クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ

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第12話:迫りくる本隊

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夜の森を切り裂くように、角笛の音が何度も鳴り響いた。
重い地響きと共に、松明の灯りが幾筋も揺れて近づいてくる。

「……来る。さっきのは前哨にすぎなかったんだ」

俺の呟きに、リーネが険しい顔でうなずいた。
狼は低く唸り声をあげ、村人や盗賊までもが整然と並んでいる。
全員が俺の命令を待っていた。



「数が……多すぎる」
物見台に上った盗賊の一人が、震える声を漏らした。

「……五十、いや……百以上いるぞ……!」

リーネの顔が青ざめる。
俺は奥歯を噛みしめた。
十数人の兵だけでも苦しかったのに、今度はその十倍以上――。

「悠斗……どうするの?」

リーネが俺を見上げて問う。
その瞳は恐怖を隠せないまま、それでも必死に俺を信じようとしていた。



(……俺のスキルは、人にも魔物にも容赦なく発動する。
 でも……百人すべてを一度に制御できるのか?)

思考が渦巻く。
もし制御がきかなくなれば、この村ごと暴走させてしまうかもしれない。

「……いや、やるしかない」

呟き、村人たちに向けて声を張った。

「全員、準備しろ! ――村を守るぞ!」

その一声で、膝をついていた人々が一斉に立ち上がる。
農具や石を手にし、盗賊すら剣を構えた。



森の奥から、甲冑を鳴らす音が近づいてくる。
整然とした足並み、訓練された兵士たちの姿。
その中央には、豪奢な鎧を身につけた男が馬に跨っていた。

「……隊長、か」

鋭い眼光が闇を裂き、こちらを射抜く。

「この村に潜む裏切り者を捕えよ! 一人残らず!」

その号令と同時に、兵たちが雄叫びをあげて突進してきた。



リーネが震える声で俺に囁く。

「悠斗……これはもう、避けられない」

「わかってる」

胸の奥でざわめきが大きくなる。
この力は、間違いなく異常だ。
けれど――今は使うしかない。

「全員――かかれ!」

俺の叫びが夜空に響いた。
次の瞬間、村人も盗賊も、一斉に動き出す。
百を超える軍勢と、異常な従属による軍隊との激突が始まろうとしていた。



――そして、森の奥で角笛がもう一度鳴る。
その音色は、さらなる軍勢の到来を告げていた。

(本当に……ここで、生き残れるのか……!?)

焚火の赤い炎が風に揺れ、俺の胸の奥で恐怖と決意を同時に燃え上がらせていた。

_________________________________________
【後書き】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第12話では、ついに“本隊”と呼ばれる大軍勢が村に迫ってきました。
百を超える兵との戦い――従属スキルがどこまで通用するのかが試されます。

次回は、本格的な大規模戦闘。
悠斗がこの力を「守るため」に使えるのか、そしてリーネが見せる新たな決意とは――。
ぜひお楽しみに!
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