『コミュ障ビビリは妹の前で強がりたい!(※つよい)』〜ビビりは追放? なら今から本気出すから全員オレの妹な!(自己暗示)【配信を添えて】〜

時雨オオカミ

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追放させる詐欺が流行ってるんだってよ!

一歩も動かず探してみせよう!

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「あの、それで……馬が逃げた方向が分からなくてですね……すみません、冒険者様」

 馬車の御者ぎょしゃをしていたおっさんが申し訳なさそうに眉を下げている。
 あ、これ走って追いかけると思われてます? いやいやいや、そんなことはしないよ? 

 オレにはどちらに逃げていったかなんて情報は必要ないんだし、そんなことして労力を割きたくない! それと、地上を駆けずり回って泥だらけで馬を探すなんて姿、妹に見せられないでしょ! 

「ああ、心配しなくとも、オレはここから一歩も動かずに馬のいる居場所を知ることができる。大船に乗った気持ちで待っていてください」
「いっ、一歩も……ですか!?」
「ええ、少しだけお待ちいただければすぐにでも」

 言いながら、オレは鞘から抜いたロングソードを地面に突き立てる。
 それから、両耳につけていた雷の形をしたイヤリングを外した。ピアスじゃないのかって? 耳に穴開けるなんて原始的な方法取るのは怖すぎて無理に決まってるでしょ!? ビビリで悪いね!! 

 これ、毎回訊かれるたびに内心キレ散らかすんだけど、さすがユラだ。

 お兄ちゃんの地雷はまったく踏んでこないうえに、オレの行動をいっぺんも疑う様子はない。なんていい子なんだ! 感動で泣きそう。

 そこの御者は首を傾げて、めっちゃ疑いの目を向けてくるっていうのにさあ! 
 すげー「できんの?」って顔してくるんですけど! できますー! そんくらい集中すればパパッとできますー! 

「お兄ちゃん、どうやるの?」

 キラキラとした視線がオレの横顔に突き刺さる。
 期待されてる……こういうときって期待に応えたくなるよね! よっしゃ、ちょっとパフォーマンスも込みでやろう。

 そう決めて返事をする。

「んー、そうだな……全部終わってから説明するから、少し待ってな」

 ユラに柔らかく微笑んで、ロングソードの先に意識を集中。
 全身から青い電流がパチリと弾けるのを横目に見ながら、目を閉じた。

 探ぐる。探ぐる。地面の下に広がる無数の枝分かれしたネットワーク……その乱れを。半径十メートル。二十メートル。三十メートル。徐々じょじょに感知の範囲を広げて行き、わずかな乱れさえを見逃さないように。

 どんどん探知範囲を広げる。
 恐らく、馬は走って遠くまで逃げていったはずだ。もしかしたら今も走っているかもしれない。その足が地面を叩く振動は決して小さくはなく、地面の下に張り巡らされたネットワークに微細びさいな乱れを発生させる。

 ネットワークの通信には影響がないが、確かに発生する乱れ。ノイズ。それを見つけ出せばいい。

 これは人が歩いている振動。
 これはゴブリンが歩いている軽さの振動。
 こっちはもぐらが地面の中を掘り進めていっている振動。

 こっちに馬の走る振動があるが、これは馬の後ろにも振動を発生させるものがある。こちらとはまた別の街道を走る馬車のものだろう。これじゃない。

 そしてとうとう探知範囲が一キロに差し掛かったとき、二頭分の馬が静かに歩いているのだろう感触ノイズとらえた。

 バチンッと音を立てて青い雷がオレの肌を撫であげる。

「見ーつけた」

 目を開く。
 笑みを浮かべて懐から冒険者端末を取り出し、手早く操作。馬がいるだろう周辺の電糸エレクトロ・蜘蛛スパイダーをこちらから電気信号を送り、その場所の映像を送ってくるよう呼び出した。

「ええっと、御者さん? こちらの馬で間違いはありませんか?」

 おっさん……なんて呼ぶわけにもいかないよなあ。ひとまず無難な呼び名で御者を手招きして、端末の映像を見せる。

「おお! まさしくこの二頭です! い、いったいこの板はなんですかい?」
「まだ一般人には広く普及ふきゅうしていませんが、ここ十数年くらいに生まれた魔法学技術の結晶ですよ。地下に電気を通す糸が張り巡らされていましてね……あー、暗号みたいなものをやり取りして、目に見えない電気でその場にある景色を映像で送ったりできるのですよ」
「ほ、ほう……?」

 あー、やっぱりね! 小難しいことは分かんないよね! ごめんな! オレも分かりやすい説明ができればいいんだけど……分かんない人に教えるのって苦手なんだよ。

「まー、つまり、遠くにある景色を映し出す魔法ってことです。んで、この場所はここから北に一キロほどの地点。どうやら走って逃げたはいいが、のどが乾いて途中で川に入ったようですね。急いで迎えに行きましょう」
「しかし、馬車を放っていくことはできません!」

 そうだね!! 
 今気がついたよ。うーん、全員で行くと荷物が盗まれるかもしれないし……かと言って、ユラを残していくわけにも……。

「お兄ちゃん、行ってきて! 私は大丈夫よ。おじさん達も、私自身も、ちょっとした魔物からなら守れるわ! 回復魔法もあるし、神聖魔法だって少しは使えるのよ!」

 神聖魔法まで使えるの!? なにこの子天才? 我が妹ながら将来有望だわあ……でも、馬車が襲われて大変なことになっていたっていう事実は消えない。

 妹の無事のためにも、ここはオレがひと肌脱ぎましょう! 

「分かった。けど、一応簡易的な魔物けの結界を張っていくことにするよ」
「むう、分かった。それなら安心ね」

 もう一度剣を地面に突き立て、馬車の周辺の電糸網でんしもうから更に空中にみ上げるように雷の結界を作って行く。一瞬青いネットのように周辺が光ったかと思うと、そのまま静寂せいじゃくが戻っていく。

 あ、やっべ。外したイヤリングつけ忘れてるから、強い結界張りすぎたな……? 魔物を寄せ付けない結界にするはずが、魔物が接触したら焼け死ぬレベルになってしまった……こんなもん設置してて、魔物が焼け死ぬ場面なんて見たら妹のトラウマになりかねないじゃん! なにやってるんだよ、オレ! 

「お兄ちゃん?」

 黙っているオレを見かねてユラが首を傾げて上目遣いをしてくる。
 うっ、こんな顔されてさあ! 結界強くしすぎたからもう一度張り直すね? なんて言えると思いますかああああ!? 

 弱すぎたとかじゃなくても、失敗しましたとか言えるぅ!? 無理でしょ!! このまま行くしかねーじゃん!? 

「よし、これでいい。馬車の周辺にいれば魔物はあなた達を傷つけることができないはずです。人間なら結界を通れますけど……できれば大人しく待っていてくださいね」

 ユラにトラウマが刻み込まれる前に帰って来なければ……。

「大丈夫だユラ。五分で帰ってくるよ」
「うん、いってらっしゃい!」
「はい? 走るとはいえ、一キロほど離れているなら往復で十五分近くかかるのでは……」

 御者さんの言葉を背にして目標に向けてヨーイ。
 イヤリングは外してあるし、本当なら一分もかからないかもしれないけど、馬を連れて帰ってくることを考えて、多めに見積もって五分くらいだろう。多分。

 はい、ドン!

 足元に青い電流がバチリと走り、次の瞬間……オレは電流で脚を強化して走り出す。そして、馬車が遠くなって行き、一度カーブしながら北を目指す……のだが。

「ああああ!? イヤリングつけるのまた忘れたああああ!? 耳痛い!! 感知範囲が広くなりすぎて無理無理無理ィ! 気持ち悪ィー! ぅ、うぉえっ……」

 妹が見えなくなった途端にこれだよ! 
 速攻イヤリングを耳につけて、またオレは走り出したのだった。

 馬? すぐ見つけて帰りました。
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