魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ

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 そしてまた朝に出発。そろそろ町に着こうかという時、私はふと纏わりつく何かの気配を感じ回りを見回す。

 グルルル。

 ラファルも警戒音を出し、何かを感じ取っているようだ。

「お兄様」

 声を掛けると、お兄様達も気づいた様子だ。ラファルも何処か落ち着かない。そっと皆が攻撃の準備をする。

 私は集中し、敵の数を確認する。二十ってところかしら。

 ガサッ。正体を現わすように一人、また一人と茂みから出てきた。

 そして一人が斬りかかるのを皮切りに一気に切りかかってきたわ。お兄様達は魔法剣と魔法で応戦。ラファルは上空へ敵を抱え、地上に叩きつける。

 私は指先から敵達に魔力を巻きつけていく。【この者達を闇より暗い奈落へ導け、タルタロス】敵は深淵の沼に引き摺り込まれていく。

「お兄様、無事ですか」

 お兄様達に駆け寄ろうとした瞬間、背後の気配を感じ、振り返ると同時にガチャンと首元で音がする。

 まさか。首元にてをやるとそこには冷たい金属の輪が嵌められている。

 ― 奴隷。

 その言葉が頭を過り、恐怖を感じると共に怒りが湧いてきた。

 なぜ、私ばかりこんな目に合うの?

 テオお兄様は青い顔をしている。私は湧き上がる感情で動けずにいたが、男は気づかずグッと私の腕を取った。

「さぁ、陛下がお待ちだ。来るんだ。抵抗しても無駄だ。隷属の首輪を外すのは不可能だからな」

 男は不敵な笑みを浮かべている。

 私はレオンお兄様に視線をやり、小さく頷く。レオンお兄様は私の様子を見ながら他の敵を倒している。

 なぜ?
 なぜ私が狙われなければならないの?

 悲しみと憤る感情がない交ぜになり怒りにかわる。
 直接身体に描かれた術式に魔力を流してゆく。

 身体に描かれた術式は脈打つように反応し、首輪へと向かっていく。金属音が擦れるようなけたたましい音と共に首に嵌められた首輪が地面に落下した。

 同時に背後の男は唸り声を上げながら首に隷属の術式が刻み込まれていく。男は苦痛を感じているのか息を荒くし、最後まで抵抗するように術式に手を当て解除しようと試みている。

「やはり悪い予感というのは当たるものですね」

 私は漏れ出る感情を抑えつけ隷属の首輪を拾い、男に向かい合う。

「私の名を答えなさい」

 男は苦悶の表情をしながら跪き、答えた。

「ソフィア・オリヴェタン様です」

 どうやらしっかりと反射が出来たようだ。私は魔力を使い、他に隠れている者を探すが、他には居ないようだ。

 周囲を確認した後、お兄様達も私のそばにやってきた。

「答えなさい。貴方は誰」 
「俺はルクール王国クリフォード陛下の影、サモロン」
「サモロン、陛下はどんな指示を出したの? 今倒した人達以外で逃げた人はいる?」

「ソフィア様とレオン様とテオ様の三人の捕縛。場合により、ソフィア様以外は殺しても良いと命ぜられました。影は私以外いません。ここへ向かったクリフォード陛下直属部隊は全滅しました」
「サモロン、陛下は私を捕縛しようとした目的は?」

「オリヴェタン侯爵家を脅す材料とする事、ソフィア様を貴族達へ分け与え、自分の地位を盤石にする事が目的です」

 お兄様達は私を抱きしめ、サモロンを通して陛下に侮蔑の視線を向けている。さて、どうしましょうか。

「お兄様、お父様からは魔法郵便は来ていないですか」
「ああ、陛下がソフィアの婚約白紙にしてからずっと渋って面会も叶っていないようだ」

 きっとこの報告を陛下は待っているのね。

 そうだわ。
 いい事を思いついた。

「レオンお兄様、テオお兄様、私、良い事を思い付きました。このまま町まで行って良いですか?」
「ああ、良いとも。後で説明してくれるか」
「宿に着いたらお話しますわ」

 そう言って、倒した兵士達を魔法で集める。

 流石に死体放置は魔物が食い荒らすし、疫病の元になるため兵士の個人と分かる持ち物を一つずつ外してから一気に火魔法で燃やしていく。

「サモロン、陛下直属部隊は全員で何人なの?」
「部隊全員では四十名です」

 私達を捕らえる為に半数を向かわせたのね。町に着くと、すぐに魔道具屋に寄る。

「すみません。この魔石を付ける装飾品の土台を探しているのですが」
「あぁ、これなら手首に嵌めるタイプがいいね。ちょっとまってね。はい。これで大丈夫だね」

 私は腕輪に取り付けられた魔石を見て満足する。お兄様達はその様子を不思議そうに見ていた。

 その後、宿を取り、部屋にはレオンお兄様、テオお兄様、私、ラファル、サモロンがいる。そして私は宿で一休憩した後、魔石に魔法を込める。

 私はこの腕輪を眺めながら考える。サモロンが上手くこの腕輪を陛下に嵌めることが出来たのなら事態は大きく変わるわ。

 失敗したら……それこそ王家と全面戦争になるかもしれない。

「サモロン、この腕輪は幻覚の腕輪です。約二十分程は幻覚から覚める事はありません。陛下の入浴時や睡眠時等、隙のある時に嵌めなさい。そして身につけている魔道具全てを取らせてこれを嵌めなさい」

 そっと鞄から取り出したのは先程、私に嵌めようとした隷属の首輪。二つの魔道具をサモロンに渡す。

「上手くいけば魔法郵便で私とオリヴェタン侯爵に報告しなさい。分かりましたか?」
「承知致しました。ソフィア様」
「レオンお兄様、サモロンをクルーク王国の近くに送って貰ってもいいですか?」
「分かった」

 レオンお兄様はサモロンと一緒に転移で消えて行った。消えた二人を見送りホッと息を吐いた。

「ソフィア、大丈夫か。顔色が悪い」
「お兄様、私、怖かった。国からも奴隷として狙われているのですね」
「辛かっただろう」

 テオお兄様は私をそっと抱きしめた。

「疲れただろう? 僕が結界を張り、見張っておくから少しお休むんだ」

 テオお兄様は私にそう言ってベッドに寝かせ、頭を撫でながら魔法を唱えていた。
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