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「エレゲン伯爵夫人とシャロア嬢はなぜ我が国に? 理由を聞きたい」
「既に承知ではあると思いますが、ミローナ国の王女、エリアーナ王女殿下の婚約者が私達の娘、シャロアの元婚約者だったことが原因です。
シャロアと元婚約者であるリンデル侯爵子息と婚姻目前でしたが、王女の横やりにより破談となりました。
その後、王家の醜聞を減らすために娘に王命で婚約者を当てがおうとしてきたため、療養という名目でダーウィル国へ逃げて来たのです」
母は堂々とミローナ国で私がされたことを陛下の前で言った。まぁ、黙っていても隣国であったことは筒抜けだからだと思うけれど。
王女を庇うことなく逃げてきたと口にした母はやはり王女に対して私以上に怒っているのだと思う。すると王太子殿下が笑いながら話し掛けてきた。
「カイトの嫁にならなくて良かったよ。シャロア嬢は気の毒でしたね。元々エリアーナ王女を賛美する声しか聞こえて来なかったから調べさせていたんだ。
こちらとしても問題のある者を王家に迎え入れたくはないからね。よかったですね、父上」
ニヤニヤと話している王太子。思いのほか嫌味な王太子だということは分かった。
黙って状況を見守っていたのだが、王妃様はすくっと立ち上がり、王太子を扇で叩いた。
えぇぇ!?
私は内心驚きで声を上げそうになった。王妃という立場の人が他人の前で息子に手を上げたのだ。そしてその場に居た誰もが王太子の味方することはないようだ。
「フルード、貴方、なんてことを言うの!? このご令嬢は、貴方が敬愛して止まないクリフォードの命を救ってくれたのよ!
そのことを知らなくても一人の令嬢に対して失礼すぎます!
この件にフルードは関わらせません。そこの従者、連れて行きなさい」
「どういうことですか!? 母上! クリフォード叔父さんを救ったとは」
フルード殿下は驚いて私達に助けを求めるように見てきたが、そのまま従者と騎士達に摘みだされてしまった。そして私達も驚いていた。もしかして私が助けた男の人は王弟殿下だったのかと。
固まる私達を他所に陛下は口を開いた。
「エレゲン伯爵夫人とシャロア嬢、フルードが申し訳ない。まだまだ儂らの教育が足りず迷惑をかけた。
今回城に呼んだのは言うまでもない。シャロア嬢が助けたのが儂の年の離れた弟、クリフォードが礼をしたいと言っておるのだ。やつはまだエレナの街を出た頃だろう」
私は思った事を口にした。
「何故私がクリフォード王弟殿下を救ったと思ったのでしょうか?」
「あぁ、シャロア嬢はローブを着て仮面をしていたのだろう? クリフォードの護衛騎士が君と護衛の剣筋を見て隣国ミローナの『ミローナの剣』の者ではないかと進言したのだ。そこからエレナの街にある宿でエレゲン家の名があるか探し出した。
宿の店主は早朝に令嬢と護衛が鍛錬に出たと証言が出ていたのでな。弟を助けてくれて有難う。本当に感謝している。
近日中にクリフォードは王都に戻ってくるのでそれまで城でゆっくりと滞在して欲しい」
「恐れ多いことです。私はただ通りかかっただけです。こちらの方こそ鍛錬の途中で勝手に助太刀しただけですから気を使っていただかなくても結構ですわ」
「そうか、そうか。シャロア嬢も騎士なのだな」
陛下は王弟クリフォード様から私達にお礼が言いたいので城に止まっていて欲しいようだ。
「して、エレゲン伯爵夫人、我が国でシャロア嬢は療養後のことは考えておるのだろうか?」
「気にしていただき、誠に恐縮です。この後、娘とクロシューロルへ向かい、観光した後、この国のどこかで娘の居を構える予定です。
国に戻っても婚約者を無理やり宛がわれるようですから」
「そうなのだな。我が国はシャロア嬢を歓迎する」
「「ありがとうございます」」
「エレナの街からの移動は疲れたであろう。クリフォードが戻ってくるまで王城でゆっくり休まれよ」
私達は礼をして謁見の間を出た。
その後、従者に客室へ案内されてようやく一息を吐いた。どうやら私と一緒に居た護衛には謝礼金が出たようだ。
護衛騎士はホクホク顔で『鍛錬を怠ることはできませんね』と言っていた。私達同様に護衛騎士や侍女には使用人用の客室があり、彼らはいつもよりゆったりと過ごしているようだ。
「お母様、大変なことになってしまい、すみません」
「ふふっ。まさか助けた相手が王弟殿下だったとはね。でもこれはこれで良かったんじゃない? 陛下達に良い印象を与えられたのだし、この国で暮らしていく許可が降りたんだもの」
「そうですね」
そう思えば悪いことではないわ。いつも前向きな母の言葉に納得する自分がいる。
そうして私達は数日間王宮に滞在することになった。もちろん父には手紙を出しているわ。今、王宮に滞在していますと。
滞在している時はやることもないので王宮の訓練場を借りて他の騎士達に交じって訓練に参加させてもらった。
国が変わるとやることも大きく違っていてとても勉強になった。ダーウィルの騎士から見ても私や護衛騎士の訓練は新鮮に映ったようでお互い良い刺激だったと思う。
「既に承知ではあると思いますが、ミローナ国の王女、エリアーナ王女殿下の婚約者が私達の娘、シャロアの元婚約者だったことが原因です。
シャロアと元婚約者であるリンデル侯爵子息と婚姻目前でしたが、王女の横やりにより破談となりました。
その後、王家の醜聞を減らすために娘に王命で婚約者を当てがおうとしてきたため、療養という名目でダーウィル国へ逃げて来たのです」
母は堂々とミローナ国で私がされたことを陛下の前で言った。まぁ、黙っていても隣国であったことは筒抜けだからだと思うけれど。
王女を庇うことなく逃げてきたと口にした母はやはり王女に対して私以上に怒っているのだと思う。すると王太子殿下が笑いながら話し掛けてきた。
「カイトの嫁にならなくて良かったよ。シャロア嬢は気の毒でしたね。元々エリアーナ王女を賛美する声しか聞こえて来なかったから調べさせていたんだ。
こちらとしても問題のある者を王家に迎え入れたくはないからね。よかったですね、父上」
ニヤニヤと話している王太子。思いのほか嫌味な王太子だということは分かった。
黙って状況を見守っていたのだが、王妃様はすくっと立ち上がり、王太子を扇で叩いた。
えぇぇ!?
私は内心驚きで声を上げそうになった。王妃という立場の人が他人の前で息子に手を上げたのだ。そしてその場に居た誰もが王太子の味方することはないようだ。
「フルード、貴方、なんてことを言うの!? このご令嬢は、貴方が敬愛して止まないクリフォードの命を救ってくれたのよ!
そのことを知らなくても一人の令嬢に対して失礼すぎます!
この件にフルードは関わらせません。そこの従者、連れて行きなさい」
「どういうことですか!? 母上! クリフォード叔父さんを救ったとは」
フルード殿下は驚いて私達に助けを求めるように見てきたが、そのまま従者と騎士達に摘みだされてしまった。そして私達も驚いていた。もしかして私が助けた男の人は王弟殿下だったのかと。
固まる私達を他所に陛下は口を開いた。
「エレゲン伯爵夫人とシャロア嬢、フルードが申し訳ない。まだまだ儂らの教育が足りず迷惑をかけた。
今回城に呼んだのは言うまでもない。シャロア嬢が助けたのが儂の年の離れた弟、クリフォードが礼をしたいと言っておるのだ。やつはまだエレナの街を出た頃だろう」
私は思った事を口にした。
「何故私がクリフォード王弟殿下を救ったと思ったのでしょうか?」
「あぁ、シャロア嬢はローブを着て仮面をしていたのだろう? クリフォードの護衛騎士が君と護衛の剣筋を見て隣国ミローナの『ミローナの剣』の者ではないかと進言したのだ。そこからエレナの街にある宿でエレゲン家の名があるか探し出した。
宿の店主は早朝に令嬢と護衛が鍛錬に出たと証言が出ていたのでな。弟を助けてくれて有難う。本当に感謝している。
近日中にクリフォードは王都に戻ってくるのでそれまで城でゆっくりと滞在して欲しい」
「恐れ多いことです。私はただ通りかかっただけです。こちらの方こそ鍛錬の途中で勝手に助太刀しただけですから気を使っていただかなくても結構ですわ」
「そうか、そうか。シャロア嬢も騎士なのだな」
陛下は王弟クリフォード様から私達にお礼が言いたいので城に止まっていて欲しいようだ。
「して、エレゲン伯爵夫人、我が国でシャロア嬢は療養後のことは考えておるのだろうか?」
「気にしていただき、誠に恐縮です。この後、娘とクロシューロルへ向かい、観光した後、この国のどこかで娘の居を構える予定です。
国に戻っても婚約者を無理やり宛がわれるようですから」
「そうなのだな。我が国はシャロア嬢を歓迎する」
「「ありがとうございます」」
「エレナの街からの移動は疲れたであろう。クリフォードが戻ってくるまで王城でゆっくり休まれよ」
私達は礼をして謁見の間を出た。
その後、従者に客室へ案内されてようやく一息を吐いた。どうやら私と一緒に居た護衛には謝礼金が出たようだ。
護衛騎士はホクホク顔で『鍛錬を怠ることはできませんね』と言っていた。私達同様に護衛騎士や侍女には使用人用の客室があり、彼らはいつもよりゆったりと過ごしているようだ。
「お母様、大変なことになってしまい、すみません」
「ふふっ。まさか助けた相手が王弟殿下だったとはね。でもこれはこれで良かったんじゃない? 陛下達に良い印象を与えられたのだし、この国で暮らしていく許可が降りたんだもの」
「そうですね」
そう思えば悪いことではないわ。いつも前向きな母の言葉に納得する自分がいる。
そうして私達は数日間王宮に滞在することになった。もちろん父には手紙を出しているわ。今、王宮に滞在していますと。
滞在している時はやることもないので王宮の訓練場を借りて他の騎士達に交じって訓練に参加させてもらった。
国が変わるとやることも大きく違っていてとても勉強になった。ダーウィルの騎士から見ても私や護衛騎士の訓練は新鮮に映ったようでお互い良い刺激だったと思う。
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