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26 重傷患者の治療
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「エリオット、ローニャ様に無理させてはならん。体調を気にしておいてくれ」
「わかりました」
私たちは患者がいる部屋の前で少し話した後、ローニャと助手のエリオットさん、第一研究室のマイアさん、ゼロさんが部屋に入っていった。
私はザイオン医務官と上の階に移動し、重症患者の元へいく。
ここは治療が遅れた人も多いようで包帯を取り換えても出血や化膿して膿が出ていたりする患者もいるようだ。血の匂いや壊死する独特な匂いに思わずハンカチで鼻を覆いたくなる。
「お待たせしました」
私たちが部屋に入ると同時に第二研究室の人が二人ほど部屋に入ってきた。ローニャの所にも二人ほど向かったらしい。
私たちは軽く会釈する程度に挨拶をした後、ザイオン医務官は治療する患者の状況を話してくれた。
「この患者は治療が遅れたため両足が壊死し始めております。薬を飲ませて様子を見ている状況でしたが、今日か明日の具合で両足切断を判断せざるを得ない状況です」
「嫌だ!!! 嫌だ! 足を切らないでくれ!」
騎士はザイオン医務官の言葉に叫び、暴れ始める。
「取り押さえろ」
ザイオン医務官の声で下女たちが暴れる騎士を取り押さえた。その様子を見ていたナーニョは彼の前に立ち、声を掛けた。
「落ち着いて、大丈夫よ。足は切らないわ。下女の方々、押さえなくても大丈夫です」
不安そうにしながら下女たちは押さえる力を緩めた。
「お願いだ!! 殺さないでくれ! 嫌だ! 嫌だ!」
「大丈夫よ。私の手を取って」
ナーニョはそう言ってパニックになり叫んでいる騎士の手を取った。
「嫌だ、死にたくない、死にたくないんだ」
彼はナーニョの手を力いっぱい掴んでいる。その様子を見ていたザイオン医務官が慌てて止めに入ろうとするがナーニョは断った。
「大丈夫、今、治しますから」
そうしてナーニョは魔法を唱えた。光はナーニョの手から患者に広がっていく。光は足の方へと向かい強い光になった。
「あぁ、暖かい。なんて気持ちいいんだ……」
先ほどの緊迫したような声が柔らかな声に変わっていく。
「もう大丈夫ですよ。足は治療しました。ですが、壊死した部分からばい菌が体中を巡っていたので当分は安静にして下さいね」
騎士は自分の足の感覚が戻った事に気づき動きを止めた。
「あ、ありがとう。ありがとうございます……」
涙を流しながらお礼を言う患者にナーニョは手を握り返し、微笑む。
「ナーニョ様、ばい菌とは一体なんでしょうか?」
「私も詳しくは分かりませんが、目に見えないほどの小さな生き物らしくて、それが人にとっていい物も悪い物もいるらしいのです。そしてその悪いものをばい菌と私たちは呼んでいました。
ばい菌はいたるところにいて増えると、悪さをするんです。お腹が痛くなったり、病気になったりするのだと私たちの世界の神父様は言っていました」
ザイオン医務官は私の説明に理解できたのか頷いている。
「ナーニョ様、身体中にばい菌が巡っているのは分かるのですが、彼は大丈夫なのでしょうか?」
「さっきまで身体は怪我を治療するのを優先してばい菌の繁殖に身体の抵抗が追いついていない状態だったのだと思います。
ばい菌は血の中で増えて身体のあちこちを攻撃しているけれど、私の魔法ではばい菌を殺すことは出来ない。
でも、今は攻撃されている箇所の治療と怪我の治療と共に終えました。
幸い、薬も効いているようなので安静にしていれば自然に身体がばい菌を殺してくれると思います。ただ、薬は当分飲み続けた方が良いのかなぁと思いました。
こればかりは私に分からないのでザイオン先生の判断でお願い致します」
「分かりました」
魔法は万能ではない。あくまで怪我を治療するだけなのだ。
「次の患者は右手と両目を無くしております。腹部の出血が未だ止まらず昨日の部屋へいつ移動になるかと話をしていたところです」
ザイオン先生は淡々と患者の状況を話す。その様子を見ていると悲しくなった。先生にとってはいつもの事。たくさん患者を見送ってきたのだと。
「死にたい、殺してくれよ……。こんなんじゃ生きていても意味が、ない……」
か細い声で話をする患者。
「ごめんなさい。今は貴方の怪我を治療することしか出来ない。けれど、研究所の方がよりよい道具を開発したら……貴方の光を失った目も、無くなった腕も、治せるようになる。私も頑張って治療するから、希望を失わないで」
そう言って魔法を唱えた。やはり腹部の傷は修復しようと身体が頑張っているのだろう。
けれど、出血が止まらないのは精神的な物も影響しているのかもしれない。
両目の光が失われたとザイオン先生は言っていたけれど、辛うじて左目は眼球が残っている。これなら治せそうだ。光が患者を包み、怪我を治療していく。
「……治療が終わりました。左目は見えるようにはなっていますが、どこまで視力が戻っているかは分かりません。何度か治療が必要になるかもしれないです」
「分かりました。後で確認しましょう」
研究所の人達は黙って状況を観察しているようだ。
「痛みがない。……治療、ありがとうございます。貴女様のお名前は……?」
「私ですか? ナーニョ・スロフと言います。きっと研究所の人が今よりも良い物を開発してくれると信じています。欠損は治せる。希望を捨てないで下さい。また治療しにきますね」
「……はい。あ、りがとう、ございます」
大丈夫、魔力はまだ十分に残っている。
こうして一人ひとりに声を掛けながら治療していった。
「わかりました」
私たちは患者がいる部屋の前で少し話した後、ローニャと助手のエリオットさん、第一研究室のマイアさん、ゼロさんが部屋に入っていった。
私はザイオン医務官と上の階に移動し、重症患者の元へいく。
ここは治療が遅れた人も多いようで包帯を取り換えても出血や化膿して膿が出ていたりする患者もいるようだ。血の匂いや壊死する独特な匂いに思わずハンカチで鼻を覆いたくなる。
「お待たせしました」
私たちが部屋に入ると同時に第二研究室の人が二人ほど部屋に入ってきた。ローニャの所にも二人ほど向かったらしい。
私たちは軽く会釈する程度に挨拶をした後、ザイオン医務官は治療する患者の状況を話してくれた。
「この患者は治療が遅れたため両足が壊死し始めております。薬を飲ませて様子を見ている状況でしたが、今日か明日の具合で両足切断を判断せざるを得ない状況です」
「嫌だ!!! 嫌だ! 足を切らないでくれ!」
騎士はザイオン医務官の言葉に叫び、暴れ始める。
「取り押さえろ」
ザイオン医務官の声で下女たちが暴れる騎士を取り押さえた。その様子を見ていたナーニョは彼の前に立ち、声を掛けた。
「落ち着いて、大丈夫よ。足は切らないわ。下女の方々、押さえなくても大丈夫です」
不安そうにしながら下女たちは押さえる力を緩めた。
「お願いだ!! 殺さないでくれ! 嫌だ! 嫌だ!」
「大丈夫よ。私の手を取って」
ナーニョはそう言ってパニックになり叫んでいる騎士の手を取った。
「嫌だ、死にたくない、死にたくないんだ」
彼はナーニョの手を力いっぱい掴んでいる。その様子を見ていたザイオン医務官が慌てて止めに入ろうとするがナーニョは断った。
「大丈夫、今、治しますから」
そうしてナーニョは魔法を唱えた。光はナーニョの手から患者に広がっていく。光は足の方へと向かい強い光になった。
「あぁ、暖かい。なんて気持ちいいんだ……」
先ほどの緊迫したような声が柔らかな声に変わっていく。
「もう大丈夫ですよ。足は治療しました。ですが、壊死した部分からばい菌が体中を巡っていたので当分は安静にして下さいね」
騎士は自分の足の感覚が戻った事に気づき動きを止めた。
「あ、ありがとう。ありがとうございます……」
涙を流しながらお礼を言う患者にナーニョは手を握り返し、微笑む。
「ナーニョ様、ばい菌とは一体なんでしょうか?」
「私も詳しくは分かりませんが、目に見えないほどの小さな生き物らしくて、それが人にとっていい物も悪い物もいるらしいのです。そしてその悪いものをばい菌と私たちは呼んでいました。
ばい菌はいたるところにいて増えると、悪さをするんです。お腹が痛くなったり、病気になったりするのだと私たちの世界の神父様は言っていました」
ザイオン医務官は私の説明に理解できたのか頷いている。
「ナーニョ様、身体中にばい菌が巡っているのは分かるのですが、彼は大丈夫なのでしょうか?」
「さっきまで身体は怪我を治療するのを優先してばい菌の繁殖に身体の抵抗が追いついていない状態だったのだと思います。
ばい菌は血の中で増えて身体のあちこちを攻撃しているけれど、私の魔法ではばい菌を殺すことは出来ない。
でも、今は攻撃されている箇所の治療と怪我の治療と共に終えました。
幸い、薬も効いているようなので安静にしていれば自然に身体がばい菌を殺してくれると思います。ただ、薬は当分飲み続けた方が良いのかなぁと思いました。
こればかりは私に分からないのでザイオン先生の判断でお願い致します」
「分かりました」
魔法は万能ではない。あくまで怪我を治療するだけなのだ。
「次の患者は右手と両目を無くしております。腹部の出血が未だ止まらず昨日の部屋へいつ移動になるかと話をしていたところです」
ザイオン先生は淡々と患者の状況を話す。その様子を見ていると悲しくなった。先生にとってはいつもの事。たくさん患者を見送ってきたのだと。
「死にたい、殺してくれよ……。こんなんじゃ生きていても意味が、ない……」
か細い声で話をする患者。
「ごめんなさい。今は貴方の怪我を治療することしか出来ない。けれど、研究所の方がよりよい道具を開発したら……貴方の光を失った目も、無くなった腕も、治せるようになる。私も頑張って治療するから、希望を失わないで」
そう言って魔法を唱えた。やはり腹部の傷は修復しようと身体が頑張っているのだろう。
けれど、出血が止まらないのは精神的な物も影響しているのかもしれない。
両目の光が失われたとザイオン先生は言っていたけれど、辛うじて左目は眼球が残っている。これなら治せそうだ。光が患者を包み、怪我を治療していく。
「……治療が終わりました。左目は見えるようにはなっていますが、どこまで視力が戻っているかは分かりません。何度か治療が必要になるかもしれないです」
「分かりました。後で確認しましょう」
研究所の人達は黙って状況を観察しているようだ。
「痛みがない。……治療、ありがとうございます。貴女様のお名前は……?」
「私ですか? ナーニョ・スロフと言います。きっと研究所の人が今よりも良い物を開発してくれると信じています。欠損は治せる。希望を捨てないで下さい。また治療しにきますね」
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こうして一人ひとりに声を掛けながら治療していった。
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