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6章

174話 ちょっとした遠征

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「あっちーわ」

 まさかとは思ったけど、北東エリアなんてあるとは。ついでに言えば実際に熱いって訳じゃないけど、雰囲気だったり状況からして熱いような感じ。
 ゼイテから東に、2-2エリアからさらに北に進むと北東エリア1-1に突入して、一気に様変わり。北東側に進めば火山があるっていつか言ってたが、こんな風に進んで行くとは。

「まー、とりあえず必要な物を取って帰るとしよか」

 あ、噴火してる。






「火山灰が有効らしいぞ」
「何がー」
「土壌自体の質を上げる方法の一つだな」

 そういや社会の授業でそんな事を聞いた事あるけど、あれって色々めんどくさいって言うか、結構クリアしなきゃいけない問題があるんじゃなかったっけ?
 って言うか火山なんてあるのか、あるとは聞いていたけど、確実性は無かったから何とも言えなかった所なんだけど。

「使えるか分からんものを投入するってなかなかじゃね」
「使えるか分からんから試すもんじゃないのか」

 うむ、まあ、そりゃそうなんだけどさ、流石に土壌がすぐにダメになるってわけではないだろうし、試してなんぼってのは理解できる。
 ジャガイモ500個ダメになった所で5万の損失だし、もう1回500個買ってくれば5万はすぐ取り戻せるか。

「てか、もともとファーマーやってたのに、何でその辺詳しくないのよ」
「趣味以上本職以下だったからな、酒造用の作物育てるのにまた色々手を出し始めたって所だ……だから儂の分の灰もよろしく頼むぞ」
「火山行くなら硫黄や鉱石取って来てくれ」
「ちょっと要求するもん多すぎだろお前ら」

 しかも誰も付いてこないですって宣言されてるしさ、人使い荒すぎじゃない?私このクランのボスだよ?もうちょっと丁寧に扱ってもいいんじゃないの?

「儂はお前の為に酒を造ってる」
「俺はボスの為に銃弾を作ってる」
「こういう時に限ってうちの鉄砲玉はどっかに飛んで行ってるのは腹立たしいわ」

 しょうがねえなあと言いながらスーツに着替えてアイテムチェックして準備を整える。私のやりたい事をやってくれるんだからあんまり文句を言うもんでもないからなあ。
 この辺の関係性がしっかりできているからがっつり任せてるわけだし、手伝えることは手伝ってやるけど、私の負担でかくねえか、おい。

「ちょっとトカゲ、あんた私が戻ってくるまでにガンシールドでも作っておきなさいよ」
「銃弾量産しろって言ってたじゃねえか」
「作ったら材料取りに行きやすくなるでしょ」

 なるほど、と言った感じで納得しているが、ちゃんと私が要求しているようなものを作ってくれるのか不安だよ。
 銃関係って好きじゃないとやらないから私の意図している物を作ってくれるのを期待しておこう。

「じゃあ、行ってくるけど、どこいきゃいいねん」

 まずそこなんだよ。





 
「にしても山ばっかり登ってるじゃん」

 何だかんだで山や洞窟ばっかり来てるよな。あんまり草原や森で鉱石を手に入れるって中々ないし、エルスタン周辺で採れるのはどちらかと言うとチュートリアル感が強いからあれはあれで特殊だと思う。
 せっかく生産になったのに材料は全部買わなきゃいけないのに金策する方法が無いってそれは厳しいし、材料も取りに行けないってのはゲームとして破綻してるし、納得は出来る。
 
 それにしても久々にフィールド出てきて、戦闘をしつつ、採掘しに行くって、水銀必死こいて取りに行った時くらいかな。

「これで火山の方で色々取れるって言うならゼイテの方に比重置いて材料集めまわるってのがいいかな」

 森ガールとか山ガールなんてアウトドア系の呼び方が増えているけど、私としては完全にインドア派なのでどっちでもないな。リアルじゃ家で過ごしたいしゲームしたいし、ひたすらおもちゃで遊んでいたい。何だったら女趣味が無いから、完全に男趣味の方が多いわ。

 まあ、そんな事は良いとして、北東エリアと言うか、初期街は4方向、次に8方向に増え広がるのはどういう意図なんだろうか。
 基本的にエリアを先に進めば配管工の髭親父みたいに順繰りステージを進むとは思っていたんだが、ちょっと変則的になると言うか、出来る事が増えますっていうメッセージかもしれん。

「エリア変わっただけですぐ火山出てくるのはちょっとシュールだけど」

 それにしてもがっつり火山だな。よくゲームで見る、火口の所に黒い煙が輪になってる、あれ。しかもちょっとどんよりしてる。
 これからあの山を登って、採掘して戻るって思うと、ガンシールド一枚と酒造ってちょっと割に合わない気がしてきた。

『がっつり火山じゃん』
『ダンジョン扱いらしいから気を付けろよ』
『RPGやアクションゲームでの火山って結構山場の地点よね』

 溶岩に一歩踏み入れるたびにダメージ受けたり、火属性の攻撃を当てると経験値が増えつつ、敵が強力になるってのもパターンだよな。たまに戦闘回数で溶岩の高低が変わって、進行ルートを考えなきゃいけないって物もあったわ。
 
「まー、やっぱり気合入れてまずはあの山に入るってのが今の課題になると思うんだよね」

 やっぱり火山の近くってのもあって緑は無いし、もろ山岳地帯って感じのマップと言うのも厳しいな。隠れる場所が少ないってのもあるし、足場がそこまでよろしくないから、戦闘は結構ガチる感じになるんだろうな。

「なー、そう思わん?」

 アクティブ系モンスターも結構いるので喧嘩はそこそこ売られるわけで、火山の方向を見てげんなりしている時に出てくるのは、毎度お馴染みコボルト(剣)。
 その代わりちょっと違うのは、他の所で見かけたタイプよりも毛がゴワゴワ、熱さをガードしてますって感じのモデルに切り替わっている。
 生態に合わせてモンスターのマイナーチェンジってのは細かいけど、こいつら結構大変なんだよな。
 得物で攻撃してくるってのは変わらずなんだけど、先にこっちから攻撃して一気に叩かないと、仲間呼んでくるわ、小賢しい事してくるわで大変なのよね。

 勿論そんな事言ってたら普通に斬りかかってくるので相変わらずのウサ銃での受け防御。衝撃でダメージは入るけど、優秀なスーツのおかげで数ポイントのダメージのみ。やっぱりいい性能だよ、このスーツ。今度また札束で殴ってやらないとな。

「んっ、そういや人以外で戦うの久々だわ」

 受けて、一度膠着状態になってから一息ついてから蹴り飛ばして距離を取り、銃剣を構えて一気に踏み込んで突き攻撃。
 なのだが、環境対応型で銃剣の突き攻撃が深く入らない。結果的にあのゴワゴワした毛のせいで深く突きさせないってのが問題になるとは。

「ええい、小賢しい奴め!」

 手応えが浅すぎるのですぐに引き金を絞って一発撃ち込んで追撃。「ギャン」とダメージが入ったであろう鳴き声をさせるのでさらに力を込めて銃剣を深く突き刺し捻りこんで押さえつける。
 一発と深めの銃剣攻撃で沈まない辺り、結構HPが多いってのが分かる。あー、こんな事なら対人で戦ってる方がまだ単純だった気がする。
 そのまま銃剣をねじ込みながら押し倒して、突き下ろしたまま、さらに引き金を絞り二発目。二発以上使うってなると鳳仙花じゃないと効率が悪いんだよ。
 
「くたばれ!」

 倒れたコボルトを足で押さえつけた状態で突き下ろし、ザクザクと突きダメージを与えていくとポリゴン状になって消失していくので一息。
 これから先、こんな相手ばっかり戦うってなると厳しくないか?

「銃もそろそろもう一段階強いのが無いと銃弾効率悪いわ」

 葉巻咥えて余裕たっぷりに紫煙吐きながら戦える所じゃないわ、これ。
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