まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

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31 王都の食堂

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「お姉ちゃん、私王都の食堂というところで料理を食べてみたいの! 騎士さん達が言ってたんだ。有名なお店があるらしいんだ」
「じゃあ、エサイアス様に言ってみようか。エサイアス様の許可が出ればそこで食事をしましょう」

 私たちは生成りのシャツとズボン、帽子を被って玄関ホールへ向かうとエサイアス様もラフな格好をしていた。

「お待たせしました」
「いや、待っていないよ。二人ともよく似合っている。王都は治安がいいけれど、可愛い子にはちょっかいを掛ける輩も大勢いるから気を付けてほしい」
「「はい!」」

 そう言うと私たちは邸を出て歩き始めた。

 馬車から見る景色も新鮮だったけれど、歩いてみると見慣れない物が多くて新鮮に映り、ついキョロキョロと見まわしてしまう。

 ローニャは少し不安なようで私は手をつないで歩いている。

「二人とも街まであと少しだけど、疲れたらいつでも言ってくれ」
「はい」

 街の中心部に向かうにつれて人通りが多くなってくる。

 今日はロキアさんからお小遣いを貰ったので何を買おうかとドキドキしながら露店を見て回っているの。

 露天商の声が飛んでくる。その声に引き寄せられる人たち。野菜や果実、書籍を売る店もある。町はとても賑わっていて見ている私たちも楽しくなり、何か買いたい気持ちになってくる。

「エサイアス様、何がお勧めですか?」
「そうだね、王都名物はグァルロームという食べ物かな。グァルという動物の肉を塩漬けして燻製にしたもので大きくて日持ちのするんだ。たまにうちでもロティに乗っているだろう?」
「あれなんですね」

 ローニャは先ほどまでの不安な様子は消え、目を輝かせ露店を見ている。

「私は美味しい木の実が食べたい!」

 私たちはなんだかんだと雑談しながら露店街を歩いていく。

「ナーニョ嬢、ローニャ嬢、二人にこれはどうかな?」

 エサイアス様は髪飾りを私たちに見せた。

「王都は職人も多いから細かな装飾を作る人が多いんだ。普段使いならこの辺はどうかな?」
「わぁ!! 可愛いっ。これ、欲しい!」

 ローニャは小さな花が付いた髪飾りをとても気に入ったようだ。花の部分はガラス細工なのだろうか。
 とても細かな細工がされていてとても綺麗だった。

「二人ともお目が高い。ここだけの話ですが、王太子殿下もお忍びで来て買われるのですよ」
「そうなの? 凄いねー」
「店主、二つ買うよ」
「まいどあり!」

 私たちはつぶれないようにそっと鞄に入れて散策を続ける。

「エサイアス様、騎士の人たちが言っていた美味しい料理を出す食堂に行ってみたいわ!」
「ローニャ嬢が聞いたのはマーボの店のことだろうか? あそこは騎士達がよく行く店だ。私もよくあの店には行くんだ」
「美味しいの?」

 ローニャは目を丸くしながら嬉しそうに聞いている。エサイアス様も笑顔で答えた。

「あぁ。ファラナ肉のステーキが美味しい。他にも色々な食べ物があるから行ってみようか」
「うん!」

 エサイアス様はこっちだよと私たちを連れて歩いていく。

 五分も歩かないうちに辿り着いた。入り口には大きな看板が書かれていて『マーボの店』という店の名前らしい。

 私たちはワクワクしながら店に入ると、レンガ造りで長テーブルが幾つか置いてあり、空いているスペースに座って店員を呼ぶというスタイルのようだ。

 昼前という事もあって人はまばらだが、私たちの後からも人が絶えず店に入ってくる。

 席について壁にあるメニュー表を私はゆっくりと文字を口に出して確認しながら読みあげるけれど、ローニャはスラスラと読んでいる。

 ……羨ましい。
 私ももっと勉強しなくちゃいけないわ。

「二人とも食べるものは決めたのかな?」
「私はバーヤ魚のパスタ! お姉ちゃんは?」
「よく分からないけど、ナー? ベナの煮込みを頼んでみるわ」

 ローニャは勢いよく手を振り、店員を呼び注文した。

「どんなのがくるのかなぁ?」

 ローニャはワクワクした表情で周りの様子を見ている。尻尾を出していたならきっとひょこひょこと動いていただろう。

「ローニャちゃん、本当に食べに来てくれたんだ」

 声のする方に視線を向けると、そこには騎士服を着た人が三人立っていた。

 どうやら先日ローニャが治療をした人たちのようだ。

 私とエサイアス様に気づくと途端に彼らは畏まった状態で礼をしている。

「俺達は今、休日だから気にしなくていい」
「は、はい!」
「先日はローニャがお世話になりました。傷はしっかり治療できたでしょうか?」

「もちろんです! 僕は腕を骨折していたのですが、この通り! 昨日から仕事に復帰しています」
「私もローニャさんに治療して頂きました」
「そうだよー。このお兄さんは鼻が曲がっていて痛そうだったんだー」

「そうなんです。医務官からは治っても元の顔には戻らないと言われていたのですが、こうして治療していただいて感謝しかありません」

 もう一人は同僚のようだ。

「ちゃんと治って良かったね! また美味しいお店を見つけたらローニャに教えてね!」
「わかったよ! 必ず教えるからね!」
「じゃぁね~」

 挨拶をした後、彼らは少し離れた席に座った。

 相変わらずローニャは世渡り上手だ。姉の私よりもずっと強かだなと思ってしまう。

 素直でいい子でとても賢く強かなローニャをちょっと自慢だと思うし、羨ましくも思ってしまう。

 その様子をエサイアス様がじっと見つめていたことに、私は気づいていなかった。

「お待たせしました! お熱いのでお気をつけ下さいね♪」

 髪を一つに結んだ可愛い店員さんは元気よく料理を運んできた。

「お姉ちゃん、美味しそうだよ」
「そうね、お祈りをしてからいただきしましょう」

 お祈りをした後、三人で料理を食べ始める。

「ここではお邸で習ったようなマナーは必要ないのですね」
「うん。ここは平民が多いお店だからね。美味しく食べられればそれでいいんだ」

「ん~おいしぃっ。お魚が美味しいよ! こんなに美味しいお魚、食べたことない」
「ローニャ、はしたないわ。詰め込みすぎよ。ゆっくり食べなさい」
「はーい。あまりに美味しくてつい興奮しちゃった」
「ほらっ、顔にソースが付いているわ」

 私がローニャの口の周りを拭いていると、エサイアス様は微笑んでいた。

「エサイアス様、はしたなくてすみません」
「いや、全然かまわない。二人とも仲が良いんだなって思って。料理は美味しいか?」
「うん! とっても美味しいよ! エサイアス様連れてきてくれてありがとう」

 ローニャの言葉に私ももうなずいた。

 ナーニョの注文した料理はどんなものがくるのだろうかと思っていたら野菜の煮込みだった。

 見慣れない丸い野菜がゴロリと入っていて、フォークを刺すとホロリと崩れ、口に入れると口当たりがよくて驚いた。少し酸味の効いたスープにロティを浸して食べていく。

「ナーニョ嬢、どうかな?」
「とっても美味しいです。このお野菜がホクホクしていて口に入れるとふわぁっと溶けていく感じが好きかも。エサイアス様、連れてきてくれてありがとうございます」
「ナーニョ嬢、喜んでくれて私も嬉しい。またみんなで食べに来よう」

 私たちは初めての王都の街の散策でたくさんの刺激を受けた。

 ローニャは邸に帰ってからも興奮しっぱなしでずっと話をしていたもの。

 マーサは相槌を打ちながら止まることのない私とローニャの会話を聞いていた。
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