12 / 140
第12話:迫りくる本隊
しおりを挟む
夜の森を切り裂くように、角笛の音が何度も鳴り響いた。
重い地響きと共に、松明の灯りが幾筋も揺れて近づいてくる。
「……来る。さっきのは前哨にすぎなかったんだ」
俺の呟きに、リーネが険しい顔でうなずいた。
狼は低く唸り声をあげ、村人や盗賊までもが整然と並んでいる。
全員が俺の命令を待っていた。
◇
「数が……多すぎる」
物見台に上った盗賊の一人が、震える声を漏らした。
「……五十、いや……百以上いるぞ……!」
リーネの顔が青ざめる。
俺は奥歯を噛みしめた。
十数人の兵だけでも苦しかったのに、今度はその十倍以上――。
「悠斗……どうするの?」
リーネが俺を見上げて問う。
その瞳は恐怖を隠せないまま、それでも必死に俺を信じようとしていた。
◇
(……俺のスキルは、人にも魔物にも容赦なく発動する。
でも……百人すべてを一度に制御できるのか?)
思考が渦巻く。
もし制御がきかなくなれば、この村ごと暴走させてしまうかもしれない。
「……いや、やるしかない」
呟き、村人たちに向けて声を張った。
「全員、準備しろ! ――村を守るぞ!」
その一声で、膝をついていた人々が一斉に立ち上がる。
農具や石を手にし、盗賊すら剣を構えた。
◇
森の奥から、甲冑を鳴らす音が近づいてくる。
整然とした足並み、訓練された兵士たちの姿。
その中央には、豪奢な鎧を身につけた男が馬に跨っていた。
「……隊長、か」
鋭い眼光が闇を裂き、こちらを射抜く。
「この村に潜む裏切り者を捕えよ! 一人残らず!」
その号令と同時に、兵たちが雄叫びをあげて突進してきた。
◇
リーネが震える声で俺に囁く。
「悠斗……これはもう、避けられない」
「わかってる」
胸の奥でざわめきが大きくなる。
この力は、間違いなく異常だ。
けれど――今は使うしかない。
「全員――かかれ!」
俺の叫びが夜空に響いた。
次の瞬間、村人も盗賊も、一斉に動き出す。
百を超える軍勢と、異常な従属による軍隊との激突が始まろうとしていた。
◇
――そして、森の奥で角笛がもう一度鳴る。
その音色は、さらなる軍勢の到来を告げていた。
(本当に……ここで、生き残れるのか……!?)
焚火の赤い炎が風に揺れ、俺の胸の奥で恐怖と決意を同時に燃え上がらせていた。
_________________________________________
【後書き】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第12話では、ついに“本隊”と呼ばれる大軍勢が村に迫ってきました。
百を超える兵との戦い――従属スキルがどこまで通用するのかが試されます。
次回は、本格的な大規模戦闘。
悠斗がこの力を「守るため」に使えるのか、そしてリーネが見せる新たな決意とは――。
ぜひお楽しみに!
重い地響きと共に、松明の灯りが幾筋も揺れて近づいてくる。
「……来る。さっきのは前哨にすぎなかったんだ」
俺の呟きに、リーネが険しい顔でうなずいた。
狼は低く唸り声をあげ、村人や盗賊までもが整然と並んでいる。
全員が俺の命令を待っていた。
◇
「数が……多すぎる」
物見台に上った盗賊の一人が、震える声を漏らした。
「……五十、いや……百以上いるぞ……!」
リーネの顔が青ざめる。
俺は奥歯を噛みしめた。
十数人の兵だけでも苦しかったのに、今度はその十倍以上――。
「悠斗……どうするの?」
リーネが俺を見上げて問う。
その瞳は恐怖を隠せないまま、それでも必死に俺を信じようとしていた。
◇
(……俺のスキルは、人にも魔物にも容赦なく発動する。
でも……百人すべてを一度に制御できるのか?)
思考が渦巻く。
もし制御がきかなくなれば、この村ごと暴走させてしまうかもしれない。
「……いや、やるしかない」
呟き、村人たちに向けて声を張った。
「全員、準備しろ! ――村を守るぞ!」
その一声で、膝をついていた人々が一斉に立ち上がる。
農具や石を手にし、盗賊すら剣を構えた。
◇
森の奥から、甲冑を鳴らす音が近づいてくる。
整然とした足並み、訓練された兵士たちの姿。
その中央には、豪奢な鎧を身につけた男が馬に跨っていた。
「……隊長、か」
鋭い眼光が闇を裂き、こちらを射抜く。
「この村に潜む裏切り者を捕えよ! 一人残らず!」
その号令と同時に、兵たちが雄叫びをあげて突進してきた。
◇
リーネが震える声で俺に囁く。
「悠斗……これはもう、避けられない」
「わかってる」
胸の奥でざわめきが大きくなる。
この力は、間違いなく異常だ。
けれど――今は使うしかない。
「全員――かかれ!」
俺の叫びが夜空に響いた。
次の瞬間、村人も盗賊も、一斉に動き出す。
百を超える軍勢と、異常な従属による軍隊との激突が始まろうとしていた。
◇
――そして、森の奥で角笛がもう一度鳴る。
その音色は、さらなる軍勢の到来を告げていた。
(本当に……ここで、生き残れるのか……!?)
焚火の赤い炎が風に揺れ、俺の胸の奥で恐怖と決意を同時に燃え上がらせていた。
_________________________________________
【後書き】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第12話では、ついに“本隊”と呼ばれる大軍勢が村に迫ってきました。
百を超える兵との戦い――従属スキルがどこまで通用するのかが試されます。
次回は、本格的な大規模戦闘。
悠斗がこの力を「守るため」に使えるのか、そしてリーネが見せる新たな決意とは――。
ぜひお楽しみに!
35
あなたにおすすめの小説
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
国を追放された魔導士の俺。他国の王女から軍師になってくれと頼まれたから、伝説級の女暗殺者と女騎士を仲間にして国を救います。
グミ食べたい
ファンタジー
かつて「緑の公国」で英雄と称された若き魔導士キッド。しかし、権謀術数渦巻く宮廷の陰謀により、彼はすべてを奪われ、国を追放されることとなる。それから二年――彼は山奥に身を潜め、己の才を封じて静かに生きていた。
だが、その平穏は、一人の少女の訪れによって破られる。
「キッド様、どうかそのお力で我が国を救ってください!」
現れたのは、「紺の王国」の若き王女ルルー。迫りくる滅亡の危機に抗うため、彼女は最後の希望としてキッドを頼り、軍師としての助力を求めてきたのだった。
かつて忠誠を誓った国に裏切られ、すべてを失ったキッドは、王族や貴族の争いに関わることを拒む。しかし、何度断られても諦めず、必死に懇願するルルーの純粋な信念と覚悟が、彼の凍りついた時間を再び動かしていく。
――俺にはまだ、戦う理由があるのかもしれない。
やがてキッドは決意する。軍師として戦場に舞い戻り、知略と魔法を尽くして、この小さな王女を救うことを。
だが、「紺の王国」は周囲を強大な国家に囲まれた小国。隣国「紫の王国」は侵略の機をうかがい、かつてキッドを追放した「緑の公国」は彼を取り戻そうと画策する。そして、最大の脅威は、圧倒的な軍事力を誇る「黒の帝国」。その影はすでに、紺の王国の目前に迫っていた。
絶望的な状況の中、キッドはかつて敵として刃を交えた伝説の女暗殺者、共に戦った誇り高き女騎士、そして王女ルルーの力を借りて、立ち向かう。
兵力差は歴然、それでも彼は諦めない。知力と魔法を武器に、わずかな希望を手繰り寄せていく。
これは、戦場を駆ける軍師と、彼を支える三人の女性たちが織りなす壮絶な戦記。
覇権を争う群雄割拠の世界で、仲間と共に生き抜く物語。
命を賭けた戦いの果てに、キッドが選ぶ未来とは――?
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる