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第2章:王都に蠢く影、交錯する運命
第38話:揺らぐ心と迫る報せ
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◇
夜が明けても、胸のざわめきは消えなかった。
自分の意思に反して発動した“使役スキル”。
あのとき、リーネまでもが巻き込まれかけた――それが何より恐ろしかった。
「……悠斗、顔色が悪い」
宿を出た道の途中で、リーネが俺の横顔を覗き込んだ。
その瞳には心配が色濃く浮かんでいる。
「大丈夫だ」
「嘘」
短い言葉が、鋭く胸に刺さる。
誤魔化すことはできなかった。
「……昨日のこと、まだ引きずってるんだろう?」
「……」
リーネは小さく微笑んだ。
「怖かったのは、私も同じ。
でも……あなたが抗おうとしたことも、ちゃんと見てた」
彼女の言葉は、心に重く沈んだ石を少しだけ軽くしてくれた。
◇
そのとき。
「……あの、旅の方」
振り返ると、村の少年が駆け寄ってきた。
胸を上下させ、必死に声を絞り出す。
「さっき……見知らぬ兵士が村に……!
“異邦の者を探している”って……!」
「……もう嗅ぎつけられたか」
リーネが険しい顔をする。
少年の怯えた表情を見て、俺は剣の柄に手を伸ばした。
「村を巻き込むわけにはいかねぇ。……すぐに出る」
◇
同じ頃、王都。
報告を受けた騎士団の執務室では、重苦しい空気が漂っていた。
机上には地図が広げられ、悠斗の行動を示す赤い印が刻まれている。
「村の者が確かに目撃したそうです」
「やはり……従属スキルの暴走も確認された。危険度は以前より増している」
騎士団長が唸るように言う。
「次の部隊は二十名規模。……必ず捕らえろ」
その命が静かに下された。
◇
再び村外れの道。
リーネが歩きながら小声で言った。
「悠斗……」
「なんだ」
「もし、また暴走したら。……そのときは、私が止める」
「……っ」
俺は言葉を失った。
彼女の瞳は真っ直ぐで、揺るぎがない。
「だから、恐れないで。……前を見て」
胸の奥の不安が、少しだけ和らいだ気がした。
◇
――だが。
その影はすでに近づいていた。
◇
村を離れ、森の小道を進む。
木漏れ日が差し込む中でも、背後から迫る気配を感じていた。
「……つけられているな」
「やっぱり」
リーネの表情が引き締まる。
俺は足を止め、耳を澄ませた。
風に混じって、甲冑が擦れる微かな音。
規律の整った足取り――王国の兵士に間違いない。
「数は……十を超えるな」
「悠斗、ここで戦う?」
「いや……まだ村から近すぎる」
俺は剣の柄に触れながら、進む方向を変えた。
森の奥、開けた岩場へ。
そこなら、村を巻き込まずに済む。
◇
「追い詰めろ!」
背後から怒号が飛ぶ。
兵士たちが一斉に姿を現した。
陽光を反射する鎧、掲げられた槍。
逃走ではなく、完全な捕縛を目的とした布陣だった。
「高宮 悠斗! 大人しく投降しろ!」
隊長が叫ぶ。
その眼差しは恐怖と使命感が入り混じったもの。
俺は短く吐き捨てた。
「投降するつもりはねぇよ」
◇
兵士たちが槍を構え、一斉に間合いを詰める。
リーネが詠唱に入るのを確認し、俺も剣を抜いた。
その瞬間――
胸の奥が、再び熱を帯びる。
「……っ」
昨夜の悪夢が脳裏をよぎる。
無意識に暴走しかけた力。
だが今は、負けるわけにはいかない。
「悠斗!」
リーネの声が飛ぶ。
俺はその声を合図に、剣を強く握り直した。
「……行くぞ!」
兵士たちの影が迫る中、俺は前へ踏み出した。
◇
__________________
後書き(続き)
ここまで読んでくださってありがとうございます!
第38話の続きでは「追跡部隊との直接対峙」までを描きました。
悠斗は再び暴走の兆候を覚えながらも、逃げずに正面から立ち向かう決意を固めます。
次回は、ついに王国の兵士たちとの本格的な戦闘。
使役スキルの暴走が再び起こるのか、それとも制御できるのか――。
緊迫の局面に入っていきます。
夜が明けても、胸のざわめきは消えなかった。
自分の意思に反して発動した“使役スキル”。
あのとき、リーネまでもが巻き込まれかけた――それが何より恐ろしかった。
「……悠斗、顔色が悪い」
宿を出た道の途中で、リーネが俺の横顔を覗き込んだ。
その瞳には心配が色濃く浮かんでいる。
「大丈夫だ」
「嘘」
短い言葉が、鋭く胸に刺さる。
誤魔化すことはできなかった。
「……昨日のこと、まだ引きずってるんだろう?」
「……」
リーネは小さく微笑んだ。
「怖かったのは、私も同じ。
でも……あなたが抗おうとしたことも、ちゃんと見てた」
彼女の言葉は、心に重く沈んだ石を少しだけ軽くしてくれた。
◇
そのとき。
「……あの、旅の方」
振り返ると、村の少年が駆け寄ってきた。
胸を上下させ、必死に声を絞り出す。
「さっき……見知らぬ兵士が村に……!
“異邦の者を探している”って……!」
「……もう嗅ぎつけられたか」
リーネが険しい顔をする。
少年の怯えた表情を見て、俺は剣の柄に手を伸ばした。
「村を巻き込むわけにはいかねぇ。……すぐに出る」
◇
同じ頃、王都。
報告を受けた騎士団の執務室では、重苦しい空気が漂っていた。
机上には地図が広げられ、悠斗の行動を示す赤い印が刻まれている。
「村の者が確かに目撃したそうです」
「やはり……従属スキルの暴走も確認された。危険度は以前より増している」
騎士団長が唸るように言う。
「次の部隊は二十名規模。……必ず捕らえろ」
その命が静かに下された。
◇
再び村外れの道。
リーネが歩きながら小声で言った。
「悠斗……」
「なんだ」
「もし、また暴走したら。……そのときは、私が止める」
「……っ」
俺は言葉を失った。
彼女の瞳は真っ直ぐで、揺るぎがない。
「だから、恐れないで。……前を見て」
胸の奥の不安が、少しだけ和らいだ気がした。
◇
――だが。
その影はすでに近づいていた。
◇
村を離れ、森の小道を進む。
木漏れ日が差し込む中でも、背後から迫る気配を感じていた。
「……つけられているな」
「やっぱり」
リーネの表情が引き締まる。
俺は足を止め、耳を澄ませた。
風に混じって、甲冑が擦れる微かな音。
規律の整った足取り――王国の兵士に間違いない。
「数は……十を超えるな」
「悠斗、ここで戦う?」
「いや……まだ村から近すぎる」
俺は剣の柄に触れながら、進む方向を変えた。
森の奥、開けた岩場へ。
そこなら、村を巻き込まずに済む。
◇
「追い詰めろ!」
背後から怒号が飛ぶ。
兵士たちが一斉に姿を現した。
陽光を反射する鎧、掲げられた槍。
逃走ではなく、完全な捕縛を目的とした布陣だった。
「高宮 悠斗! 大人しく投降しろ!」
隊長が叫ぶ。
その眼差しは恐怖と使命感が入り混じったもの。
俺は短く吐き捨てた。
「投降するつもりはねぇよ」
◇
兵士たちが槍を構え、一斉に間合いを詰める。
リーネが詠唱に入るのを確認し、俺も剣を抜いた。
その瞬間――
胸の奥が、再び熱を帯びる。
「……っ」
昨夜の悪夢が脳裏をよぎる。
無意識に暴走しかけた力。
だが今は、負けるわけにはいかない。
「悠斗!」
リーネの声が飛ぶ。
俺はその声を合図に、剣を強く握り直した。
「……行くぞ!」
兵士たちの影が迫る中、俺は前へ踏み出した。
◇
__________________
後書き(続き)
ここまで読んでくださってありがとうございます!
第38話の続きでは「追跡部隊との直接対峙」までを描きました。
悠斗は再び暴走の兆候を覚えながらも、逃げずに正面から立ち向かう決意を固めます。
次回は、ついに王国の兵士たちとの本格的な戦闘。
使役スキルの暴走が再び起こるのか、それとも制御できるのか――。
緊迫の局面に入っていきます。
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