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21話 魔法少女と大好きな君への魔法(2)
しおりを挟む階段下に落ちていくこいつを見て、私は願った。
翼を助けて!
私は体が引きちぎれても、心臓が止まってもいい。
だからお願い!
なりふり構わず、ひたすら願う。
……すると浮いた。翼の体が。
ゆっくり、ゆっくりと階段下まで降りていった。
使えた。良かった……。
その姿を見届けた瞬間に私の力が抜け、階段端に保たれるように倒れた。
「優花! 優花!」
力は入らないけど、揺すぶられこいつに呼びかけられる声は聞こえた。
ケガはなさそう。良かった……。
……さすがに人間浮かせたらバレるよね。まあ、終わってたし。いっか。
そう思っていると、私の体はふわっと浮く。
え、魔法? ……あ、ちがう。
私はこいつに、抱っこされていた。
ちょっとバカ! 恥ずかしいから、やめてよ!
そう言おうにも口は動かず、体も動かしてバタバタすることができない私は、身を任せるしかない。
こいつは必死に走っていて、保健室に向かっているのだと分かる。
こんな状態でも私は胸がドキドキして、この嬉しさにほっぺたが緩んでしまう。
……温かいな、こいつ。最後の思い出ってやつにしようかな?
そう思いながら、私はかろうじて動く顔をこいつの胸に預けた。
……ありがとう。さよなら翼。
あんたと一緒にやったお助け係、楽しかったよ。最高の思い出だった。
私は、こいつの温もりを感じながら意識を失くした。
次に見たのは、いつもの天井だった。
「優花、大丈夫?」
側にいてくれたお母さんが、そう聞いてくれた。
「うん、ごめん……」
ここは私の部屋。
終業式の日に、学校で倒れて三日経っていたらしい。
どうやら、力の使いすぎで倒れたみたい。
私はお母さんが作ってくれたお粥を食べ、水を飲む。
そして、初めて倒れてしまった日を思い出していた。
実は、幼稚園の時にも一回あった。
礼美ちゃんの顔にボールが当たりそうになり、思わずボールを壊してしまった。
あのころの小さな体に、物を壊すのは強い負荷がかかってしまい倒れてしまった。
あれから周りに、気味が悪いと避けられるようになり。また倒れたことから、力の使いすぎに気をつけていた。
「お母さん。ごめん、バレちゃった……。転校して良い?」
私は今まで、学校で魔法を使っていたことを話して謝った。
「うん、分かってた。一学期、やたら疲れていること多かったものね」
「うん……。ねえ、どうして止めなかったの?」
そう聞くと、お母さんは笑って話してくれた。
「だって優花、目をキラキラさせていたから。ずっとこの力を嫌がっていたけど、自信持って使えるならその方が良いと思っていたの」
「お母さん……」
「転校したかったらいつでも手続きするから、まずは手紙を読んで考えてみたら? それでもしたいなら、先生に相談に行くから」
そう言ってお母さんは手紙を渡してくれ、そっと私の部屋から出て行った。
手紙を開けるとそこには何枚もの手紙。
礼美ちゃん、舞ちゃん、夏美ちゃんから。
夏休みの遊びに行く計画表と、共に二学期も学校に行こうと書いてあった。
そして、かわいい便せんとちがう普通の紙に書かれている、もう一枚があった。
それを開くと、私はギョッとなる。
『転校するなよ! 優花が別の学校に行くようになっても、オレが毎日家まで呼びに行くからな!』
「はあー! 何、バカなこと言ってるの!」
思わず声が出て、気づけば私は大笑いしていた。
あいつなら、やりかねない。そう思った。
そして手紙の下の方には。
『家の近くの浜辺に来い! 来るまで毎日待ってるからな!』
そう書かれていた。
こいつが指定した浜辺は、家の近くにある場所だけど、毎日待ってる?
やばい、あいつならそれもやりかねない。
そう思った途端、私の体は軽く浮く。
目の前にはオレンジ色した夕日に、同じくオレンジ色した海が広がっていた。
気づけば、こいつが指定した浜辺に居た。
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