最後の魔法は、ひとを待つための魔法だった

まるねこ

文字の大きさ
36 / 62

36 祝福

しおりを挟む
 ホクホク笑顔になりながら家に戻って木の箱を手にする。

 きっと国中から沢山の贈り物が贈られると思う。

 二人が長く使うもの、幸せを願うもの。

 そんな中には呪いを掛けてくる輩も出てくる。

 よし、私は浄化の魔法を送ろう。

 浄化魔法は一般的なんだけど、とても古い記憶の中にあるオリジナルと言ってもいいものだ。きっとこの魔法円はみんな知らないよね。

 今の魔法円に比べてとても簡単な造りをしているため、呪いから毒から汚れまで全て浄化できてしまう優れもの。

 強力で周囲のもの全て浄化してしまう優れものなの。優しい光をつけて効果が見てわかるようにしようかな。

 魔法で木箱の底を彫り、完成させていく。

 何度か開け閉めして確認したけれど、これは素敵だと思う。

 私は贈り物を完成させ、二人が開けることを想像しながら結婚式の日を楽しみ過ごした。



 えっと、ここの場所は……。

 私はまた魔法円とにらめっこしていると、ジェイド副官から緊急の手紙が送られてきた。

「クロエ様、今日はお二人の結婚式ですよ!早くお越しください」

 え? ああ! 忘れてた!

 私は慌てて正装して王宮魔法使い棟へと転移する。一応、これでも元魔法使い総団長なので正装は持っている。

「ジェイド副官、久しぶり!」
「クロエ様、遅い。待っていましたよ! 式が始まります。急いで」

 私はジェイド副官に手を引かれ、急いで会場へと向かった。

 会場はすでに沢山の貴族でにぎやかな状態だった。

「えっと、私は一番後ろの席だよね?」
「何を言っているんですか? クロエ様は通路左側の前から二番目の席ですよ。新婦の親族席です。リディンナ様は高齢のため欠席です」
「そうなんだ。分かった」

 私は促されるまま席に着いた。

 前にいるのは侯爵とアリアさんの義兄弟だ。彼らからアリアさんを祝福どころか侮蔑する言葉が聞こえてきた。

 アリアさんはずっと家でこの状況だったのかな。親族はバツが悪いのか誰一人口を開こうとしていないようだ。

 私が座って間もなく式が始まった。
 間に合ってよかったよ。

 新郎新婦が入場し、神官から神の祝福を受けて誓いのキスをしている。その瞬間に歓声が起こった。

 アリアさんは顔を赤らめながらもラルド総団長と手を取りとても嬉しそうだ。

 私はその姿をみてどこか肩の荷がおりたような、嬉しい感覚になった。

 でもその想いの中に素敵だな、いいなって思った気持ちにも気づいたの。

 忌み子の私には生涯経験しないもの。

 理解はしている。
 でも、それでも少し、悲しいと思う自分がここにいる。もしかして無意識に自分は逃げていただけかもしれない。

 自分の気持ちをそっと隠すように小さく息を吐いてラルド総団長とアリアさんを祝福する。



 式が終わるのを見届けてから魔法使い棟に戻り、ジェイド副官にお茶を淹れてもらう。

「素敵だったね。これからあの二人はこの国を長く支えてくれるだろうね」
「ええ、本当に。王太子にはまだ子供がいないからもしかしたらお二人の子供が養子になる可能性もありますしね」

「そっかぁ。ジェイド副官も彼女とのこれからを占ってあげようか?」

 ジェイド副官は自分に話が行くと思っていなかったようでブッと噴き出し、目が泳ぎ始める。

 なんだかおもしろい。

 私はクスクスと笑い、鞄に入れていた道具をローテーブルの上に出してみる。

 ここに来る時は魔法使いとして来るので魔女の活動はしていないんだよね。私自身ユーグ師匠の研究を引き継いではいるけれど、エティ師匠の知識もあるので魔女の仕事もできるの。

「えっ、今、ここで、ですか?」
「いいよー。元魔法使い総団長の私が無料で占ってあげるよ?」
「ううっ。なんて貴重な体験。いや、でも彼女とは……」

「じゃぁ、彼女かどうかは置いておいて、将来ジェイド副官がどうなるか見てみようか?ただ、これはあくまで一つの未来でしかないし、これを知ったことで大きく変わる可能性があるけどね」
「本当ですか!? 聞いてみたいです」

 私は水晶を片手に取り、もう片方の手でジェイド副官の魔力を感じ取り、水晶に流し込んで詠唱を始める。

 ―星々の謎に導かれ、その未来の輝きをここに映し、彼の未来への道を照らせ―

 水晶はふわりと光り、これから起こる出来事の一部を映し出しはじめた。

「うん、ジェイド副官。見えたよ。近々三人の女性が結婚しろって迫ってくるね。そのうちの一人は妊娠している。でもね、その人と結婚しちゃだめ。

 子供は別の人の子だからね。そうだねー。多分、見た感じだと一番退屈だって思ってる女性が将来の伴侶として上手くいきそう、かな。

 その人と結婚出来れば安泰。それ以外だと魔法使い棟に入り浸ることになりそう」

 ジェイド副官は思う部分があるのか遠い目をしている。

 未来は一つじゃない。
 本人が変わろうと思えばいくらでも変えることができる。
 選択一つで違う未来になる。

 まぁ、彼を見た感じではここ数年の間に女性問題で痛い目にあうことは間違いないね。

 私は彼を横目にクスクスと笑いながらお茶を飲んだ。

「さて、お茶も飲んだことだし、私は帰ろうかな」
「もう帰るのですか? ラルド総団長とアリア様に会っていってはいかがですか?」

「んーいいよ。二人の幸せな姿を見られたし。それに今は魔法円を読み解いている途中なんだよね。ちゃんと会場の入り口で二人が喜ぶ贈り物もしたし、いいかなー。ジェイド副官から二人によろしく言っといて」
「畏まりました」
「じゃあね!」

 私はそう言って家に戻った。

 アリアさんの花嫁姿は綺麗だったな。

 私はさっきのことを思い出しながら魔法円をまた浮き上がらせる。心痛む現実から目を背けるように、私はまた解読を始めた。



 何か月読み込んだだろう。
 一年は過ぎたかな? もう少し掛かったような気もする。

 私はそう考えながら解読できた喜びに悦に入っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

古堂 素央
恋愛
【完結】 「なんでわたしを突き落とさないのよ」  学園の廊下で、見知らぬ女生徒に声をかけられた公爵令嬢ハナコ。  階段から転げ落ちたことをきっかけに、ハナコは自分が乙女ゲームの世界に生まれ変わったことを知る。しかもハナコは悪役令嬢のポジションで。  しかしなぜかヒロインそっちのけでぐいぐいハナコに迫ってくる攻略対象の王子。その上、王子は前世でハナコがこっぴどく振った瓶底眼鏡の山田そっくりで。  ギロチンエンドか瓶底眼鏡とゴールインするか。選択を迫られる中、他の攻略対象の好感度まで上がっていって!?  悪役令嬢? 断罪ざまぁ? いいえ、冴えない王子と結ばれるくらいなら、ノシつけてヒロインに押しつけます!  黒ヒロインの陰謀を交わしつつ、無事ハナコは王子の魔の手から逃げ切ることはできるのか!?

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

処理中です...