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しおりを挟む和哉が住むことになった高級マンションには、最上階にプールがあった。
そこはマンションの住人だけが使える二十五メートルのプールで、三つのレーンを有していた。
大きな窓からは、贅沢な街の夜景が煌いて見えている。
金曜日の十時頃、プールには人影があった。
一人の中年男性がプールを上がる。
彼がひたひたと濡れた足音を響かせながらシャワールームへ姿を消したことを確認すると、端のレーンにいた涼介は、すかさず水に潜り、反対レーンまで泳いだ。
足をプールの底について水面に顔を出した先には、プールサイドに背をもたれる和哉がいる。
涼介は、ゴーグルと共にスイムキャップを取って頭を振る。
スイムキャップをかぶった額までゴーグルを上げていた和哉は、涼介の腰に腕を回し、顔を近づけて小声で言った。
「……やっと二人きりになれたね」
「今日は先客がいましたからね」
涼介も和哉を抱き返すと、どちらからともなく、二人は唇を重ねる。
「これから誰も来なければ、ここは俺達専用のプールですね」
「そうだね。……蓮見くん」
和哉の手は、黒いボックスタイプの水着の上から涼介の股間を撫でる。
「……和哉さん、なにがしたいんですか?」
涼介は、和哉の願望をわかったうえで、あえて意地悪く訊ねる。
「蓮見くん、プールでしてみたいって言っていたよね。僕も、してみたい……」
「旅行に行きたいっていう話をしていたときですね。あれはプライベートプールのことでしたが……、和哉さんから誘われたら、俺には断る理由がないですよ」
涼介は、和哉の頬を指先で撫でる。
「こんなところでするなんて、ドキドキしますね……」
涼介は和哉のスイムキャップとゴーグルを外し、自分のものと合わせてプールサイドへと置いた。
和哉のしっとりと濡れた髪を整え、涼介の大きな手は和哉の背後へと移る。
「水のなかなら、なにをしても外からは見えないかな……」
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