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『朝日……』
とても、懐かしい……声。
あれから……何年経っただろう。
私はいつのまにか、深い藍色の海の中にいた。
まわりを見渡しても、誰もいない。見上げると、水面がきらきら輝いて見える。
「ねえ……どこにいるの?」
『……』
何も聞こえない。でも、どこかにいる気配がする。
ふいに、辺り一面が花畑に変わった。
このあいだ暁と行った……そのときの景色を思い出す。
花がいっせいに風になびいて、まるで歌っているみたい。
すごく、いい香り……。
ふと、振り返る。……彼の幻を見た。
でも……視界が涙でぼやけて……顔が見えない。
ああ、そうか……。
これは……夢だ。私が望んでる……夢の光景なんだ。
まだ……彼は、来ない。
わかってるのに……。
なのに……どうして期待してしまうんだろう。
茶色い髪が……光で金色に輝いて見えた。
左手の小指に、赤にも青緑にも見える指輪をしている。
『……待たせた……?』
彼の手が……私の頬の雫を、そっと拭った。
~ Fin ~
Continue to 「Ikoku rokkei」・・・
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
読んでいただき、ありがとうございました。
よろしければ、こちらにもお寄りいただけると嬉しいです。
『あの夏の日に ~俺たちの透明な二週間~』※同一世界観の「ウルスラ」の物語
『漆黒の昔方 ~俺のすべてが、此処に在る~』※同一世界観の「ジャスラ」の物語
この物語の続きは……またいつか。
とても、懐かしい……声。
あれから……何年経っただろう。
私はいつのまにか、深い藍色の海の中にいた。
まわりを見渡しても、誰もいない。見上げると、水面がきらきら輝いて見える。
「ねえ……どこにいるの?」
『……』
何も聞こえない。でも、どこかにいる気配がする。
ふいに、辺り一面が花畑に変わった。
このあいだ暁と行った……そのときの景色を思い出す。
花がいっせいに風になびいて、まるで歌っているみたい。
すごく、いい香り……。
ふと、振り返る。……彼の幻を見た。
でも……視界が涙でぼやけて……顔が見えない。
ああ、そうか……。
これは……夢だ。私が望んでる……夢の光景なんだ。
まだ……彼は、来ない。
わかってるのに……。
なのに……どうして期待してしまうんだろう。
茶色い髪が……光で金色に輝いて見えた。
左手の小指に、赤にも青緑にも見える指輪をしている。
『……待たせた……?』
彼の手が……私の頬の雫を、そっと拭った。
~ Fin ~
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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
読んでいただき、ありがとうございました。
よろしければ、こちらにもお寄りいただけると嬉しいです。
『あの夏の日に ~俺たちの透明な二週間~』※同一世界観の「ウルスラ」の物語
『漆黒の昔方 ~俺のすべてが、此処に在る~』※同一世界観の「ジャスラ」の物語
この物語の続きは……またいつか。
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