【完結】婚約破棄された女騎士には溺愛が待っていた。

まるねこ

文字の大きさ
47 / 60

47

しおりを挟む
「エレゲン伯爵夫人とシャロア嬢はなぜ我が国に? 理由を聞きたい」
「既に承知ではあると思いますが、ミローナ国の王女、エリアーナ王女殿下の婚約者が私達の娘、シャロアの元婚約者だったことが原因です。
シャロアと元婚約者であるリンデル侯爵子息と婚姻目前でしたが、王女の横やりにより破談となりました。
その後、王家の醜聞を減らすために娘に王命で婚約者を当てがおうとしてきたため、療養という名目でダーウィル国へ逃げて来たのです」

母は堂々とミローナ国で私がされたことを陛下の前で言った。まぁ、黙っていても隣国であったことは筒抜けだからだと思うけれど。

王女を庇うことなく逃げてきたと口にした母はやはり王女に対して私以上に怒っているのだと思う。すると王太子殿下が笑いながら話し掛けてきた。

「カイトの嫁にならなくて良かったよ。シャロア嬢は気の毒でしたね。元々エリアーナ王女を賛美する声しか聞こえて来なかったから調べさせていたんだ。
こちらとしても問題のある者を王家に迎え入れたくはないからね。よかったですね、父上」

ニヤニヤと話している王太子。思いのほか嫌味な王太子だということは分かった。

黙って状況を見守っていたのだが、王妃様はすくっと立ち上がり、王太子を扇で叩いた。

えぇぇ!?

私は内心驚きで声を上げそうになった。王妃という立場の人が他人の前で息子に手を上げたのだ。そしてその場に居た誰もが王太子の味方することはないようだ。

「フルード、貴方、なんてことを言うの!? このご令嬢は、貴方が敬愛して止まないクリフォードの命を救ってくれたのよ!
そのことを知らなくても一人の令嬢に対して失礼すぎます!
この件にフルードは関わらせません。そこの従者、連れて行きなさい」
「どういうことですか!? 母上! クリフォード叔父さんを救ったとは」

フルード殿下は驚いて私達に助けを求めるように見てきたが、そのまま従者と騎士達に摘みだされてしまった。そして私達も驚いていた。もしかして私が助けた男の人は王弟殿下だったのかと。

固まる私達を他所に陛下は口を開いた。

「エレゲン伯爵夫人とシャロア嬢、フルードが申し訳ない。まだまだ儂らの教育が足りず迷惑をかけた。
今回城に呼んだのは言うまでもない。シャロア嬢が助けたのが儂の年の離れた弟、クリフォードが礼をしたいと言っておるのだ。やつはまだエレナの街を出た頃だろう」

私は思った事を口にした。

「何故私がクリフォード王弟殿下を救ったと思ったのでしょうか?」
「あぁ、シャロア嬢はローブを着て仮面をしていたのだろう? クリフォードの護衛騎士が君と護衛の剣筋を見て隣国ミローナの『ミローナの剣』の者ではないかと進言したのだ。そこからエレナの街にある宿でエレゲン家の名があるか探し出した。

宿の店主は早朝に令嬢と護衛が鍛錬に出たと証言が出ていたのでな。弟を助けてくれて有難う。本当に感謝している。
近日中にクリフォードは王都に戻ってくるのでそれまで城でゆっくりと滞在して欲しい」

「恐れ多いことです。私はただ通りかかっただけです。こちらの方こそ鍛錬の途中で勝手に助太刀しただけですから気を使っていただかなくても結構ですわ」
「そうか、そうか。シャロア嬢も騎士なのだな」

陛下は王弟クリフォード様から私達にお礼が言いたいので城に止まっていて欲しいようだ。

「して、エレゲン伯爵夫人、我が国でシャロア嬢は療養後のことは考えておるのだろうか?」
「気にしていただき、誠に恐縮です。この後、娘とクロシューロルへ向かい、観光した後、この国のどこかで娘の居を構える予定です。
国に戻っても婚約者を無理やり宛がわれるようですから」
「そうなのだな。我が国はシャロア嬢を歓迎する」
「「ありがとうございます」」
「エレナの街からの移動は疲れたであろう。クリフォードが戻ってくるまで王城でゆっくり休まれよ」

私達は礼をして謁見の間を出た。

その後、従者に客室へ案内されてようやく一息を吐いた。どうやら私と一緒に居た護衛には謝礼金が出たようだ。
護衛騎士はホクホク顔で『鍛錬を怠ることはできませんね』と言っていた。私達同様に護衛騎士や侍女には使用人用の客室があり、彼らはいつもよりゆったりと過ごしているようだ。

「お母様、大変なことになってしまい、すみません」
「ふふっ。まさか助けた相手が王弟殿下だったとはね。でもこれはこれで良かったんじゃない? 陛下達に良い印象を与えられたのだし、この国で暮らしていく許可が降りたんだもの」
「そうですね」

そう思えば悪いことではないわ。いつも前向きな母の言葉に納得する自分がいる。


そうして私達は数日間王宮に滞在することになった。もちろん父には手紙を出しているわ。今、王宮に滞在していますと。

滞在している時はやることもないので王宮の訓練場を借りて他の騎士達に交じって訓練に参加させてもらった。

国が変わるとやることも大きく違っていてとても勉強になった。ダーウィルの騎士から見ても私や護衛騎士の訓練は新鮮に映ったようでお互い良い刺激だったと思う。
しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!

さくら
恋愛
 王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。  ――でも、リリアナは泣き崩れなかった。  「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」  庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。  「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」  絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。  「俺は、君を守るために剣を振るう」  寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。  灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

“足りない”令嬢だと思われていた私は、彼らの愛が偽物だと知っている。

ぽんぽこ狸
恋愛
 レーナは、婚約者であるアーベルと妹のマイリスから書類にサインを求められていた。  その書類は見る限り婚約解消と罪の自白が目的に見える。  ただの婚約解消ならばまだしも、後者は意味がわからない。覚えもないし、やってもいない。  しかし彼らは「名前すら書けないわけじゃないだろう?」とおちょくってくる。  それを今までは当然のこととして受け入れていたが、レーナはこうして歳を重ねて変わった。  彼らに馬鹿にされていることもちゃんとわかる。しかし、変わったということを示す方法がわからないので、一般貴族に解放されている図書館に向かうことにしたのだった。

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

『婚約なんて予定にないんですが!? 転生モブの私に公爵様が迫ってくる』

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 現代で過労死した原田あかりは、愛読していた恋愛小説の世界に転生し、主人公の美しい姉を引き立てる“妹モブ”ティナ・ミルフォードとして生まれ変わる。今度こそ静かに暮らそうと決めた彼女だったが、絵の才能が公爵家嫡男ジークハルトの目に留まり、婚約を申し込まれてしまう。のんびり人生を望むティナと、穏やかに心を寄せるジーク――絵と愛が織りなす、やがて幸せな結婚へとつながる転生ラブストーリー。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

処理中です...