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3 アンドリューSide2
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「う、嘘よっ。ね、お父様っ」
グレイスは怯えたように父に縋りつく。その様子を母も俺も冷たく見ているだけ。
……その時、部屋の扉が開いた。
「あー、邪魔しちゃった?まだ死んでなかったの?」
「間に合ったのか。妹の最後だ、きっちり見届けるのも兄の私達の勤めだろう」
そう言って部屋に入ってきたのは第二王子のランドルと第三王子のアーサーだ。
「お兄様っ!!嫌よ!私はそんな物、飲まないわっ!」
グレイスはいきり立ちグラスを取ろうとしたけれど、アーサーにヒョイと小瓶とグラスを先に取られた。どうせグレイスの事だ取って俺達に投げつけていただろう。
「グレイス、煩いわ。飲みたくないのならすぐにナーゼル国に嫁ぐ。どちらかを選びなさい」
母は今までに無く厳しい口調でグレイスに問う。
「お、お父様ぁ~」
「お前、グレイスが可哀そう「あなた、それ以上口を出すならあなたが毒を飲みなさい。分かった上でグレイスを助けたいのでしょう?」」
間髪を容れずに母は父に言うと父はグッと黙り込む。父は毒を飲む気はないようだ。自分を庇ってくれる者がいないと分かるとグレイスは『不満だ』と表情に浮かべながら口を開いた。
「……ナーゼルにいくわ」
「そうだな。それが賢明な判断だ。ラダン、今すぐグレイスを部屋へ連れていってくれ。護衛と一緒に。準備が整うまでは一歩も外に出すな。誰とも合わせるなよ?」
「畏まりました。ではグレイス様、参りましょう」
そうしてグレイスは執事に連れられて部屋を後にした。残った俺達は早速父を詰る。
「グレイスが皆の前で公爵を牢に入れろって?気でも狂ったのか?」
「あぁ。あいつの頭は前からおかしいだろう?今更だ。母上のお腹に脳を置いていったのではないか?」
「あらやだ。私はしっかり産んだつもりだったのに。ごめんなさいねっ」
父は黙ったまま肩身が狭いようだ。
「あなた、グレイスにこれ以上情けはいりません。面会も不要。グレイスが逃げ出そうものなら即毒杯を。あなたも分かっていますわよね?」
「……あぁ。もう後はない」
「大体、父上がグレイスを付け上がらせたんだろ?俺達はずっと言っていたはずだ。厳しくしていれば手元に置けたのにな」
「ランドル、あれから舞踏会の方はどうだった?」
俺は気になっていた舞踏会の事を聞いた。
「兄上、あの後大変だったんだからな。公爵はカンカンに怒っていたぞ?宥めるのが大変だった。後日母上から詫びの品を送って欲しい」
「仕方がないわね。実家から手配しておくわ」
こうしていつも家族で話し合い、グレイスの尻ぬぐいをしていたせいか俺達兄弟の仲は良好だといえる。母も文句を言いながらも裏から手を回してくれるのだ。問題は父とグレイスのみ。
父はかつて賢王と呼ばれていたほど貴族からも国民からも信頼が厚かったようだがグレイスが生まれてから愚王と呼ばれるほど名声は落ちた。グレイスが絡まなければ治政はしっかりしているのだが。
グレイスのために、グレイスのために、と余計な事ばかりして今ではお荷物に近いかもしれない。
さぁ、明日からの三日間が勝負だ。
俺達は気を引き締め直した。
グレイスは怯えたように父に縋りつく。その様子を母も俺も冷たく見ているだけ。
……その時、部屋の扉が開いた。
「あー、邪魔しちゃった?まだ死んでなかったの?」
「間に合ったのか。妹の最後だ、きっちり見届けるのも兄の私達の勤めだろう」
そう言って部屋に入ってきたのは第二王子のランドルと第三王子のアーサーだ。
「お兄様っ!!嫌よ!私はそんな物、飲まないわっ!」
グレイスはいきり立ちグラスを取ろうとしたけれど、アーサーにヒョイと小瓶とグラスを先に取られた。どうせグレイスの事だ取って俺達に投げつけていただろう。
「グレイス、煩いわ。飲みたくないのならすぐにナーゼル国に嫁ぐ。どちらかを選びなさい」
母は今までに無く厳しい口調でグレイスに問う。
「お、お父様ぁ~」
「お前、グレイスが可哀そう「あなた、それ以上口を出すならあなたが毒を飲みなさい。分かった上でグレイスを助けたいのでしょう?」」
間髪を容れずに母は父に言うと父はグッと黙り込む。父は毒を飲む気はないようだ。自分を庇ってくれる者がいないと分かるとグレイスは『不満だ』と表情に浮かべながら口を開いた。
「……ナーゼルにいくわ」
「そうだな。それが賢明な判断だ。ラダン、今すぐグレイスを部屋へ連れていってくれ。護衛と一緒に。準備が整うまでは一歩も外に出すな。誰とも合わせるなよ?」
「畏まりました。ではグレイス様、参りましょう」
そうしてグレイスは執事に連れられて部屋を後にした。残った俺達は早速父を詰る。
「グレイスが皆の前で公爵を牢に入れろって?気でも狂ったのか?」
「あぁ。あいつの頭は前からおかしいだろう?今更だ。母上のお腹に脳を置いていったのではないか?」
「あらやだ。私はしっかり産んだつもりだったのに。ごめんなさいねっ」
父は黙ったまま肩身が狭いようだ。
「あなた、グレイスにこれ以上情けはいりません。面会も不要。グレイスが逃げ出そうものなら即毒杯を。あなたも分かっていますわよね?」
「……あぁ。もう後はない」
「大体、父上がグレイスを付け上がらせたんだろ?俺達はずっと言っていたはずだ。厳しくしていれば手元に置けたのにな」
「ランドル、あれから舞踏会の方はどうだった?」
俺は気になっていた舞踏会の事を聞いた。
「兄上、あの後大変だったんだからな。公爵はカンカンに怒っていたぞ?宥めるのが大変だった。後日母上から詫びの品を送って欲しい」
「仕方がないわね。実家から手配しておくわ」
こうしていつも家族で話し合い、グレイスの尻ぬぐいをしていたせいか俺達兄弟の仲は良好だといえる。母も文句を言いながらも裏から手を回してくれるのだ。問題は父とグレイスのみ。
父はかつて賢王と呼ばれていたほど貴族からも国民からも信頼が厚かったようだがグレイスが生まれてから愚王と呼ばれるほど名声は落ちた。グレイスが絡まなければ治政はしっかりしているのだが。
グレイスのために、グレイスのために、と余計な事ばかりして今ではお荷物に近いかもしれない。
さぁ、明日からの三日間が勝負だ。
俺達は気を引き締め直した。
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