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第13話:勇者候補たちの影
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――場面は変わる。
血と土にまみれた村から遠く離れ、煌びやかな光に満ちる王城。
高い石壁に囲まれた広大な訓練場では、朝日を反射して剣が光を放ち、魔法の軌跡が空を焦がしていた。
◇
「はっ!」
鋭い掛け声とともに、剣が風を切る。
訓練場に集められた俺たち――クラスの仲間たちは、勇者候補として日々の鍛錬を課せられていた。
「佐伯くん、すごい! 一撃で木人を真っ二つに!」
「やっぱり剣聖スキルだよな……誰も勝てっこない」
歓声が飛び交い、王国の兵士たちも目を見張る。
その中心に立つのは、クラスのリーダー格・佐伯蓮司だった。
「ふっ……まだまだだ」
額の汗を拭い、剣を肩に担ぐ姿はまさに選ばれし勇者。
兵士たちの視線は尊敬と期待に満ちていた。
◇
一方で。
魔法訓練場では、姫野美咲が杖を構えていた。
炎が渦を巻き、轟音とともに巨大な火球が放たれる。
「うわっ、城壁まで届いたぞ!」
「火焔魔導士……女神の加護をこれほどまでに……」
兵士たちのざわめきを背に、美咲は肩で息をしながら杖を下ろした。
その横顔は、どこか晴れない影を抱えている。
(悠斗くん……)
胸の奥で名を呼ぶ。
水晶に“無能”と映され、追放された彼の姿。
あの日の出来事は、まだ瞼に焼き付いていた。
◇
「おい、みんな! 休憩だ」
佐伯蓮司の声が響く。
仲間たちは笑顔で談笑しながら水を飲み、互いの健闘を讃え合った。
「俺たち、すっかり勇者パーティーって感じだな」
「正直、転移してきた時は怖かったけど……なんとかなる気がしてきた!」
明るい空気の中、美咲だけは黙っていた。
(……本当に、なんとかなるのかな)
◇
彼女の心に残っているのは、悠斗の背中。
笑い声にかき消された「……悠斗くんは、きっと……」という自分の呟き。
あの時、誰も聞いていなかった。
それが今も悔しくて仕方なかった。
「……姫野、疲れてるのか?」
隣に座った蓮司が声をかける。
「え……あ、ううん。大丈夫」
「そうか。……あいつのことなら、気にするな」
蓮司は剣を膝に置き、淡々と続けた。
「高宮は無能だった。ここに残ってても、俺たちの足を引っ張るだけだったさ」
言葉は冷たく、確信に満ちていた。
だが、美咲の胸に残るざわめきは消えなかった。
(本当に……そうなの?)
◇
その夜。
寮の窓辺に座り、月を見上げる美咲の耳に、兵士たちの会話が届いた。
「聞いたか? また辺境の村が一つ、消息を絶ったらしい」
「魔物の群れか? いや……報告じゃ“村ごと服従したように静かに消えた”って……」
「服従……?」
美咲の心臓が跳ねる。
それが誰の仕業かなんて、証拠はどこにもない。
だが、なぜか悠斗の顔が脳裏に浮かんで離れなかった。
◇
「悠斗くん……あなたは、今どこにいるの……」
呟きは夜空に溶けていく。
城の中で勇者候補と持ち上げられるクラスメイトたち。
その外で、追放された彼が何をしているのか。
答えは誰にもわからない。
ただ、美咲の胸にだけは、消えない違和感と予感が宿っていた。
――やがて、それが再び二人の運命を交差させることになる。
_________________________________________
【後書き】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第13話では舞台を王城に移し、クラスメイト視点で勇者候補としての訓練と、追放された悠斗への思いを描きました。
特に姫野美咲の胸に残る「違和感」が、後の物語への布石となります。
次回は再び悠斗視点に戻り、村を包囲する本隊との大規模戦闘が始まります。
異常なスキルが数百を超える軍勢にどう通じるのか――。
ぜひお楽しみに!
血と土にまみれた村から遠く離れ、煌びやかな光に満ちる王城。
高い石壁に囲まれた広大な訓練場では、朝日を反射して剣が光を放ち、魔法の軌跡が空を焦がしていた。
◇
「はっ!」
鋭い掛け声とともに、剣が風を切る。
訓練場に集められた俺たち――クラスの仲間たちは、勇者候補として日々の鍛錬を課せられていた。
「佐伯くん、すごい! 一撃で木人を真っ二つに!」
「やっぱり剣聖スキルだよな……誰も勝てっこない」
歓声が飛び交い、王国の兵士たちも目を見張る。
その中心に立つのは、クラスのリーダー格・佐伯蓮司だった。
「ふっ……まだまだだ」
額の汗を拭い、剣を肩に担ぐ姿はまさに選ばれし勇者。
兵士たちの視線は尊敬と期待に満ちていた。
◇
一方で。
魔法訓練場では、姫野美咲が杖を構えていた。
炎が渦を巻き、轟音とともに巨大な火球が放たれる。
「うわっ、城壁まで届いたぞ!」
「火焔魔導士……女神の加護をこれほどまでに……」
兵士たちのざわめきを背に、美咲は肩で息をしながら杖を下ろした。
その横顔は、どこか晴れない影を抱えている。
(悠斗くん……)
胸の奥で名を呼ぶ。
水晶に“無能”と映され、追放された彼の姿。
あの日の出来事は、まだ瞼に焼き付いていた。
◇
「おい、みんな! 休憩だ」
佐伯蓮司の声が響く。
仲間たちは笑顔で談笑しながら水を飲み、互いの健闘を讃え合った。
「俺たち、すっかり勇者パーティーって感じだな」
「正直、転移してきた時は怖かったけど……なんとかなる気がしてきた!」
明るい空気の中、美咲だけは黙っていた。
(……本当に、なんとかなるのかな)
◇
彼女の心に残っているのは、悠斗の背中。
笑い声にかき消された「……悠斗くんは、きっと……」という自分の呟き。
あの時、誰も聞いていなかった。
それが今も悔しくて仕方なかった。
「……姫野、疲れてるのか?」
隣に座った蓮司が声をかける。
「え……あ、ううん。大丈夫」
「そうか。……あいつのことなら、気にするな」
蓮司は剣を膝に置き、淡々と続けた。
「高宮は無能だった。ここに残ってても、俺たちの足を引っ張るだけだったさ」
言葉は冷たく、確信に満ちていた。
だが、美咲の胸に残るざわめきは消えなかった。
(本当に……そうなの?)
◇
その夜。
寮の窓辺に座り、月を見上げる美咲の耳に、兵士たちの会話が届いた。
「聞いたか? また辺境の村が一つ、消息を絶ったらしい」
「魔物の群れか? いや……報告じゃ“村ごと服従したように静かに消えた”って……」
「服従……?」
美咲の心臓が跳ねる。
それが誰の仕業かなんて、証拠はどこにもない。
だが、なぜか悠斗の顔が脳裏に浮かんで離れなかった。
◇
「悠斗くん……あなたは、今どこにいるの……」
呟きは夜空に溶けていく。
城の中で勇者候補と持ち上げられるクラスメイトたち。
その外で、追放された彼が何をしているのか。
答えは誰にもわからない。
ただ、美咲の胸にだけは、消えない違和感と予感が宿っていた。
――やがて、それが再び二人の運命を交差させることになる。
_________________________________________
【後書き】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第13話では舞台を王城に移し、クラスメイト視点で勇者候補としての訓練と、追放された悠斗への思いを描きました。
特に姫野美咲の胸に残る「違和感」が、後の物語への布石となります。
次回は再び悠斗視点に戻り、村を包囲する本隊との大規模戦闘が始まります。
異常なスキルが数百を超える軍勢にどう通じるのか――。
ぜひお楽しみに!
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