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2,黄色いりんごの樹の下で
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黄色いりんごの実をつけた木々の隙間から、青空が覗いていた。
「んー! 気持ちいいなぁ」
ソラは、歩きながら両腕を上へと伸ばして深呼吸をした。
森はそよ風が通り抜け、さわやかな果実の香りに包まれている。
時折小鳥がさえずり、足元にはすみれに似たピンクや白の花が顔を覗かせていた。
「この森に連れて来てくれたのは初めてだね。花がたくさん咲いていてきれい」
「森は広いからね。花が咲くエリアも、動物達が集まるエリアもあるよ」
ロワールと並んで歩きながら、ソラはちらりと彼を横目で見た。
ソラはロワールと過ごすうちに、自分が自然体でいられることに気づいていた。
ロワールといるときは、無理に話を盛り上げようとする必要はなかったし、気に入られようとして自分をよく見せることもなかった。
ロワールがもしも人間だったら……、そこまで考えてしまう自分を、ソラは密かにたしなめた。
「ソラ、もうすぐ着くよ」
ロワールに案内されて辿り着いた先には、高さが三十メートルはあると思われる巨樹があった。
実はつけておらず、青々とした葉をたっぷりと茂らせている。
ロワールは、その樹を見上げて言った。
「この樹が、僕が生まれた樹なんだ」
「えっ、……ああ、そうか。ロワールは樹木の妖精なんだよね」
ソラは、ロワールに出会った日にされた自己紹介を思い出した。
「人間の幸せがミデルにある樹を満たして、そこから妖精が生まれ、妖精は人間界へ行く。そういう循環になっている」
人間と同じ姿をしているロワールを見ていると忘れてしまいそうになるが、妖精には妖精の役目があって暮らしていた。
「不思議だね。人間の幸せがあったから、ロワールにも会えたんだ……」
神秘的なものであるように巨木を見上げるソラを、ロワールは愛しそうに見つめた。
ソラは、はたと気づいて言った。
「そういえば、他の妖精はどこにいるの? 私がここに来てから、遠くを歩いていた人を一人見ただけだった。妖精は、人間界で人間に奉仕することが仕事なんだよね。でも、今は人間界に行ける妖精は少ないんでしょう?」
ソラの疑問に、ロワールは丁寧に答える。
「楽園には主に、半人前の妖精や、その妖精を育てる者、人間界から戻ってきて英気を養っている者がいる。今はお休み中の妖精が多いね、僕もそうだし。タフな妖精は、すぐに人間界に戻る者もいるんだけどね。ほかには、ミデルの暮らしを管理する者もいる。トンネル工事をしているのもその妖精達だ」
「見かけないだけでたくさんいるんだね」
ソラは感心して言った。
「んー! 気持ちいいなぁ」
ソラは、歩きながら両腕を上へと伸ばして深呼吸をした。
森はそよ風が通り抜け、さわやかな果実の香りに包まれている。
時折小鳥がさえずり、足元にはすみれに似たピンクや白の花が顔を覗かせていた。
「この森に連れて来てくれたのは初めてだね。花がたくさん咲いていてきれい」
「森は広いからね。花が咲くエリアも、動物達が集まるエリアもあるよ」
ロワールと並んで歩きながら、ソラはちらりと彼を横目で見た。
ソラはロワールと過ごすうちに、自分が自然体でいられることに気づいていた。
ロワールといるときは、無理に話を盛り上げようとする必要はなかったし、気に入られようとして自分をよく見せることもなかった。
ロワールがもしも人間だったら……、そこまで考えてしまう自分を、ソラは密かにたしなめた。
「ソラ、もうすぐ着くよ」
ロワールに案内されて辿り着いた先には、高さが三十メートルはあると思われる巨樹があった。
実はつけておらず、青々とした葉をたっぷりと茂らせている。
ロワールは、その樹を見上げて言った。
「この樹が、僕が生まれた樹なんだ」
「えっ、……ああ、そうか。ロワールは樹木の妖精なんだよね」
ソラは、ロワールに出会った日にされた自己紹介を思い出した。
「人間の幸せがミデルにある樹を満たして、そこから妖精が生まれ、妖精は人間界へ行く。そういう循環になっている」
人間と同じ姿をしているロワールを見ていると忘れてしまいそうになるが、妖精には妖精の役目があって暮らしていた。
「不思議だね。人間の幸せがあったから、ロワールにも会えたんだ……」
神秘的なものであるように巨木を見上げるソラを、ロワールは愛しそうに見つめた。
ソラは、はたと気づいて言った。
「そういえば、他の妖精はどこにいるの? 私がここに来てから、遠くを歩いていた人を一人見ただけだった。妖精は、人間界で人間に奉仕することが仕事なんだよね。でも、今は人間界に行ける妖精は少ないんでしょう?」
ソラの疑問に、ロワールは丁寧に答える。
「楽園には主に、半人前の妖精や、その妖精を育てる者、人間界から戻ってきて英気を養っている者がいる。今はお休み中の妖精が多いね、僕もそうだし。タフな妖精は、すぐに人間界に戻る者もいるんだけどね。ほかには、ミデルの暮らしを管理する者もいる。トンネル工事をしているのもその妖精達だ」
「見かけないだけでたくさんいるんだね」
ソラは感心して言った。
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