9 / 156
第1幕 収監令嬢は外に出たい(プロローグ)
第9話 辺境の地で咆える
しおりを挟む
フィッサマイヤは、フサフサとした長い尻尾を持つ金色の狐。小さい顔に大きな耳、体長は50cmほどと、魔獣とは思えない可愛らしい姿ですが、人語も解するれっきとした魔獣。額にある赤い宝石は、すべての魔法を無効化する力を持っています。
魔物と意思を交わす術を覚えたシュルヴィアフェスは、魔物を駆逐する人間の味方につくことはできませんでした。
そして勿論、人間を粛正する魔王の味方につくこともできず、逃げることしかできなかったのです。
そんなシュルヴィアフェスの「自分を隠してほしい」という願いに応え、フィッサマイヤは魔界より現れ、彼女を自分の森に匿うことにしました。
しかしここに、聖女を探す使命にかられたジャスリー・ワイズ王子が現れます。
「――世界中を探したが見つからない。聖女はきっと、此処にいる」
彼はそう、確信していました。
『フィッサマイヤの森』は魔法が一切効かない恐怖の森。魔物に出くわせば、人間などひとたまりもありません。
しかし世界一とも謳われる剣の腕を持っていた彼は、
「聖女を見つけられるのは自分しかいない」
と臣下の反対を振り切り、一度入ったら二度と出られぬ『フィッサマイヤの森』に、たった独りで足を踏み入れました。
心優しいシュルヴィアフェスは、人間も魔物も選べなかっただけ。王子を亡き者にしたかった訳ではありません。
傷だらけになりながら魔物と戦い、深くより深くと森に入ってくる彼を、見殺しにすることはできませんでした。
こうして――『聖女』シュルヴィアフェスと後に彼女の『伴侶』となるジャスリー王子は、フィッサマイヤの森で運命的な出会いを果たすのです。
* * *
「いやーん、何ー!? 急にラブファンタジーだわ!」
思わず叫び声を上げる。ハッとして右手で口を塞いだけど、例の嫌味な声は降って来なかった。
顔を上げて辺りを見回すと、セルフィスの姿はどこにもない。いつの間にか帰ったらしい。
それならそうと、一言言ってくれればいいのに……。来るのも帰るのも突然なのよね。
まぁ、私の報告のほか、市井の様子を探るということもしているみたいだから、忙しいのかもしれないけど。
「マユ様? よろしいでしょうか?」
コンコン、というノックの音が聞こえ、ヘレンの声が聞こえる。
「あ、うん。大丈夫」
「昼食をお持ちしました。入りますね」
カチャリと扉を開け、ヘレンが四つほどお皿の乗ったお盆を抱えて現れる。
お昼ということは、今日の読書はここまでか。午後からはヘレン先生指導の元、刺繍の時間だもんね。
ヘレンが白の丸テーブルに皿をセッティングしてくれたので、黒い椅子から立ち上がる。
ふと、机や紙に飛び散ったインクが目に入った。
「ヘレン、布巾ってあるかなあ」
「布巾、ですか? ございますが」
「インクこぼしちゃったの。拭くから貸して」
「まぁ、何を仰いますやら!」
シュタタタッという効果音が出そうな勢いでヘレンが布巾片手にやってくる。
「そのようなことはわたくしがやりますから、マユ様はお食事をなさってください!」
「え、あ……そう?」
ドレスは一人で着るのが難しいから仕方ないけど、これぐらいなら自分でやるのにな。
でも、ここはそういう世界なんだろう、うん。……なかなか慣れないけど。
一番慣れないのは、お風呂の後のヘレンの全身マッサージなんだよね。
何でも、眠っている間も身体を拭き、香油を擦り込み、徹底的に全身を揉みまくっていたらしい。
「ずっと横たわったままでは筋肉が固くなり、骨も歪み、せっかくのお身体が崩れてしまいます。ですからわたくしは毎晩毎晩、マリアンセイユ様のお身体を揉みほぐしておりました」
と、ヘレンが力説してた。
えーと、まぁ、この重力に負けない奇跡のカラダを作ってくれたのがヘレンで、そしてこの身体が魔精力の制御に役立っているという事であれば、目覚めたのはヘレンの功績が大きい、ということになる。
ありがとう、と言うしかなかったんだけども……そのどっかイッちゃってる目とわきわきさせている両手は止めて、とツッコミたくなったわー。
「じゃあ、ご飯食べる。机の上、よろしくね」
「どうぞお召し上がりください。ついでに散らばっている本を少々整えさせて頂いてもよろしいでしょうか」
「あ、うん。ありがとう、ヘレン」
ヘレンにお礼を言うと、その言葉に甘えて私はそのまま黒い机から離れ、中央の丸テーブルに着いた。
この世界の食事は、言うなれば日本のコース料理、という感じだろうか。前菜とスープとパン。それに肉か魚。
ナイフとフォーク、スプーンで食べる。夕食はアイーダ女史と一緒でそのときに礼儀作法も教わってるから、最近はだいぶん使い慣れてきた。
てきぱきと机の上を片付けながら掃除し終わったヘレンは、次にソファへと向かった。
午後から始める刺繍のためか、裁縫箱を小脇に置き、何か大きな布を広げ始める。
「え、それ……」
ヘレンがソファに広げたのは、見覚えのないオフホワイトのワンピース。スタンドカラーって言うんだっけ、襟元がつまっている形で、フリルがついている。首から胸元にかけてはピンクのバラみたいな花が散らされていて、胸元のV字の切り返しにも花がたくさん。袖がふっかふかに膨らんでいて、スカート部分にもたくさんの花のコサージュがつけられている。
「フォンティーヌ公爵よりマユ様の新しいお洋服が届きました。今日の午後は少々お直しをさせていただきたいのですが」
「それはいいけど……何か、すっごくゴテゴテしてるね」
「令嬢の間で今、流行っているそうですが……」
ヘレンは広げたワンピースを遠巻きに眺めている。その表情は、あまり芳しくない。
「マユ様にはあまり似合わないかも、と」
私の容姿を磨き上げることに関しては妥協を許さないヘレンが、ズバッと言う。
ヘレンも最初に比べるとかなり私に慣れてきて、遠慮なく自分の意見を言うようになってきた。いい傾向だと思う。
なお、最初は「マユって呼ぶのは二人っきりの時ね」という話だったんだけど、アイーダ女史にも話が通ったので、目覚めた後の私のことは「マユ」と呼ぶことで統一されました。
何か気分がいい。同盟を組んだみたい、というと大袈裟かな。
そうだ、ゲームで言うと、ゲストキャラじゃなくてちゃんとパーティキャラになったというか、そんな感じ。
「んー、確かに、何だか可愛らしすぎるもんね。フケ顔の私には向いてないかも」
「何を仰いますか! そういう意味ではございません!」
ヘレンがびっくりしたような声を上げてブンブンと右手を横に振る。
「マユ様のようにお胸が立派な方は、襟がつまっていたりあまり飾りが多いと太って見えてしまうのです」
「ああ、なるほど」
「サイズはお知らせしておいたので、合っているとは思うのですが……」
そうよね、お胸が立派だもんね、私ったら。うふっ、うふふっ、うふふふふっ。
しかし公爵もアレだな、流行りのドレスで豪華なやつでも送っておけばいいだろ、って感じよね。
ちゃんと本人に会いに来てよ。そんなドレスが全く似合わない顔とカラダをしてるんだから。
きっと眠ってる間も、一度も顔を出さなかったんだろうな……。こんな僻地に閉じ込めるぐらいだから。
「ねぇ、ヘレン。私の事って、公にはどうなってるの?」
「お目覚めになったことは、大公殿下には内々に伝わっています。ですが、大公家の他の方々や貴族の方々には伏せてあるそうです」
「え、何で?」
「知らせてしまうと、お見舞いだのなんだのと社交の問題が出てきますから。マユ様は、まだ……」
「ああ……」
確かに、表に出せる状態じゃないもんねー。
でも、それと全く会おうとしないというのは、全然別問題だと思うけどさ。
「そうだよね。頑張らないとなー、淑女になるために」
そうすれば、セルフィスもいい報告が大公にできるだろう。
見てろよ、ギャフンと言わせてやるから!
あは、ベタな死語を使っちゃった。
ふと、自分のドレスを見回す。机と紙にあれだけインクが飛び散ったのに、ドレスには一つもついてない。
今の季節は、秋。さっきバルコニーに出て思ったんだけど、結構風は冷たいのよね。だけどこんな薄手のドレスなのに全然寒くない。
「ねぇ、ヘレン。アイーダ女史がね、刺繍は魔精力の制御にも役立つって言ってたんだけど」
「ええ、そう伺っています。わたくしは魔導士ではありませんので、詳しくは存じ上げませんが」
「このドレスってオルヴィア様の刺繍が施されてるでしょ? それって何かの魔法がかかってたりする?」
「ええ、恐らくは。オルヴィア様は創精魔法の魔導士ですから、刺繍を通して何らかの魔術を練り込むことはできたのではないかと思います」
「なるほどねー」
自分で作ったキャンパスに自分で画材を用意し自分で絵を描く、創精魔法。
それは単に『炎を出す』とか『竜巻を作る』という自然現象だけじゃなくて、例えば『魔物を寄せ付けない』とか『怪我を治す』みたいないろいろな魔法が編み出せるに違いない。
そうだ、今やっている、ヘレンのお手本を真似て針を刺す練習。
これはいうなれば、模倣。自然から力を借りて魔法で再現する、という模精魔法の練習も兼ねているのかもしれない。
うーん、確かに理屈が分かると、勉強も作業もやる気になるよね。
ただやらされてるんじゃ駄目。アイーダ女史が言った通り、まず理解することが大事なのかも。
こんなこと、前は考えたことがなかったなあ。申し訳ないけど、ゲーム三昧で真面目に勉強してなかったし。
「ヘレン。私、刺繍の練習、頑張るね。刺繍だけじゃない。いろんなこと、全部」
「え? どうされました、急に?」
「見返したいの。……周りを」
父親にも兄にも邪険にされていた、マリアンセイユのために。
あんたたちは綺麗な花を咲かせるはずだった若芽を枯らしかけたんだよ、と言ってやりたい。
顔も見たことが無い、トーチャン、アニキ!
マリアンセイユはこんなにもデキる子だったんだぞ、と見せつけてやる!
それと、セルフィス。
いつまでもマリアンセイユ様は立派だったと嫌味のように言う、あんたもね!
何をどう言おうが、今ここにいるのはこの私、マユなんだから!
魔物と意思を交わす術を覚えたシュルヴィアフェスは、魔物を駆逐する人間の味方につくことはできませんでした。
そして勿論、人間を粛正する魔王の味方につくこともできず、逃げることしかできなかったのです。
そんなシュルヴィアフェスの「自分を隠してほしい」という願いに応え、フィッサマイヤは魔界より現れ、彼女を自分の森に匿うことにしました。
しかしここに、聖女を探す使命にかられたジャスリー・ワイズ王子が現れます。
「――世界中を探したが見つからない。聖女はきっと、此処にいる」
彼はそう、確信していました。
『フィッサマイヤの森』は魔法が一切効かない恐怖の森。魔物に出くわせば、人間などひとたまりもありません。
しかし世界一とも謳われる剣の腕を持っていた彼は、
「聖女を見つけられるのは自分しかいない」
と臣下の反対を振り切り、一度入ったら二度と出られぬ『フィッサマイヤの森』に、たった独りで足を踏み入れました。
心優しいシュルヴィアフェスは、人間も魔物も選べなかっただけ。王子を亡き者にしたかった訳ではありません。
傷だらけになりながら魔物と戦い、深くより深くと森に入ってくる彼を、見殺しにすることはできませんでした。
こうして――『聖女』シュルヴィアフェスと後に彼女の『伴侶』となるジャスリー王子は、フィッサマイヤの森で運命的な出会いを果たすのです。
* * *
「いやーん、何ー!? 急にラブファンタジーだわ!」
思わず叫び声を上げる。ハッとして右手で口を塞いだけど、例の嫌味な声は降って来なかった。
顔を上げて辺りを見回すと、セルフィスの姿はどこにもない。いつの間にか帰ったらしい。
それならそうと、一言言ってくれればいいのに……。来るのも帰るのも突然なのよね。
まぁ、私の報告のほか、市井の様子を探るということもしているみたいだから、忙しいのかもしれないけど。
「マユ様? よろしいでしょうか?」
コンコン、というノックの音が聞こえ、ヘレンの声が聞こえる。
「あ、うん。大丈夫」
「昼食をお持ちしました。入りますね」
カチャリと扉を開け、ヘレンが四つほどお皿の乗ったお盆を抱えて現れる。
お昼ということは、今日の読書はここまでか。午後からはヘレン先生指導の元、刺繍の時間だもんね。
ヘレンが白の丸テーブルに皿をセッティングしてくれたので、黒い椅子から立ち上がる。
ふと、机や紙に飛び散ったインクが目に入った。
「ヘレン、布巾ってあるかなあ」
「布巾、ですか? ございますが」
「インクこぼしちゃったの。拭くから貸して」
「まぁ、何を仰いますやら!」
シュタタタッという効果音が出そうな勢いでヘレンが布巾片手にやってくる。
「そのようなことはわたくしがやりますから、マユ様はお食事をなさってください!」
「え、あ……そう?」
ドレスは一人で着るのが難しいから仕方ないけど、これぐらいなら自分でやるのにな。
でも、ここはそういう世界なんだろう、うん。……なかなか慣れないけど。
一番慣れないのは、お風呂の後のヘレンの全身マッサージなんだよね。
何でも、眠っている間も身体を拭き、香油を擦り込み、徹底的に全身を揉みまくっていたらしい。
「ずっと横たわったままでは筋肉が固くなり、骨も歪み、せっかくのお身体が崩れてしまいます。ですからわたくしは毎晩毎晩、マリアンセイユ様のお身体を揉みほぐしておりました」
と、ヘレンが力説してた。
えーと、まぁ、この重力に負けない奇跡のカラダを作ってくれたのがヘレンで、そしてこの身体が魔精力の制御に役立っているという事であれば、目覚めたのはヘレンの功績が大きい、ということになる。
ありがとう、と言うしかなかったんだけども……そのどっかイッちゃってる目とわきわきさせている両手は止めて、とツッコミたくなったわー。
「じゃあ、ご飯食べる。机の上、よろしくね」
「どうぞお召し上がりください。ついでに散らばっている本を少々整えさせて頂いてもよろしいでしょうか」
「あ、うん。ありがとう、ヘレン」
ヘレンにお礼を言うと、その言葉に甘えて私はそのまま黒い机から離れ、中央の丸テーブルに着いた。
この世界の食事は、言うなれば日本のコース料理、という感じだろうか。前菜とスープとパン。それに肉か魚。
ナイフとフォーク、スプーンで食べる。夕食はアイーダ女史と一緒でそのときに礼儀作法も教わってるから、最近はだいぶん使い慣れてきた。
てきぱきと机の上を片付けながら掃除し終わったヘレンは、次にソファへと向かった。
午後から始める刺繍のためか、裁縫箱を小脇に置き、何か大きな布を広げ始める。
「え、それ……」
ヘレンがソファに広げたのは、見覚えのないオフホワイトのワンピース。スタンドカラーって言うんだっけ、襟元がつまっている形で、フリルがついている。首から胸元にかけてはピンクのバラみたいな花が散らされていて、胸元のV字の切り返しにも花がたくさん。袖がふっかふかに膨らんでいて、スカート部分にもたくさんの花のコサージュがつけられている。
「フォンティーヌ公爵よりマユ様の新しいお洋服が届きました。今日の午後は少々お直しをさせていただきたいのですが」
「それはいいけど……何か、すっごくゴテゴテしてるね」
「令嬢の間で今、流行っているそうですが……」
ヘレンは広げたワンピースを遠巻きに眺めている。その表情は、あまり芳しくない。
「マユ様にはあまり似合わないかも、と」
私の容姿を磨き上げることに関しては妥協を許さないヘレンが、ズバッと言う。
ヘレンも最初に比べるとかなり私に慣れてきて、遠慮なく自分の意見を言うようになってきた。いい傾向だと思う。
なお、最初は「マユって呼ぶのは二人っきりの時ね」という話だったんだけど、アイーダ女史にも話が通ったので、目覚めた後の私のことは「マユ」と呼ぶことで統一されました。
何か気分がいい。同盟を組んだみたい、というと大袈裟かな。
そうだ、ゲームで言うと、ゲストキャラじゃなくてちゃんとパーティキャラになったというか、そんな感じ。
「んー、確かに、何だか可愛らしすぎるもんね。フケ顔の私には向いてないかも」
「何を仰いますか! そういう意味ではございません!」
ヘレンがびっくりしたような声を上げてブンブンと右手を横に振る。
「マユ様のようにお胸が立派な方は、襟がつまっていたりあまり飾りが多いと太って見えてしまうのです」
「ああ、なるほど」
「サイズはお知らせしておいたので、合っているとは思うのですが……」
そうよね、お胸が立派だもんね、私ったら。うふっ、うふふっ、うふふふふっ。
しかし公爵もアレだな、流行りのドレスで豪華なやつでも送っておけばいいだろ、って感じよね。
ちゃんと本人に会いに来てよ。そんなドレスが全く似合わない顔とカラダをしてるんだから。
きっと眠ってる間も、一度も顔を出さなかったんだろうな……。こんな僻地に閉じ込めるぐらいだから。
「ねぇ、ヘレン。私の事って、公にはどうなってるの?」
「お目覚めになったことは、大公殿下には内々に伝わっています。ですが、大公家の他の方々や貴族の方々には伏せてあるそうです」
「え、何で?」
「知らせてしまうと、お見舞いだのなんだのと社交の問題が出てきますから。マユ様は、まだ……」
「ああ……」
確かに、表に出せる状態じゃないもんねー。
でも、それと全く会おうとしないというのは、全然別問題だと思うけどさ。
「そうだよね。頑張らないとなー、淑女になるために」
そうすれば、セルフィスもいい報告が大公にできるだろう。
見てろよ、ギャフンと言わせてやるから!
あは、ベタな死語を使っちゃった。
ふと、自分のドレスを見回す。机と紙にあれだけインクが飛び散ったのに、ドレスには一つもついてない。
今の季節は、秋。さっきバルコニーに出て思ったんだけど、結構風は冷たいのよね。だけどこんな薄手のドレスなのに全然寒くない。
「ねぇ、ヘレン。アイーダ女史がね、刺繍は魔精力の制御にも役立つって言ってたんだけど」
「ええ、そう伺っています。わたくしは魔導士ではありませんので、詳しくは存じ上げませんが」
「このドレスってオルヴィア様の刺繍が施されてるでしょ? それって何かの魔法がかかってたりする?」
「ええ、恐らくは。オルヴィア様は創精魔法の魔導士ですから、刺繍を通して何らかの魔術を練り込むことはできたのではないかと思います」
「なるほどねー」
自分で作ったキャンパスに自分で画材を用意し自分で絵を描く、創精魔法。
それは単に『炎を出す』とか『竜巻を作る』という自然現象だけじゃなくて、例えば『魔物を寄せ付けない』とか『怪我を治す』みたいないろいろな魔法が編み出せるに違いない。
そうだ、今やっている、ヘレンのお手本を真似て針を刺す練習。
これはいうなれば、模倣。自然から力を借りて魔法で再現する、という模精魔法の練習も兼ねているのかもしれない。
うーん、確かに理屈が分かると、勉強も作業もやる気になるよね。
ただやらされてるんじゃ駄目。アイーダ女史が言った通り、まず理解することが大事なのかも。
こんなこと、前は考えたことがなかったなあ。申し訳ないけど、ゲーム三昧で真面目に勉強してなかったし。
「ヘレン。私、刺繍の練習、頑張るね。刺繍だけじゃない。いろんなこと、全部」
「え? どうされました、急に?」
「見返したいの。……周りを」
父親にも兄にも邪険にされていた、マリアンセイユのために。
あんたたちは綺麗な花を咲かせるはずだった若芽を枯らしかけたんだよ、と言ってやりたい。
顔も見たことが無い、トーチャン、アニキ!
マリアンセイユはこんなにもデキる子だったんだぞ、と見せつけてやる!
それと、セルフィス。
いつまでもマリアンセイユ様は立派だったと嫌味のように言う、あんたもね!
何をどう言おうが、今ここにいるのはこの私、マユなんだから!
0
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜
ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが……
この世界の文明レベル、低すぎじゃない!?
私はそんなに凄い人じゃないんですけど!
スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる