まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

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16 国王様にヒエロスを

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「陛下、落ち着いて下され。で、ナーニョといったな。お主は本当に回復魔法が使えるのか?」
「出来ます。この場でお見せする事も可能です」
「そうなのか!? 一度見てみたい。どうすれば良いのだ?」
「では手を出していただけますか?」

 宰相は途端に目を輝かせて右手を差し出した。

 私は『ヒエロス』と唱えた。指輪は予め嵌めてあるので問題なく魔力は宰相の手に流れていく。

 宰相は剣などの怪我は少ないけれど、ずっと座りっぱなしの仕事をしているせいか腰や首が痛いのかもしれない。

「宰相様は首や肩こり、腰痛をお持ちですね」
「おぉぉ!!! 楽になった。こりゃ凄い!」

 宰相は感嘆の声をあげた。

「陛下にもお願い出来るかな?」
「分かりました」

 私が立ち上がり、陛下の元に行こうとしていたけれど、ローニャがすかさず立ち上がり陛下の横に座った。

「陛下、私が治してあげるね!」

 そう言って国王の手を取って魔法を唱える。

「陛下は昔、魔物討伐をしていたのかな? 左肩が上手く出来ない。これはお姉ちゃんしか出来ないからごめんね。あとはお腹が弱ってる。お酒の飲みすぎは注意してね?」

「ローニャは凄いな。昨日は少しばかり飲みすぎてしまったのだ。これから気を付けよう。ナーニョならこの古傷も治るのか」
「傷にもよりますが、見せて下さい」

 私は立ち上がって陛下の元まで行き、手を取り魔法を唱える。以前ローニャがしていた回復魔法よりも丁寧な魔法の使い方だ。

 ローニャも日々頑張っているのね。

 そうして左肩の引きつれを確認した後、治療していく。数分は掛っただろうか。かなり前の古傷だったので時間はかかってしまった。

「治療は終わりました」

 私は席に戻る。ローニャは陛下の隣に座ったままニコニコとしている。ロキアさんのような優しい雰囲気に安心して側にいるのだろう。

 陛下は確認するように左の肩を回してみる。

「おぉ、これは本物だ。治っている。凄いな」

 陛下も宰相も私達の事を信用してくれたようだ。そこからは真面目な話になる。

「ナーニョ達は魔法使いなのか?」

 陛下の問いに首を横に振る。

「獣人の世界では皆、大なり小なり魔力を持っています。その中でも魔法使いと名乗れるのはごく一部。私は魔法使いになるために国王軍の試験を受け、合格しました。ローニャを連れて王都の街に移動しようとして魔物に襲われ、逃げた時に穴に落ちてしまったのです。正確にはまだ魔法使い見習いにもなっていないです」

「そうなのか。色々な魔法が使えるのか?」
「指輪によると思います。私達獣人は魔力を持っていても人間のように上手く体外に放出できません。このような指輪や装飾品を通して魔法を使うのです。昔の獣人たちは人間のように発音が出来なかったため、指輪に言葉を刻み簡単に言葉を唱えるだけで使えるようにしています」

 私はヒエロスの指輪を外し、宰相に見せる。指輪を受け取った宰相は指輪を食い入るように見て、陛下に手渡した。

「先ほど治療したのはこの指輪か。この指輪の言葉は?」
「ヒエロスです」

 すると陛下は小指に指輪をはめて『ヒエロス』と唱えてみた。だが、反応は全くないようだ。

「残念ながら反応はないようだ」

 少し残念そうな顔をしている。ナーニョは指輪を返してもらい、指に嵌める。

「君達を見ていると発音が出来ないようには見えないのだが……?」
「私達は祖母が先祖返りをしているのです。人間の血が濃い場合は魔力を多く受け継ぎ、人間に近い容姿になります。反対に獣人の先祖返りをすれば体毛に覆われ、より獣に近い容姿になります。大昔の獣人は人間の言葉はカタコトだったのだと思います」

「ということは、指輪をつけ、ナーニョ達は呪文を唱える事が出来れば指輪の呪文に頼らず魔法は使用可能なのか?」
「……可能ではあると思います。ですが、私達はその文言を唱えることを禁止されていました。代わりに魔法使いは地面に魔法円と呼ばれるものを書いて魔法を使うのは知っています」

 何故言葉を使わないのかというと、やはり発音を危惧したせいだろう。

 一言でも間違えれば魔法は発現しない。それならまだ良いのだが、一歩間違えれば大惨事になるかもしれないからだ。地面にでも書けば間違いに気づきやすい。

 祖母や一部の魔法使いは唱えていたのかもしれないが。そこは見習いにもなっていないので分からない。

「ナーニョは指輪に刻まれた言葉を読むことは出来るのかな?」
「読むことは出来ます」

「見たところ我々の使っている古語のようだ。読めなくはないが全ては分からないな。研究者なら読むことが可能なのだろう」
「大昔は落ち人がたまにいたから落ちてきた別世界の人間かこの世界の人間の言葉を元にしているのだろうな。今は回復の指輪だけを持っているのだろうか?」

「いえ、私は回復と浄化、結界の三つと母の指輪を持っています。ローニャは回復と浄化と土質改善と父の指輪です」

 ローニャは退屈なようで宰相が淹れてくれたお茶を飲み、用意されていたお菓子をもぐもぐと口いっぱいに放り込んでいる。

「子供の頃から使っているのか?」
「私達獣人は大体六歳から十歳までの間に指輪を親から貰います。最初に貰う指輪の種類は人に怪我させないような安全な指輪です」
「君達の持っている指輪の事を詳しく聞いてもよいか?」

「ヒエロスは簡単な怪我を治癒する魔法、ヒーストールは異界の穴を予防するための浄化魔法、ヒュールヒュールは自分の身を守るための結界魔法です。
 ローニャの持っている指輪はサーローと言って畑の土質を改善するための魔法です。後は父と母の指輪ですが、形見なので使うことは滅多にないです」

「魔法には様々な物があるのだな。その指輪を見ると真鍮で出来ているように見えるが何で作っているのか分かるかい?」
「すみません、素材まではわからないです。ただ、裕福な方は金色の指輪を使ったりしていました」
「そうか。興味深い。二人の話をもっと聞きたい」

 陛下はフムフムと頷きながら何かを考えている。
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