39 / 125
39 ケイルートの治療
しおりを挟む
「ケイルート兄様はいつも誰かを庇う戦いをしているのでしょうか? それに右前腕の傷も深くて固着しかけているわ。古傷も小さな傷もたくさんある。あまり無理はしないで下さいね」
「!!! ……治っている。ナーニョ、ありがとう。父上、何故養子にしたんだ。私の妻でも良かったのではないですか」
「お前はそう言うと思った。だから娘にしたのだ。こんな幼い子達をお前の妻にはできん」
「父上っ!? 俺をそんな目で見ていたのですか??」
「あぁ、そうだが?」
「し、心外ですよ。ただ小さな物を集めるのが趣味なだけで幼い子とどうにかなりたいという願望は持っておりませんが!?」
必死に誤解を解こうとするケイルート兄様にローニャは笑いはじめる。
「ローニャ!?」
「ケイルート兄様、面白い。ローニャ、熊の獣人は大好きだよ! 熊の獣人はね、こんなにおっきくて、力が強くて、誰よりも優しいんだよ? 兄様は熊の獣人みたい」
ローニャの言葉にナーヴァル兄様やグレイス妃も笑い出す。
「相変わらずローニャはいい子だな。何か欲しい物はないか?」
「んー王女様って勉強がいっぱい必要なんだよね? マイアさんが言っていたの。私、この国の研究員になって働きたいから勉強を教えてくれる人が欲しい。駄目かな?」
ローニャの突然の願いに私は驚いた。
まさかここでそんなお願いをするなんて、と。
「ふふっ。ローニャはなんて偉い娘なのでしょう。いつも勉強から逃げていたナーヴァルたちとは大違いね」
「は、母上っ。今はきっちりと仕事をしているではありませんかっ」
どうやらナーヴァル兄様は勉強嫌いでいつも教師から逃げ回っていたようだ。
「ははっ。ローニャ、いいぞ。二人には最高の教師を付ける。ナーニョは欲しいものはあるか?」
「わ、私は、騎士の方々が着ているような動きやすい服が欲しいです。きっとこれから先、怪我の治療をしたり、ケイルート兄様に付いて行ったりすることも増えると思うので動きやすい格好がしたいです」
私の言葉に先ほどの温かな雰囲気が一変した。お父様たちは一様に真剣でいてどこか暗い顔をしている。
「……そうか。視察に付いていく意思はあるのか」
「お父様には話をしましたが、私の両親は、幼い頃に魔物に殺されました。私たちはずっと二人で生きてきたのです。私は妹を守りたい。こうしてお父様達の庇護下に入る事でローニャを守る事ができるのであれば私は協力を惜しみません」
「なんていい子たちなのっ。この位の貴族の娘なら着飾る事を望むというのに勉強したいとか兄を守りたいとかっ。爪の垢を煎じて飲ませてやりたいわ」
「やはり儂の目に狂いはないようだな。ナーヴァル、ケイルート、二人とも妹を守るのだぞ?」
「分かっております。父上」
「もちろんです」
それからはまた和やかな雰囲気になり、獣人の世界の話をする事になった。
お父様は異世界の生活に興味があるようだった。
特に王都や村での生活はどうしていたのか詳しく話して聞かせた。お父様たちは私たちが村の教会で育っているのに食事や読み書きができることに驚いていた。
獣人たちの世界の方が村に食糧が行き渡るほど恵まれているのだと考えたようだ。
「ローニャはね、魔法で村の畑の作物を育てるお手伝いを毎日していたんだよ!」
「魔法で作物を育てるお手伝い?」
「うん、そうだよ」
「このサーローの指輪で土に栄養をあげて、別の指輪で成長させるの。でもね、一気にやっちゃうと美味しい野菜は出来ないから少しずつ使うんだ」
「それは凄いな。魔法でそんなこともできるのか」
「でもねーこの魔法は難しいんだよ! 野菜の種類によって土の栄養が違うの。それを見極めて魔法を上手に使わないといけないんだよ。ローニャは得意なの。村で一番上手だったんだ」
「そうなのか。ローニャは村一番でとてもえらかったのか。えらいな」
騎士達の治療が落ち着けば食糧不足を改善するためにローニャが協力することになる。
魔獣と戦うよりもずっと安全だし、依頼があればローニャも喜んで協力すると思う。
しばらく話をした後、ローニャは眠くなり、ウトウトしはじめると家族はそれぞれ部屋に戻る事になった。
ケイルート兄様がローニャを抱っこして私たちの部屋を案内してくれた。
「ケイルート兄様、ありがとうございます。これから妹として頑張りますね」
「今からそう気を揉まなくても大丈夫さ。父上の可愛がる気持ちも分かる。俺にこんなにも可愛い妹が出来たことが嬉しい。もっといっぱいわがままを言ってくれ。ではまた夕食に」
そう言いながら兄様はローニャをベッドに降ろして部屋を出た。
慣れるまではローニャと同じ部屋で過ごすことになった。
私たちに用意された部屋はとても可愛い家具で統一されていて猫種だからなのか猫足の家具にカーテンは猫が刺繍されている。
もしかしてこれは陛下が思う私たちのイメージなのかもしれない。
そう思うとクスリと笑ってしまった。
夕食までの間、私は部屋に置いてあった本を手に取り読む。
絵本のような文字の少ない本で私にはとても読みやすかった。
「!!! ……治っている。ナーニョ、ありがとう。父上、何故養子にしたんだ。私の妻でも良かったのではないですか」
「お前はそう言うと思った。だから娘にしたのだ。こんな幼い子達をお前の妻にはできん」
「父上っ!? 俺をそんな目で見ていたのですか??」
「あぁ、そうだが?」
「し、心外ですよ。ただ小さな物を集めるのが趣味なだけで幼い子とどうにかなりたいという願望は持っておりませんが!?」
必死に誤解を解こうとするケイルート兄様にローニャは笑いはじめる。
「ローニャ!?」
「ケイルート兄様、面白い。ローニャ、熊の獣人は大好きだよ! 熊の獣人はね、こんなにおっきくて、力が強くて、誰よりも優しいんだよ? 兄様は熊の獣人みたい」
ローニャの言葉にナーヴァル兄様やグレイス妃も笑い出す。
「相変わらずローニャはいい子だな。何か欲しい物はないか?」
「んー王女様って勉強がいっぱい必要なんだよね? マイアさんが言っていたの。私、この国の研究員になって働きたいから勉強を教えてくれる人が欲しい。駄目かな?」
ローニャの突然の願いに私は驚いた。
まさかここでそんなお願いをするなんて、と。
「ふふっ。ローニャはなんて偉い娘なのでしょう。いつも勉強から逃げていたナーヴァルたちとは大違いね」
「は、母上っ。今はきっちりと仕事をしているではありませんかっ」
どうやらナーヴァル兄様は勉強嫌いでいつも教師から逃げ回っていたようだ。
「ははっ。ローニャ、いいぞ。二人には最高の教師を付ける。ナーニョは欲しいものはあるか?」
「わ、私は、騎士の方々が着ているような動きやすい服が欲しいです。きっとこれから先、怪我の治療をしたり、ケイルート兄様に付いて行ったりすることも増えると思うので動きやすい格好がしたいです」
私の言葉に先ほどの温かな雰囲気が一変した。お父様たちは一様に真剣でいてどこか暗い顔をしている。
「……そうか。視察に付いていく意思はあるのか」
「お父様には話をしましたが、私の両親は、幼い頃に魔物に殺されました。私たちはずっと二人で生きてきたのです。私は妹を守りたい。こうしてお父様達の庇護下に入る事でローニャを守る事ができるのであれば私は協力を惜しみません」
「なんていい子たちなのっ。この位の貴族の娘なら着飾る事を望むというのに勉強したいとか兄を守りたいとかっ。爪の垢を煎じて飲ませてやりたいわ」
「やはり儂の目に狂いはないようだな。ナーヴァル、ケイルート、二人とも妹を守るのだぞ?」
「分かっております。父上」
「もちろんです」
それからはまた和やかな雰囲気になり、獣人の世界の話をする事になった。
お父様は異世界の生活に興味があるようだった。
特に王都や村での生活はどうしていたのか詳しく話して聞かせた。お父様たちは私たちが村の教会で育っているのに食事や読み書きができることに驚いていた。
獣人たちの世界の方が村に食糧が行き渡るほど恵まれているのだと考えたようだ。
「ローニャはね、魔法で村の畑の作物を育てるお手伝いを毎日していたんだよ!」
「魔法で作物を育てるお手伝い?」
「うん、そうだよ」
「このサーローの指輪で土に栄養をあげて、別の指輪で成長させるの。でもね、一気にやっちゃうと美味しい野菜は出来ないから少しずつ使うんだ」
「それは凄いな。魔法でそんなこともできるのか」
「でもねーこの魔法は難しいんだよ! 野菜の種類によって土の栄養が違うの。それを見極めて魔法を上手に使わないといけないんだよ。ローニャは得意なの。村で一番上手だったんだ」
「そうなのか。ローニャは村一番でとてもえらかったのか。えらいな」
騎士達の治療が落ち着けば食糧不足を改善するためにローニャが協力することになる。
魔獣と戦うよりもずっと安全だし、依頼があればローニャも喜んで協力すると思う。
しばらく話をした後、ローニャは眠くなり、ウトウトしはじめると家族はそれぞれ部屋に戻る事になった。
ケイルート兄様がローニャを抱っこして私たちの部屋を案内してくれた。
「ケイルート兄様、ありがとうございます。これから妹として頑張りますね」
「今からそう気を揉まなくても大丈夫さ。父上の可愛がる気持ちも分かる。俺にこんなにも可愛い妹が出来たことが嬉しい。もっといっぱいわがままを言ってくれ。ではまた夕食に」
そう言いながら兄様はローニャをベッドに降ろして部屋を出た。
慣れるまではローニャと同じ部屋で過ごすことになった。
私たちに用意された部屋はとても可愛い家具で統一されていて猫種だからなのか猫足の家具にカーテンは猫が刺繍されている。
もしかしてこれは陛下が思う私たちのイメージなのかもしれない。
そう思うとクスリと笑ってしまった。
夕食までの間、私は部屋に置いてあった本を手に取り読む。
絵本のような文字の少ない本で私にはとても読みやすかった。
44
あなたにおすすめの小説
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
底無しポーターは端倪すべからざる
さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。
ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。
攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。
そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。
※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。
※ごくまれに残酷描写を含みます。
※【小説家になろう】様にも掲載しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる