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 翌日、ファルスと街に出掛けたわ。もちろんしっかりと外出許可証を持って。私達は念のため帯剣して街に出ている。治安はいいとは聞いたけれど、やはり令嬢が1人では歩かない治安らしいので念には念を。
そうそう、もちろん外出時に帯剣するのは認められているわ。学院内での帯剣は駄目だけれどね。騎士科の人の中には帯剣していないと寂しいのか模造剣や木刀を携帯している人が偶にいるのを見かける。私はしないけれどね。

「こんにちは。防具を取りにきました」

そう声を掛けると奥からおじいちゃんが出てきた。

「おお、待っていた。まず坊主合わせてみるからこっちへこい」

 ファルスは服を脱ぎシャツの上から鎖帷子を着る。私が思っていたものより小さな鎖状の物で薄く、重さもさほど気にならない様子。ファルスは着心地を確かめながら動いている。

「じいちゃん、これすげぇな。軽い。これなら動きやすくていいや」
「そうだろう、そうだろう。どれ、嬢ちゃんの分も出来ているから着けてみてくれ」

 私は胸当てを受け取る。胸当て部分は魔獣の革で出来ているようで薄くしなやかなのに引っ張ってもびくともしない。衝撃緩和には効果がなさそうだけれど、刺されたり、切られたりした場合はかなり防いでくれそうな感じ。
そして肩当てとガンレッド、グリーヴの部分には装飾が細かく施されていて屑魔石が宝石のようにちりばめられている。

「胸当ての内側に魔方陣が焼き付けてあるだろう?それは魔法を使った時に隠ぺいする魔方陣だ。これでお嬢ちゃんの魔力はほぼ見えなくなるはずだ。
そして肩当てとガンレッド、グリーヴに埋め込まれた屑魔石が貯めこんである魔力で衝撃を緩和させるのとお嬢ちゃんの魔力を魔石の魔力だと周囲に思わせる事が出来る。例えわずかに魔力が洩れても大丈夫だろう」

 装着してみてびっくり。とてもしっくりくるわ。そして重たさを感じさせない。そしてこの装飾も細かく繊細で私好み。

「おじいちゃん!ありがとう。一目で気に入ったけれど、着てみて更に気に入ったわ」
「そうかそうか。よかった。これを着て闘技大会も頑張るんだぞ」
「「闘技大会?」」
「なんだ知らんのか。学院の騎士科の晴れの舞台とも言っていい大会だ。王都全土から観客がつめかける程の有名な大会でな。歴代の優勝者は大体王宮騎士団長か副団長になっているのだ。レコは例外だがな。
王宮騎士を目指すなら絶対参加だ。それにスカウトも多いし、注目されれば就職に困る事はないと言っても過言ではないぞ」

 レコ!強いとは思っていたけれど、優勝者だったのね。それに歴代の優勝者は今の騎士団長達って凄いわ。

「ファルスは絶対出ないとね」
「なんだマーロアは出ないのか?」
「だって私は冒険者になりたいのだもの。騎士団への就職は希望していないわ」
「そうだったな」
「まぁ、なんだ。活躍を期待しておるぞ」
「「はい!」」

 私達はウキウキした気分で防具を装備したまま学院寮へと帰っていった。そして入学式までの間のする事といえば、日々の鍛錬と勉強。勉強はファルスと学院の図書室や食堂のテラスで一緒に勉強したわ。



 私達がそうやって過ごしている間に平民や貴族の人達は入寮が進んでいき、あっという間に平民用食堂は席の取り合いが始まる事となった。そして私達は寮に住み始めてまだ余裕がないから王都のギルドには行っていないのよね。学校生活が始まって少し余裕が出てきたらいかないとね。


 そして待ちに待った入学式。

 朝からしっかりと起きて制服に着替えて髪も1つに纏め上げたわ。抜かりなくばっちりよ。ファルスも今日ばかりは髪の毛を撫でつけていて、いつもと違う雰囲気だわ。

「馬子にも衣裳というのかしら?ファルスとても似合っているわ」

ファルスは満更でもない様子。

「マーロア様もお似合いでございますよ」

 私達は笑い合いながら式が行われるホールの前に張り出されたクラス表を眺める。

「やっぱり私達はSクラスね。では行きましょう」
「そうだな」

 一応学院は貴族と平民との差は付けない事になってはいるが、やはり幼少期から勉強している貴族達と平民では学力に大きな差があるのは否めない。クラスはSからFまであるが、主に貴族がSクラスとAクラスが殆どである。
 クラスの中にポツポツと平民が混じる感じ。ファルスは平民だけれど、私と一緒に勉強してきて一緒のSクラスとなった。

それからクラスは学力で振り分けられており、共通の授業を教室で受け、騎士科、淑女科、文官科、魔術師科(錬金術含む)、侍女科と専門の学科を学ぶ時は別クラスへと移動となるようだ。私達は入場し、Sクラスの場所の座席に座る。

 私は周りをキョロキョロ見渡したいけれど、流石にそれはマズイと思い、自重したわ。

代わりにファルスがキョロキョロしていたけれど。そして続々と生徒達は席に着き、式が開始された。学院長先生の有難い言葉や在校生代表として生徒会長の話があったわ。次は新入生代表。

どうやら今年は王族が入るのね。挨拶は第三王子のシェルマン殿下が挨拶をしている。

 シェルマン殿下の挨拶が終わると黄色い声援がここぞとばかりに会場中に広がった。確かにカッコいいと思う容姿をしている。ご令嬢達に好かれそうな爽やかイケメンというやつだろうか。

私からみたらひょろっこい感じが否めない、つまり興味はないわ。


 式も終わって引率の先生と一緒にクラスへと向かう。私達はSクラスということで警備の観点からAとSクラスは他のB~Fクラスとは棟が違うらしい。平等と謳いながらその辺はやはり違いを実感するわね。
 私達は1階にあるクラスに入ると座席は15席ほどで名前順に席が決められているようだった。今更だけれど、上位10名に入っている私とファルスは有難く恩恵を享受しているのだけれど、他の8名は貴族のようで恩恵はいらないと辞退されたそうだ。

「さて、着席したな。私がこの1年の担任になるギャルロ・ファースだ。よろしく」

 そう挨拶したギャルロ先生は体育会系のような雰囲気でニカッと笑い皆を纏め上げていきそうだ。そして女子は私を含めて3名。
 後は殿下を含めて12名の男子。気になるクラスメイト、淑女科の公爵令嬢のエレノア様とお付きの子爵令嬢のハノン様。2人ともとても優雅で見惚れてしまうわ。

後はシェルマン殿下の側近で文官科ファノール様やニコライ様、魔術師科のミュル様くらいかしら。そして何故名前で呼んでいるのかと言うと、Sクラスは人数も少なく仲良くなっていこうという担任の提案で名前呼びになったのだ。

 そして今日は流石に授業はないので教科書が配られてこのまま解散となった。

「マーロアお嬢様、帰りますよ」
「そうね。では皆さまごきげんよう」

そう言って教室を出る。ようやく初日が終わったわ。
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