クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ

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第4章:奈落の影、揺るがぬ誓い

第140話:執行官、降臨

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夕暮れが、里の空を赤く染めていた。
穏やかなはずの風が、どこかざわめいている。

リーネが眉をひそめた。
「……魔力の流れが変です。空気そのものが震えている」

「また襲撃か?」
俺は剣を手に立ち上がる。

「いいえ……これは、“一つの存在”によるもの。
この圧……間違いありません。――“執行官”です」

その瞬間、地面が震えた。



轟音。
空が裂け、紫の稲妻が地に落ちる。
その中心に、ひとりの男が立っていた。

黒い外套。
銀灰色の髪を風に揺らし、仮面の下から覗く瞳は、氷より冷たい。

「……やはり、ここにいたか」

その声は静かで、だが絶対的な威圧を持っていた。

リーネが小さく息を呑む。
「執行官ゼルガード……王国最強の使役者」

「随分と待たせたな、高宮悠斗」



俺は一歩前に出る。
「……わざわざ顔を見せに来るなんて、律儀なもんだな」

「貴様の“覚醒”を見届けねばならん。
それが我々“影誓”の責務だ」

ゼルガードはゆっくりと手を上げる。
空気が歪み、影が形を変える。

その瞬間――十体の黒い“影霊《えいれい》”が地面から浮かび上がった。

「……またかよ」
俺は構えを取る。

「お前の力が“共鳴”に達した以上、実験段階は終わりだ。
ここから先は――淘汰だ」



「悠斗くん、下がって!」
美咲が防御結界を展開し、リーネが詠唱を開始する。

だが、ゼルガードの影霊はただの兵ではなかった。
ひとつひとつが、まるで意思を持つように動く。

「“人の恐怖”を糧に進化した影だ。
お前が怯えれば怯えるほど、こいつらは強くなる」

「なら――怖がらなけりゃいいだけだ!」

俺は前に出た。
剣を構え、意識を集中させる。
胸の奥で光が脈動する。

「《共鳴契約|きょうめいけいやく》――解放」



金の光が爆ぜ、三人の魔力が同調した。
地面が鳴動し、剣の刃が白く輝く。

ゼルガードの瞳が細まった。
「……なるほど。確かに、“原初”の片鱗がある」

影霊たちが一斉に襲いかかる。
俺は剣を振り抜き、光の刃で切り裂いた。
黒煙が弾け、光と闇がぶつかる。

「リーネ! 氷壁を!」「了解!」
氷の盾が立ち上がり、爆発を防ぐ。
その合間に、美咲の回復魔法が流れ込む。

「これが……共鳴の力……!」
リーネが息を呑む。



ゼルガードは微動だにせず、その光景を眺めていた。
「面白い。だが――浅い」

その言葉と同時に、影が地面から腕のように伸びた。
俺の足を掴み、引きずり込もうとする。

「っ……!」
「悠斗くん!」

リーネが詠唱を試みるが、ゼルガードの指先が動いた瞬間――
周囲の魔力が一瞬で凍りつく。

「……魔導封鎖だと!?」
リーネが顔を青ざめさせた。

「私の前で魔法を使えると思うな。
この場は“影誓結界”の中――お前たちの魔力は、全て私の掌中にある」



空気が重く、息が詰まる。
俺は剣を握り直した。

「……お前は、全部支配しないと気が済まねぇのか」

「支配こそ秩序だ。
“心を繋ぐ”などという曖昧な理想は、いつか破滅を招く」

「それでも――俺は信じる!」

胸の奥から、光が再び溢れた。
影に飲まれかけた足元が、白い炎に包まれ、解き放たれる。

ゼルガードの瞳が初めて、わずかに揺れた。

「……その光、まさか」

「これは支配じゃねぇ。“共鳴”だ!」

俺は叫び、全力で剣を振り上げた。
金色の閃光が空を裂き、影誓結界が一瞬だけ軋む。



リーネと美咲が同時に息を吹き返す。
「今の……結界が揺らいだ?」
「悠斗くん……やっぱり、あなたの力は……!」

「面白い」
ゼルガードがゆっくりと笑った。
「やはり、ガルドの血脈は本物だ。
次は――全力で行こうか」

その言葉と共に、彼の外套が裂けた。
背中から黒い翼のような魔力が噴き出す。
大地が震え、空気が焦げる。

「ッ……!? こいつ、化け物かよ!」



「悠斗くん!」
美咲が叫び、リーネが支援魔法を放つ。
だがゼルガードの影翼が、すべてを弾き飛ばした。

「逃げることは許さぬ」

仮面の奥の声は、まるで死神の宣告のように冷たい。

「お前をここで屈服させる。それが“原初”を再現する唯一の道だ」

俺は剣を構え直し、目を細めた。

「いいぜ。来いよ、“執行官”」

風が止まり、空気が震えた。
そして、光と闇が再び衝突する――。



__________________

後書き

ここまで読んでくださりありがとうございます!

第140話ではついに宿敵・執行官ゼルガードが悠斗たちの前に降臨。

王国最強の使役者としての圧倒的な登場

“支配”と“共鳴”という真逆の思想の対立

《影誓結界》による魔導封鎖

悠斗の光がそれを打ち破り、初の真正面対峙へ

いよいよ第141話は「原初の激突」。
ゼルガードと悠斗の“使役の極致”が正面からぶつかる、
シリーズ屈指の決戦回となります。
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