家で暮らしていた頃と同じ自分を演じていた。
心の優しいリツトさんはきっと、僕の嘘に気づかないふりをしていた。
リツトさんが素晴らしい人であったことを、僕は思い知った。
ゴミ山を登っていた頃のリツトさんは、本当に素晴らしかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる