まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

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38 顔合わせ

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 ―コンコン 

「カシュール様、ナーニョ様とローニャ様をお連れしました」

 ロジャーさんが扉をノックし、声を掛けて入った。

 ここはサロンという部屋なのだとか。

 貴族の邸にはシガールーム(喫煙室)やサロンと呼ばれる部屋があり、家族の団らんや客人とお茶をしたりするための部屋なのだそうだ。

 豪華絢爛な部屋に私もローニャもきょろきょろと目が泳がせずにはいられなかった。

 サロンに居たのは陛下と王妃、王太子殿下と王太子妃殿下、第三王子殿下と呼ばれる方々だった。

「初めまして。ナーニョ・スロフと言います。こっちが妹のローニャ・スロフです。これからここでお世話になると聞いてやってきました。よろしくお願い致します」
「ローニャ・スロフです。よろしくお願いします」

 私たちは帽子を取り、一礼をする。

 すると陛下はクシャリと顔を崩して頬笑み、向かいのソファに座るように促した。

 私たちは緊張しながらソファに座るが、陛下以外の人たちの視線が気になって仕方がない。

「彼女たちが落ち人、なんだね。信じられないが、信じるしかないだろう。そ、その、耳は本物なのかい?」
「はい。私たちは猫種の獣人です」
「可愛い。我が家に女の子がいなかったから娘が出来て嬉しいわ」

 ナーヴァル王太子殿下は不審そうな目で見ながら尋ねてきた。反対に王妃は陛下と同じように孫を見るような目で私たちを見ている。

 以前、研究所の人たちから王族の方々の名前を教えてもらった。

 現在国王陛下の名はカシュール・ヘルノルド・アローゼン様、王妃の名はグランディア様、王太子殿下はナーヴァル様、王太子妃はグレイス様。そして第三王子はケイルート様だ。

 現在の王太子は第二王子で第一王子だった人は騎士団を纏めていて魔獣との戦いで亡くなったようだ。

 現在騎士団を率いているのは第三王子のケイルート様だ。英雄エサイアス様がいるためあまり表に出てこないらしい。

「あぁ、君がナーニョとローニャだね。色々と話は聞いている。こんなに可愛い妹ができて嬉しい。エサイアスは絶対に私に会わせないようにしていたからな。

 酷い話だが納得だ。こんなに可愛い子猫ちゃんなら可愛がりたくなるのも無理はない。ローニャ、ケイルート兄様って呼んでみてくれ」

「け、ルート兄様、よろしくね?」
「んー可愛いな! ローニャ。俺に子供がいたらこんな感じなんだろうなぁ。ナーニョも言ってみくれ」
「ケイルート兄様、これからよろしくお願いします」

「ナーニョも可愛い。父上、俺は全力で妹達を守ります!俺が認める奴以外は嫁に行かせない」
「こらっ、ケイルート。はしゃぎすぎだ。お前がはしゃぐのは分かるが、彼女達が怯えるだろう」

 ナーヴァル兄様がケイルート兄様を諫めた。

 ケイルート兄様は騎士団を纏めているだけあってとても身体が大きく、熊獣人を思わせる。反対にナーヴァル兄様は細身でキリッとした顔つきをしていて女の子に人気がありそうだ。

 獣人の世界では力の強い熊が大人気なのは言うまでもない。

「まぁまぁ、お前達。二人とも仲良くするように」

「ナーニョさん、ローニャさん、これからよろしくね。これからはお母様って呼んでほしいわ。もちろんカシュールはお父様ね」
「「お父様、お母様これからよろしくお願いします」」

 陛下と王妃様は優しく話かけてきた。

「ところで騎士達が二人の魔法で怪我が治ったと騒いでいるようなのだが、それは本当なのか?」
「あぁ、本当だ。儂の古傷もナーニョが治したんだぞ? 丁度いい、ケイルート。お前もナーニョに治してもらえ。お前もガイのようになってはならんからな。お前達も見るといい」

 父となった陛下がケイルート兄様にそう話している。ガイというのは亡くなった第一王子のことのようだ。

「ケイルート兄様、怪我をしているのですか?」
「あぁ、背中を少し、な。でも深い傷ではないから大丈夫だ」

「大丈夫ではない。怪我を見せてみろ」

 ケイルート兄様は拒否しようとしていたけれど、父の言葉で渋々服を脱ぎ怪我を見せた。

 肩から腰にかけて付けられた爪の跡があり、とても痛々しそうで母様やグレイス義姉様は目を背けてしまった。

「お母様、無理しないでくださいね」
「……ごめんなさい。息子の痛みに目を背けては母親失格よね」

 お母様はそう言ってケイルート兄様の傷と向き合うことにしたようだ。

 思っていたよりもずっと深い傷。

 ずっと我慢していたのだろう。

 私ならケイルート兄様を癒すことができる。

 私は怪我を見て無意識に近い状態で指輪を嵌めていた。

「ケイルート兄様、これだけの深い傷。我慢してはいけないわ」

 私はケイルートの肩に手を置き、魔法を使う。

 すると指輪を通して魔力がケイルートの身体を巡り、淡い光を帯びはじめた。

 ……やはり今一番大きな傷は背中ね。

 だけど、右前腕の傷も相当深い。
 怪我を隠して戦い続けているのだろうか。

 他にも目に見えない小さな傷がいくつか感じる。攻撃と言うよりも誰かを守って怪我をするような怪我の仕方だ。

 怪我の確認をしながら治療をする。見た目で分かる背中の傷はあっという間に綺麗に無くなった。

 それを見ていた母達は驚き、とても喜んでいるのがわかった。
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