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なんとも気まずい雰囲気になったところを執事が口を開いた。
「シャロア様、差し出がましいことを言いました。申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ申し訳ありません」
「クリフォード様は命を狙われており、婚約者が何度も命を狙われたせいでずっと一人で過ごしていたのです。
ここ数年でようやく襲撃が落ち着いては来たのですが、今度はクリフォード様自身、結婚する意思が無くなり、どうにも困っていたのです。
シャロア様、どうか老いぼれのためにどうか、どうか、もう一度お会いして下さるようお願いします。クリフォード様の良さをシャロア様に知ってもらいたいのです」
「そ、そうだったのですね。殿下は何故狙われているのか聞いても?」
「あぁ、それは私から話そう。私が現国王の弟だとは知っているね? 実は異母兄弟なんだが、兄は王妃の子。
俺は側妃の子。歳の離れた兄弟なんだ。兄は俺に優しくしてくれているが、生まれた当初から王妃から疎まれてきた。
よくある話だな。ただ疎まれるだけならよかったんだが、兄の子達は残念ながらまだ人として未熟なんだ」
私は殿下の言葉で思い出される一週間前の王太子の言動。確かに未熟という言葉に納得してしまう自分がいた。
「そこで貴族達は俺を担ぎ出そうと考えた。だが、これに怒ったのは王妃。
今は王太后だな。そこから俺は何度も王太后の差し向ける暗殺者によって命を狙われてきた。
三年前に第一王子が王太子になった事で襲撃は減ったが、まだあのババアは私の命を諦めていないんだ。
エレナの街で襲われた時は護衛がちょうど交代の時間で手薄になった時を狙われた。あの時の君達には感謝しきれない」
彼は昔から苦労してきたのね。私は恋愛感情に振り回されて生きてきた自分に少し恥ずかしい気持ちになった。
「そうだったのですね」
「そうだ!クロシューロルに旅行にいく予定だったよね? 行き先を少しばかり変えてみないか?」
「行き先の変更ですか?」
「あぁ。このお茶の生産地で東部地方にあるフラーヴァルという街だ。あそこは気候もよくて過ごしやすいんだ。
王家の直轄地で治安もいい。珍しい食べ物も沢山あるし、どうかな? あそこは私が直接領地改革している場所でもある。自慢の街なんだ。是非訪れて欲しい」
直轄地は爵位を持つ貴族達は入ることはない場所よね。どんなところなのだろう。先ほど執事が淹れてくれたお茶はとても美味しかった。
少し興味がわく。
王弟殿下が直接領地改革を行っている?
かなり珍しいことだ。基本的に王族は王城で暮らしているし、親族は国の政務官や外交官などの官職に就いて王都で暮らしていることが多い。
殿下が東部に離れるのはやはり王都から離れた方が身の危険が少ないからなのだろうか?それとも今後、領主としてフラーヴァルの地を収めるためなのだろうか?
「私が行ってもよいのですか?」
「あぁ、もちろん普段は入ってはいけないが君は特別だよ。静養目的だしね。
それにフラーヴァルはクロシューロルよりも近いし街道も整備されていて行き来がしやすいんだ」
「そうなのですね。部屋に戻ったら母と相談してみます」
「うんうん、そうするといい」
そうして少し王弟殿下と雑談した後、私は母の待つ部屋へと戻った。
母はニコニコと私が話すのを待っている。
「おかえり、クリフォード様はどんな方だったの?」
「変わった方だなと思いました」
「変わった方?」
「えぇ。初対面で美しい、婚約者になって欲しいと。よく分からないのでとりあえず断っておきました」
私がそう言うとクスクスと母は笑い始めた。
「そうよね。突然言われたら可笑しいわよね。でも王弟殿下の気持ちも分からなくはないわ」
「何故ですか?」
「だって私とボルボアの自慢の娘なんだもの。息子達が牽制して回っていたけれど、求婚者が絶えなかったのよ?」
「もう、お母様ったら冗談ばかり。そうそう、私がクロシューロルの街に向かう話をしたらフラーヴァルを勧められたわ。
普段は貴族が入ることが許されていない直轄地なのだとか。
私は観光目的だし、殿下を助けたから特別に許可してもらえたの」
「そうなの? それはとても良い事ね。行き先を変更する? 私は良いわよ?」
「折角だからフラーヴァルへ行ってみようかなと思います」
「分かったわ。なら手続きが必要なのでしょう?使いを出した後、手続きをしましょうか」
そうしてあっさりと行き先を変更し、フラーヴァルの街に向かうことになった。
「シャロア様、差し出がましいことを言いました。申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ申し訳ありません」
「クリフォード様は命を狙われており、婚約者が何度も命を狙われたせいでずっと一人で過ごしていたのです。
ここ数年でようやく襲撃が落ち着いては来たのですが、今度はクリフォード様自身、結婚する意思が無くなり、どうにも困っていたのです。
シャロア様、どうか老いぼれのためにどうか、どうか、もう一度お会いして下さるようお願いします。クリフォード様の良さをシャロア様に知ってもらいたいのです」
「そ、そうだったのですね。殿下は何故狙われているのか聞いても?」
「あぁ、それは私から話そう。私が現国王の弟だとは知っているね? 実は異母兄弟なんだが、兄は王妃の子。
俺は側妃の子。歳の離れた兄弟なんだ。兄は俺に優しくしてくれているが、生まれた当初から王妃から疎まれてきた。
よくある話だな。ただ疎まれるだけならよかったんだが、兄の子達は残念ながらまだ人として未熟なんだ」
私は殿下の言葉で思い出される一週間前の王太子の言動。確かに未熟という言葉に納得してしまう自分がいた。
「そこで貴族達は俺を担ぎ出そうと考えた。だが、これに怒ったのは王妃。
今は王太后だな。そこから俺は何度も王太后の差し向ける暗殺者によって命を狙われてきた。
三年前に第一王子が王太子になった事で襲撃は減ったが、まだあのババアは私の命を諦めていないんだ。
エレナの街で襲われた時は護衛がちょうど交代の時間で手薄になった時を狙われた。あの時の君達には感謝しきれない」
彼は昔から苦労してきたのね。私は恋愛感情に振り回されて生きてきた自分に少し恥ずかしい気持ちになった。
「そうだったのですね」
「そうだ!クロシューロルに旅行にいく予定だったよね? 行き先を少しばかり変えてみないか?」
「行き先の変更ですか?」
「あぁ。このお茶の生産地で東部地方にあるフラーヴァルという街だ。あそこは気候もよくて過ごしやすいんだ。
王家の直轄地で治安もいい。珍しい食べ物も沢山あるし、どうかな? あそこは私が直接領地改革している場所でもある。自慢の街なんだ。是非訪れて欲しい」
直轄地は爵位を持つ貴族達は入ることはない場所よね。どんなところなのだろう。先ほど執事が淹れてくれたお茶はとても美味しかった。
少し興味がわく。
王弟殿下が直接領地改革を行っている?
かなり珍しいことだ。基本的に王族は王城で暮らしているし、親族は国の政務官や外交官などの官職に就いて王都で暮らしていることが多い。
殿下が東部に離れるのはやはり王都から離れた方が身の危険が少ないからなのだろうか?それとも今後、領主としてフラーヴァルの地を収めるためなのだろうか?
「私が行ってもよいのですか?」
「あぁ、もちろん普段は入ってはいけないが君は特別だよ。静養目的だしね。
それにフラーヴァルはクロシューロルよりも近いし街道も整備されていて行き来がしやすいんだ」
「そうなのですね。部屋に戻ったら母と相談してみます」
「うんうん、そうするといい」
そうして少し王弟殿下と雑談した後、私は母の待つ部屋へと戻った。
母はニコニコと私が話すのを待っている。
「おかえり、クリフォード様はどんな方だったの?」
「変わった方だなと思いました」
「変わった方?」
「えぇ。初対面で美しい、婚約者になって欲しいと。よく分からないのでとりあえず断っておきました」
私がそう言うとクスクスと母は笑い始めた。
「そうよね。突然言われたら可笑しいわよね。でも王弟殿下の気持ちも分からなくはないわ」
「何故ですか?」
「だって私とボルボアの自慢の娘なんだもの。息子達が牽制して回っていたけれど、求婚者が絶えなかったのよ?」
「もう、お母様ったら冗談ばかり。そうそう、私がクロシューロルの街に向かう話をしたらフラーヴァルを勧められたわ。
普段は貴族が入ることが許されていない直轄地なのだとか。
私は観光目的だし、殿下を助けたから特別に許可してもらえたの」
「そうなの? それはとても良い事ね。行き先を変更する? 私は良いわよ?」
「折角だからフラーヴァルへ行ってみようかなと思います」
「分かったわ。なら手続きが必要なのでしょう?使いを出した後、手続きをしましょうか」
そうしてあっさりと行き先を変更し、フラーヴァルの街に向かうことになった。
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