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第2章:王都に蠢く影、交錯する運命
第37話:暴走する力
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◇
月明かりの下を歩き続け、やがて森の中へと足を踏み入れた。
湿った土の匂いが鼻を刺し、枝葉の影がゆらゆらと揺れている。
「……静かすぎるな」
俺は耳を澄ませながら呟いた。
次の瞬間、茂みを割って数匹の魔獣が飛び出す。
狼に似た魔物――牙狼だ。
「来るぞ!」
リーネが詠唱に入る。
俺も剣を抜き、構えた。
◇
牙狼の群れが一斉に飛びかかる。
俺は剣で一匹を切り払い、リーネの氷魔法が二匹を足止めする。
だが数は多く、次々と襲いかかってくる。
「チッ……!」
その時だった。
胸の奥が、熱を帯びるように脈打った。
頭の中に、あの声が響く。
――『命令を確認――従属開始』
「なっ……勝手に!?」
意識していないのに、使役スキルが発動していた。
視界に映る牙狼たちの瞳が赤く染まり、動きを止める。
◇
「悠斗……これ……!」
リーネの声に振り向くと――
彼女の瞳までもが赤く染まりかけていた。
「……やめろっ!!」
必死にスキルを押さえ込もうとするが、力は暴走を続ける。
森の鳥が枝から落ち、虫までもが地に伏し、まるで世界が支配下に沈んでいくようだった。
「っ……あぁぁぁ!」
俺は頭を抱え、地面に膝をついた。
◇
「悠斗!」
リーネが駆け寄り、その肩を強く抱いた。
温もりと共に、彼女の声が耳に届く。
「あなたはあなた! この力に呑まれないで!」
その声に、胸の奥で暴れる衝動がわずかに鎮まる。
必死に息を吐き、握った拳を地面に叩きつけた。
――光が弾け、赤い瞳が霧散する。
◇
気がつけば、牙狼たちは逃げ去り、森は再び静寂を取り戻していた。
俺の全身は汗で濡れ、息が荒い。
「……っ、はぁ……はぁ……」
「悠斗、大丈夫?」
リーネが覗き込み、不安そうに眉を寄せている。
「……ああ。……だが、今のは」
自分の手を見つめる。
意図せず暴走した力――
このままでは、誰かを巻き込んでしまう。
◇
(……王都どころか、仲間すら危険に晒す力か)
恐怖と嫌悪が胸に広がる。
だが同時に、抗うしかないと強く思った。
「……制御しねぇと。俺自身が終わる」
夜風が木々を揺らす中、俺は固く誓った。
◇
__________________
後書き
ここまで読んでくださりありがとうございます!
第37話では「使役スキルの暴走」を描きました。
これまで制御できていた力が意図せず暴走し、リーネまでも巻き込みかける展開で、悠斗の脅威が改めて浮き彫りになります。
次回は、この暴走の余波がどう周囲に影響を与えるのか。
そして王国がさらにどう動くのかが描かれていきます。
ぜひご期待ください!
月明かりの下を歩き続け、やがて森の中へと足を踏み入れた。
湿った土の匂いが鼻を刺し、枝葉の影がゆらゆらと揺れている。
「……静かすぎるな」
俺は耳を澄ませながら呟いた。
次の瞬間、茂みを割って数匹の魔獣が飛び出す。
狼に似た魔物――牙狼だ。
「来るぞ!」
リーネが詠唱に入る。
俺も剣を抜き、構えた。
◇
牙狼の群れが一斉に飛びかかる。
俺は剣で一匹を切り払い、リーネの氷魔法が二匹を足止めする。
だが数は多く、次々と襲いかかってくる。
「チッ……!」
その時だった。
胸の奥が、熱を帯びるように脈打った。
頭の中に、あの声が響く。
――『命令を確認――従属開始』
「なっ……勝手に!?」
意識していないのに、使役スキルが発動していた。
視界に映る牙狼たちの瞳が赤く染まり、動きを止める。
◇
「悠斗……これ……!」
リーネの声に振り向くと――
彼女の瞳までもが赤く染まりかけていた。
「……やめろっ!!」
必死にスキルを押さえ込もうとするが、力は暴走を続ける。
森の鳥が枝から落ち、虫までもが地に伏し、まるで世界が支配下に沈んでいくようだった。
「っ……あぁぁぁ!」
俺は頭を抱え、地面に膝をついた。
◇
「悠斗!」
リーネが駆け寄り、その肩を強く抱いた。
温もりと共に、彼女の声が耳に届く。
「あなたはあなた! この力に呑まれないで!」
その声に、胸の奥で暴れる衝動がわずかに鎮まる。
必死に息を吐き、握った拳を地面に叩きつけた。
――光が弾け、赤い瞳が霧散する。
◇
気がつけば、牙狼たちは逃げ去り、森は再び静寂を取り戻していた。
俺の全身は汗で濡れ、息が荒い。
「……っ、はぁ……はぁ……」
「悠斗、大丈夫?」
リーネが覗き込み、不安そうに眉を寄せている。
「……ああ。……だが、今のは」
自分の手を見つめる。
意図せず暴走した力――
このままでは、誰かを巻き込んでしまう。
◇
(……王都どころか、仲間すら危険に晒す力か)
恐怖と嫌悪が胸に広がる。
だが同時に、抗うしかないと強く思った。
「……制御しねぇと。俺自身が終わる」
夜風が木々を揺らす中、俺は固く誓った。
◇
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後書き
ここまで読んでくださりありがとうございます!
第37話では「使役スキルの暴走」を描きました。
これまで制御できていた力が意図せず暴走し、リーネまでも巻き込みかける展開で、悠斗の脅威が改めて浮き彫りになります。
次回は、この暴走の余波がどう周囲に影響を与えるのか。
そして王国がさらにどう動くのかが描かれていきます。
ぜひご期待ください!
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