まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

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 翌日からは今までと変わらず研究室へ赴き、研究員と魔法の会議を行ったり、試作品を検証したり、ローニャの持っている指輪で王家の農場の土質を改善したりして、様々な研究にも取り組む事になった。

 もちろん勉強も欠かさない。ただ、この国の令嬢と少し違うところはお茶会を開かないところかもしれない。残念ながら忙しくてできないのだ。

 王女の役割は貴族との折衝も含まれるが、魔法の研究や怪我人の治療で忙しい。

 それに週に一度は教会へ赴いて聖騎士達の治療も行っている。最近は聖騎士の他に平民の治療も始まった。

 貴族は基本的に護衛騎士がいるので怪我をすることはほとんどないが、平民は自分で身を守らねばならない。

 魔獣による負傷者は数えきれない。

 エサイアス様は最近、王都外の魔獣退治にも再び参加するようになっている。時折負傷して戻ってくるため私は心配になる。

「エサイアス様、大丈夫ですか?」
「あぁ、ナーニョ様が怪我を治療してくれるから全力で戦えている。感謝しかない。ナーニョ様とローニャ様のおかげで騎士達も士気が上がり、魔獣退治の成果が格段に上がっている。喜ばしいことだ」

 エサイアス様と話をしながら怪我を治療する。私は毎日怪我の治療をしているため、血の匂いや怪我の痛々しさにも慣れた。その辺りはローニャも同じようだ。

「治療が終わりました。魔法で回復できるからといってあまり無理はしないでくださいね」

「あぁ、でも最近はナーニョ様に怪我をした時にしか会えないのが寂しい」

「私もエサイアス様に会えないのは寂しいです。ロキアさんたちにも会いたいし。今度また遊びにいけるよう話をしてみますね」
「ロキアもマーサも首を長くして待っている。あぁ、そうだ。この間ナーニョ様にとても似合いそうな飾りを見つけたんだ。受け取ってもらえるだろうか」

 エサイアス様はそう言うと、可愛くリボンでラッピングされた小箱を差し出した。

 私はエサイアス様の言葉にトクリと心臓が跳ねた。私のために選んでくれたのだと思うと心が喜んでいる。

「開けてみても良いですか?」
「もちろん」

 ナーニョはドキドキと心躍らせながらリボンを解き、箱を開けると、小さな花の髪飾りが入っていた。

 ……可愛い。

 花の柱頭部分には綺麗な蒼い宝石がキラリと輝いている。

「わぁ! 素敵! 本当に貰っても良いのですか?」
「ああ、ナーニョ様に似合うと思ったんだ。気に入ってくれたかな?」
「嬉しいです!」

 ナーニョは満面の笑みを浮かべ、その姿を見たエサイアスにも笑みが零れた。

「髪に付けよう」
「はい」

 箱から取り出した髪飾りをエサイアス様は優しく私の髪に付けてくれたの。

 こんなに素敵な髪飾りをもらったことにも、エサイアス様が付けてくれることにも嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちが綯交ぜになり顔に熱が集まってくるのがわかる。

「可愛いな。よく似合っている」

 エサイアス様の言葉に頭を少し振り、髪飾りが揺れるのを感じて嬉しくなる。

「エサイアス様、ありがとうございます。本当に嬉しい。この髪飾り、とっても素敵です」

 ……バタバタと誰かが駆け寄る足音が近づいてきた。

 私はその音に気づき、視線を向けた。

「ナーニョ様、今度「ナーニョ様! 治療中、すみませんっ! ローニャ様がっ!」

 突然、医務室に駆けこんできた騎士が大声で私を呼んだ。

「ローニャがどうしたのでしょうか?」

 さっきまでの嬉しい気持ちは一転、緊張と不安が襲ってくる。

「ローニャ様が、突然体中が痛いと震えだして……ナーニョ様を何度も呼んでいるのです」
「……体中が、痛い」

 ローニャが怪我をしたのかと思ったけれど、今の時間は研究所にいたはず。

 もしかして体の成長が始まった?

 そろそろとはいえ、少し早い気もするけれど……。

 不安になりながら私は立ち上がった。

「エサイアス様、ごめんなさい。ローニャが呼んでいるので行きますね」
「あぁ。ローニャ様に何かあったら大変だ」

 ナーニョは軽く頭を下げた後、走るように騎士と共にローニャのところに向かった。騎士が向かった先はやはり研究所の第一研究室だった。

「ローニャ、大丈夫!?」

 私はソファの上で小さく丸くなって震えているローニャに駆け寄った。

「お、お姉ちゃん。からだが、いたいのっ」
「どれ、見せてちょうだい」

 ゆっくりと身体を起こしたローニャに、私は指輪を使う。魔力で身体中を調べてみると、やはり私の考えていた通りだった。

「ローニャ、成長が始まったわ。当分の間、ゆっくり休むしかないわね」
「やっぱりそうなの? 自分でもそうじゃないかなって思っていたんだっ」

 ふさふさのしっぽをブンブンと振りながらローニャは嬉しそうに言った。

「ナーニョ様、成長が始まったとは?」
「前に少し話したかもしれませんが、獣人は急速に成長します。ローニャも私と同じように大人と同じ大きさになるまでに一、二年くらいかかります」
「そんなに短期間で大きくなれば身体中痛みを伴うのは仕方がないですね」

 研究者の人たちはその説明に納得した。ローニャの身長は現在百センチ程度。ナーニョの身長は百七十センチほどだ。一、二年でナーニョ程の大きさになるのであれば身体中痛みがあるのも無理はない。

「マートス長官、ローニャを休ませてもいいですか?」
「あぁ、もちろんだ。無理させる必要はない」

 フェルナンドさんがローニャを抱え、別の騎士が護衛にまわり、ローニャを部屋へと連れていく。

 ローニャが退室すると、部屋は先ほどまでの物々しさはようやく落ち着きを取り戻した。

「ナーニョ様、ローニャ様は大丈夫ですか?」
「マートス長官。二、三日安静にしていれば痛みも引きます。慣れるまでの間、ローニャはお休みをいただく感じになりますがいいでしょうか?」

「あぁ、もちろんだ。動けないくらいの痛みだ。成長と共に魔力も増えるのだろうか?」

「魔力の総量は身体と成長と共に増えていくと思います。ローニャは私より早くに魔法を使い始めたから成長したら私より魔力量は多いと思います。ですがこの成長期の間に無理をすると成長が止まり、魔力量も増えないと思うので今は無理をさせないことが大前提にあります」

「そうか。わかった。他の所にも通達を出しておく」
「マートス長官、ありがとうございます」
「いやいや、こちらとしても協力してもらっているんだ。感謝しかない」

 私はローニャの状態を確認するために今日は少し早いめにローニャのいる部屋に戻ることになった。
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