転生彫り師の無双物語 〜最弱紋など書き換えればいいじゃない〜

Josse.T

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第10話 宣戦布告を受けた

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正式に特殊初心者になって約1か月が経った。
毎日が武術訓練と魔法訓練の連続だった。

ちなみに今ハマっているのは、探知魔法で政治の動きを傍聴する事だ。
聞けば聞くほどにフワジーラ家の摂関政治の無双っぷりが分かり、一周回って愉快にさえなるというものだ。

忙しさの合間を縫って王立図書館に通うことも忘れてはいない。早くうまい具合に破壊天使リンネルに会う方法を確立したいからな。
「『ギャラクシーエクスプレス!』とか詠唱して、カワサキで太陽(?)系外に出てしまえば流石に魔神の管轄外じゃないのかな。いやしかし、それをやって後から『不祥事の起こった場所の如何に関わらず管理責任は魔神に発生します』とか判明したらなあ……」

策を練りながら王立図書館を後にし、ふと空を見上げた時。俺は、ある異変に気づいた。
空中に、見たことのない緑色に光る文字と見ているだけで癒されそうな三日月が(通常の月とは別に)浮かんでいるのだ。

緑色の文字は……読めなくはないな。『魔王妃ユフインとそのサルファ=ラ=ドンを殺害した男を2週間後に引き渡せ。従わない場合は、魔王自ら人類を殲滅なさる事になる。アタミ』、か。指名手配とは、何というか「一難去ってまた一難」という言葉がぴったりだな。
で、あの月は……確か、サフシヨ様の特殊魔法ではなかったか?何か深刻な事態が発生していそうだな。ちょっと聞いてみるか。

カワサキを収納から出してエンジンをかける傍ら、サフシヨに念話を繋ぐ。普段は意識していなかったが、この時ばかりはこの特殊魔法をサフシヨも使えれば向こうから事態を伝えてもらえたのに、と思った。

「(あの月は、サフシヨ様の特殊魔法じゃないのか?あれ程の魔法を、一体何のために使っている?)」
因みに敬語じゃないのはサフシヨ様に『中途半端な敬語は違和感しかなくて、貴族相手だと逆に苛立ちを覚えられかねない』と言われて以来だ。

「(ええ、あれは青龍偃月刀を使った最高位回復魔法『絶対生命維持の月』よ。)」サフシヨ様は焦り半分、念話がつながった安心感半分といった感じで返事をした。「(それより大変なの!淳の同期の特殊初心者が、全員正体不明の毒にやられてどんな解毒魔法も効かないのよ!おそらく、私の魔力が切れたら数分で全員死ぬわ)」

「(分かった。すぐ向かう)」

・・・これはまずいな。サフシヨ様の特殊魔法――確か、『絶対生命維持の月』と言ったな――は、最大で30分しか持たないはずだ。俺が月に気づくまでに何分経っていたか分からないし、もしかしたらもう魔力枯渇寸前かもしれない。
上手くいく保証は無いが、アイデアだけは持っていたあの技を試すか。

探知魔法でサフシヨ様を探し、見つかったサフシヨ様に対して魔力譲渡の要領で魔力を流し込む。

「(これは……淳の魔力?すごいわね、これならあと30分は持つわ)」
サフシヨ様が念話を返してきた。どうやら成功のようだ。

☆ ☆ ☆

同期の特殊初心者達とサフシヨ様がいる部屋に入ると、一瞬で何の毒に侵されているかが分かった。
この場にいる特殊初心者は7人。全員、血管がこれでもかというくらい鮮やかな赤色をしていたのだ。

間違いない。この症状は、青酸にやられている。

探知魔法で探ってみたところ、少なくとも王城内には他に毒でやられている人はいなさそうだ。
サフシヨ様で以てしても治療できないあたりアタミの仕業なんだろうが、本格的に仕掛けに来た訳ではなく数人見せしめのつもりで殺そうとしたんだろうな。

「――エリアフルパワーキュア」
体内のシアン化物イオンを完全に除去するイメージで魔法を唱えると、病人たちの血管の色はすぐ元に戻った。

「もう月はしまっていいぞ」

「……淳が治せる毒で助かったわ」
そういって、サフシヨ様は大きくため息をついた。

「『絶対生命維持の月』での生命維持がやっとってレベルの毒をあっさり治療するなんで、やっぱり淳はとんでもない実力者ね。今更言う事じゃないけど」

「いや、そういう問題でもないと思うぞ。というのも、魔法はイメージ力が効果や威力に直結する」
これは、本来魔槍しか創造できない筈の魔法でバイクを創造できてしまった事から導いた結論だ。
「今の毒が青酸だと分かっていれば、サフシヨ様でも治療できた可能性は十分にある」

と、俺はフォローを入れたつもりだったのだが……一件落着して血色を取り戻しつつあったはずのサフシヨ様は、みるみるうちに真っ青な顔に戻っていった。

「せ、青酸?も、もしも、よ?それが本当だとしたら……今回の件に、魔王妃アタミが関わっているって事になるのよ?」

「ああ、それか。そうだろうな。空に浮かんでた文字だが、あれはアタミの宣戦布告だったぞ。何でも、2週間後に俺が出向かなければ魔王が人類を滅ぼしに来るらしい」
空に浮かぶ文字の解読結果を伝えると、サフシヨ様はへなへなとその場に倒れこんだ。

「ああ……終わったわ。毒として使えば世界中の全ての疫病を合わせたより惨く、引火物として使えばサラマンダーさえ消し炭にする必殺技<青酸撃 シアニドストライク>を持つアタミが向かってきたら、人類に抵抗する術など無い……」

「俺、行くしかないのかな」

「それはだめ!魔族と人間は、淳のことを抜きにしても水面下で小競り合いが続いていたのよ。そんな中で奴らが決定的な戦力を手に入れたら、いずれにせよ本格的に攻撃しに来るわ」

それは知っておいて正解だったな。危うく、利他行動のつもりが敵の尖兵になる所だった。
とりあえず時間もないので、ちょっとでも建設的に話し合えるようサフシヨ様を落ち着かせよう。

「こんなことを言っても気休めにすらならないかもしれないが、俺は王都に来る前、ユフインを倒したことがある。あの時は特に難なく勝てたな」

瞬間移動にはちょっと面食らったがな。嘘は言っていない。
ふと目を向けると、「がっつり淳が引き金じゃない」とツッコみつつも、サフシヨ様はどこか前向きになれたような表情をしている。上手くいったようだ。

「俺に作戦がある」
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