聖夜の光りシリーズ

貴船きよの

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聖夜の光り

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 食事を終えると、二人は一緒に入浴を済ませた。
 悠志が郁人のあとに部屋へと戻ると、部屋は再び暗くなっていた。
 そして、窓際で揺れる星々だけが、夜にきらめく権利を与えられていた。
 悠志はその星のひとつを手にし、言った。
「……また点けたのか」
「雰囲気出るでしょ?」
「ああ。もう一度くらい見たいと思っていたところ」
 悠志はそう言って星から手を離すと、郁人が毛布の上に足を伸ばして座っているベッドに腰掛けた。
「……眠くなった」
 郁人に覆い被さるように抱きついて、悠志は体をもたれかけた。
「お酒飲んだからでしょ」
「だから一人で飲むのはいやだったんだ。飲むペースが上がる……」
「そんなこと言ったって、俺飲めないもん。悠志もジュースにすればよかったのに」
 悠志は、顔を上げて郁人を小さく睨みつけた。
「子ども舌」
「酔っ払いに言われたくない」
 二人は小言をぶつけ合ったかと思うと、次の瞬間には笑い合っていた。
 郁人は、悠志の黒髪を撫でながら訊ねる。
「このまま、寝る?」
「……寝ない」
 悠志は体を起こすと、ゆっくりと郁人にまたがる。
「……たくさんキスしたら、おまえにも酔いが移るかも」
 酔いが回っているせいか、悠志は楽しそうに笑みを浮かべ、郁人の首に腕を回した。
 しかし、郁人は余裕を見せて言った。
「悠志経由なら、俺は酔わないよ」
「……どうして?」
 郁人は、真剣な目をして、囁くように言った。
「お酒に酔う前に、悠志に酔っているから……」
 そう言って、郁人は悠志にそっと唇を重ねた。
「ん……っ」
「好きだよ、悠志……」
 角度を変えながら食むようにキスを交わし、悠志が薄くあけた唇の隙間から郁人の舌が滑り込むと、悠志の舌が絡めとられる。
 ムードが作られているせいか、悠志は、郁人のペースに吞まれてしまいそうだった。
 郁人の唇がちゅっと音を立てて離れると、悠志は強がって言った。
「おまえに、クサイ台詞は似合わないぞ……」
「俺だって、悠志の前ではかっこつけたいの」
 郁人は、キスをしながら、悠志のTシャツのなかへと手を忍ばせる。
「ん……っ」
「悠志を、全部食べたい……」
 郁人の手は悠志の乳首に辿り着き、もったいぶって、指先で触れるか触れないかの刺激を与える。
「んん……っ、人を、食べ物扱いするな……っ」
「その睨みつけている顔がどんどんとろけていくところ……、早く見たいな」
 郁人の目が本気で自分を見つめていることに気づき、悠志は、じわじわと頬を赤く染めた。
「薄暗くても、赤くなっているのがわかるよ」
「……酔っているだけだ」
「そう?」
 郁人はそれ以上は追及せず、悠志のTシャツを捲って脱がせる。
 そして、露わになった乳首に舌を這わせ、ついばむように愛撫した。
「ああっ、……や、あ……っ」
「……もう硬くなってきた、おいしそう」
「んっ、ばか……っ」
「……反対側もしてあげるよ」
「あっ! あぁ……、ん……っ」
 反対側に手を滑らせ、平らな胸の上で先端を尖らせている乳首を見つけると、郁人はすでに口に含んでいる乳首を舐めしゃぶりながら、指先でくりくりとこねた。
「ああ……っ、んんっ、いく、と……、は、あぁ……っ」
 時折体をぴくんと跳ねさせながら、悠志の体からはだんだんと力が抜けていく。
 郁人は、悠志の滑らかな肌を掌でさすり、キスを落とし、ふと、自分の背後で明るむ光が、悠志にまで届いていることに気づいた。
「……イルミネーションに悠志の体が照らされて、いやらしいね。俺が舐めた乳首が、濡れて光っている」
 穏やかな黄金色の光を受ける悠志の肉体は、標準体型でありながら、妙な艶かしさを帯びて見えた。
「じろじろ見るなよ……、おまえも脱げ」
 そう言って、悠志は半ば強引に、郁人のスウェットシャツを脱がせた。
 程よく鍛えられた郁人の上半身は、さっきまで風呂で見ていたにも関わらず、悠志の目にもたしかに、やわらかな光を受ける様が妖艶に映った。
「ふふっ。悠志、こっちもいじってあげる。膝立ちになれる?」
 恥じらう悠志を可愛く思いながら、郁人は、悠志のスウェットパンツの上から臀部をまさぐる。
「うん……」
 悠志は郁人の肩に手を置き、言われたとおりに膝立ちになった。
 すると、郁人は、悠志のスウェットパンツの前が盛り上がっていることに気づいて、ふと笑みをこぼす。
「酔っているのに、ちゃんと勃つんだね」
「そんなには、飲んでいない……」
 郁人が悠志のスウェットパンツと下着を一緒に下げると、形のいい尻と、勃ち始めた悠志のペニスが姿を現した。
 郁人の手は悠志の臀部に回り、尻の穴へと、そっと指を二本差し入れる。
「あっ……」
「お風呂に入ったばかりだから、余計になかがあったかい……」
「んんっ、あっ……、あ……っ」
 郁人の指が動くたびに、悠志の閉ざされていた内壁が押しひらかれる。
「あ……、また、……ぁあっ! あ……っ」
 郁人は再び悠志の胸へと吸いつき、悠志は乳首と秘部に同時に与えられる刺激に、こみ上げてくる甘い昂ぶりを抑えられない。
「あっ、あ……、は……っ」
 郁人の目も、ぐんぐんと大きさを増す悠志のペニスに気づいていた。
「悠志は、お尻をいじられるのが好きだね。……そんなに好きなら、自分で腰を動かしてみて?」
「や、やだ……。腰、動かしたら、おまえの指がもっと入るだろ……」
「うん。それが見たいの」
 郁人の笑顔を見てしまうと反論しづらく、悠志は渋々、腰を前後に動かし始める。
「ん……、あぁ……、あ……っ」
 それは予想通りの快感を悠志に与え、指が欲しい奥まで届かないもどかしさと共に、悠志を焦らす。
 そして、いつの間にか、悠志のペニスは郁人の体をこすり上げていた。
「あ……、あぁ……っ、郁人……っ」
 郁人の指を締めつけ、ペニスからはカウパーを垂らして郁人の肌を濡らす悠志には、もはや抵抗する気は失せている。
 そのまんざらでもない悠志の表情を、郁人は静かに興奮しながら見つめていた。
「悠志……、俺の指でオナニーしているみたいだね」
「おまえが、させているんだろ……っ。風呂でも、散々いじったくせに……っ」
「そりゃあ、準備は大事だからね。……お風呂ではお預けになったぶん、早く抱きたいな」
「あっ……」
 郁人は悠志の尻から指を抜くと、今度は悠志を抱きかかえ、ゆっくりとベッドに寝かせた。
 背中からベッドに着地した悠志は、ふと、スウェットパンツを穿いたままの郁人の下半身が視界に入り、申し訳なさそうに呟く。
「おまえの、全然触っていなかったな……」
「いいの。俺、もう我慢できないし」
 悠志のスウェットパンツと下着を一緒に脱がせ、郁人は自身も下半身の着衣を脱ぎ捨てる。
 星から放たれる明かりを逆光で受けた郁人の肉体は、またもや悠志をどきりとさせた。
 前戯を施すことのできなかった彼のペニスも、しっかりと硬くなっている。
 郁人はサイドテーブルから取ったローションを指にまとわせ、悠志のひくつく尻の穴へと挿入した。
「んぁ……っ、郁人……」
 悠志は、ねだるように郁人を熱く見つめる。
 郁人の指がローションを馴染ませていく悠志のなかは、すでに十分ほぐれていた。
 郁人も、表情に限界を滲ませて言った。
「入れて、いい……?」
「……だめなわけないだろ」
 その返事に口の端を上げ、郁人は悠志の唇にキスをした。
 郁人がスキンを装着すると、悠志は膝を抱えて両腿を上げた。
 丸見えになった菊門に郁人がペニスの先端をぐっと押し込むと、その昂ぶりは、するりと悠志のなかへ進入した。
「あ、あ……っ!」
 悠志は、やっと迎えられた郁人の質量を感じて、無意識にそれを締めつける。
「……く、……あ、悠志……っ」
 歓迎するかのような悠志の反応に、郁人はたまらず、腰が動いた。
「ああっ、あっ、ぁあっ、や……っ」
 郁人が腰を動かすと共に、ペニスが前立腺をこすり、悠志からは嬌声が漏れる。
 郁人は、体を揺さぶられてふるふると振れる悠志のペニスに気づいて、思わず笑みがこぼれた。
「悠志のちんぽも、こんなに勃って悦んでいるね」
「……それは、おまえだ、……あぁっ、ああんっ、あ……、なんで、こんなにでかく……、あぁっ! はあ……っ!」
 悠志は、自分のなかで存在を主張する郁人を感じる。
「ずーっと、悠志と、したかったから、ね……、んっ、悠志の顔、見ているだけで、したくなっていた……、はあ……っ、可愛い、悠志……っ」
「んむっ、ん……」
 郁人の唇は、悠志の唇を食み、舌を吸い、悠志との隙間を埋めつくすように深く重なっていく。
 その間も郁人は悠志のなかをこすり続け、悠志は、ますます甘い気分に包まれた。
「ぁあっ、あっ、もっと……、もっと、して、郁人……っ」
「おねだりしてくれるの? ……じゃあ、なにが欲しいのかも、ちゃんと言って?」
 答えを待つ郁人はゆるゆるとしか腰を動かさず、疼いてもどかしい悠志は、涙目になりながら訴える。
「ばか、……ぁあんっ、もう、早く……っ」
「なに? ……なにが欲しいの?」
 期待に満ちた郁人の目に見つめられ、悠志は言う以外に選択肢のない悔しさに唇を噛み締めると、照れながらもはっきりと言葉にした。
「い、郁人のが、欲しい……、郁人のちんぽで、もっと奥まで、突いて……っ」
 悠志の潤んだ目でねだられ、郁人は満足げに笑顔を浮かべた。
「了解しました。ご希望にお応えしますよ、お姫様」
「俺は、姫じゃない……っ!」
 郁人はやさしい声で答えると、ペニスでも忠実に恋人の注文を受けつけた。
「あ、あぁんっ! あんっ! あ、すご、い……っ、ぁあっ、あっ!」
 郁人はぱんぱんと肌をぶつけ合う音が響くほど激しく突き上げ、ベッドも軋む音を立てる。
「はぁっ、あっ、こんなに、しめつけて、ひくひくさせて……っ、そんなに俺のが欲しかったの……?」
「ぁあっ、あんっ、……こ、これ以上、言わせるな……っ、ああんっ! や、ああっ、はぁっ、やぁっ!」
「悠志が気持ちよさそうだと、は、あぁっ、俺も、きもちい……っ」
 言葉どおり快感に浸っている郁人の顔を見ると、悠志は、自分が郁人をそうさせているのだと感じ、急に胸が満たされた。
 悠志は目に涙を溜めて、自分を見下ろしながら体を揺さぶる郁人の首に腕を回した。
「ぁあっ、あんっ! 郁人……んっ、俺、イキ、そう……っ! ああっ、あ……っ!」
「ほんと? ふふっ、……俺も、イケるかも……っ、一緒に……っ!」
 郁人は悠志をそのまま抱きしめ、スパートをかけるように腰を振り乱した。
「ぁあっ! ああっ! あんっ! あんっ! い、郁人ぉ……っ!」
「悠志……っ! あぁっ、悠志……っ!」
「うぅっ! あ、……あぁ……っ!」
 悠志が自分の腹を精液で濡らすのとほぼ同時に、郁人も力を出しきるように、悠志のなかで果てた。


 興奮の波が徐々に引いていくと、お互いの姿しか視界に入っていなかった二人にも、周囲に夜の静けさが留まっていたことが思い出される。
 二人は、荒い呼吸を整えながら抱きしめあっていた。
 のしかかる郁人の体重を受け止めながら、悠志は、落ち着いた声で言った。
「郁人……、このままで聞けよ……?」
「ん……?」
 郁人に抱きついていた悠志は、彼の顔を見ずに語りかけた。
「おまえは、かっこつけなくても、十分かっこいいぞ。俺は、そのままのおまえが好きだからな……」
「え……? えっ!?」
 珍しくストレートに話された、悠志の素直な本音と受け取れる台詞に、郁人は一瞬で疲労感が吹き飛んだ。
 ところが、郁人が悠志の顔を見ようとしても、抱きついたままの悠志が離してくれず、身動きが取れない。
「今は、俺の顔を見るな」
 そう言われると、郁人はますます見たくなった。
「見たい!」
「見るな」
「見たいよ!」
「見せない……っ!」
 意地でも顔を見られたくない悠志は、耳まで赤くなりながら、体を離そうとする郁人をきつく抱きしめていた。


 時刻は、とうに真夜中を過ぎていた。
 服を着た二人は、悠志のリクエストで、部屋のなかにあるイルミネーションすべてに光を点していた。
 色々の明かりが壁や天井に映る景色を見ながら、悠志と郁人は、ベッドで並んで寝転ぶ。
「――これ、クリスマスが終わったらどうするんだ?」
 悠志は、郁人の顔を見て言った。
 郁人は、あらかじめ決めていたかのように言った。
「来年用に取っておくよ」
「来年も?」
「そ。だから、来年も驚いてね」
「二度目は驚かないだろ」
 悠志のまっとうな突っ込みに二人して笑いがこぼれ、郁人は、微笑を浮かべて悠志の体へと腕を伸ばす。
「驚かなくてもいいからさ……」
 悠志をやんわりと抱きしめて、郁人は言った。
「こうして、一緒にいてよ」
 二人で寝るには狭いベッドの上で、悠志も、郁人に体を寄せるようにして抱きしめ返した。
「……言われなくても、そのつもりだ」
 二人の顔が向かい合うと、悠志と郁人は、どちらからともなく唇を重ねた。
 音もなくあたたかい色を点すイルミネーションが、彼らの夜を静かに彩っていた。



〈終〉


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